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さみしいけど、さようなら  作者: 六笠はな
4/10

訪れた日

アカガミの送付が段々と首都圏から離れ、その方向は東西南北各地に散らばっていった。

そしてもちろん僕が住んでいる東北地方にもその手は伸びてきていた・・・


その時はいつものように授業を受け、帰りのホームルームをしている時だった。

「みんなに大切な報告があります。」

突然、担任の先生が深刻そうな表情を浮かべながら僕らにそう言った。

ガヤガヤとしていた教室内は一瞬で沈黙に包まれた。

「明日からこの学校はしばらく休校となります。」

教室の中がざわついた。みんな尊厳死案の影響だろうと一瞬で理解できただろうけど。

「正式には自由登校という形になります。登校したい生徒がいれば登校できますが、強制ではありません。先生という立場でこんなことを言うのはよくないことかもしれないけど、勉強のことは忘れてください。友達と過ごしたり、家族で過ごしたり、一人で過ごしたり。過ごし方はみんなの自由です。でもこれだけは言わせてほしいです。後悔の無いように過ごしてください。」

なんだかとても意味深な発言に聞こえた。

まるで死ぬことに決まった人が、このクラスにいるような、そんなことを思わせる言い回しだった。

「僕はみんなの担任になってまだ半年ほどだったけど、とても素敵な思い出が出来ました。ありがとう。」

先生は微かに、目に涙を浮かべているように見えた。

僕らの担任の先生はまだ先生になって間もない若い男の先生だった。確かに色々戸惑っていたようだったけど、いつも一生懸命で常に僕らのことを考えてくれていると思えるいい先生だった。学校の先生っていう生き物が僕は苦手だったけど、この先生は好きだった。そんな人だった。


放課後、クラスメイトから、クラスの中で一人にアカガミが届いていることを聞いた。

その子は野中さんという。女の子だ。

野中さんは両親の仕事の都合で、高校一年生の時にこの町に引っ越してきたと聞いたことがあった。僕はあまりしゃべったことがなかったけど、物静かで頭が良い印象だった。

彼女はその日学校を欠席していて、野中さんといつも一緒に居る松永さんからその情報は広まった。松永さんはとても心配そうだったし、親しい友人の死がショックだったんだろう、急に泣き出してしまっていた。

きっともう野中さんに僕は会うことがないのかもしれない。

僕だって、クラスのみんなだってショックを隠し切れずにいた。


その後、僕には確かめたいことがあった。

隣の隣の教室へ様子を見に行ったが、そこで僕の目的は果たされなかった。

今日一日、唯の姿を見ていなかったのだ。

彼女は元々体が弱くかったのもあって学校をよく欠席していた、だから学校にいないのはよくあることだった。

しかし、このタイミングで学校を休んでいるということは・・・・・。

悪い方向にしか考えられなくなった。


そして同時に、僕や家族の元にアカガミが届いているかもしれないことを思い出した。

僕は自身を、自分本位な人間だと思っていたけれど、他のことに気がまわっていると案外自分のことを忘れてしまうらしい。

そして不安に煽られ、急いで家に帰った。


玄関を開けリビングに向かい、そこにいた母に叫んだ。

「母ちゃん!!アカガミ、来てた!?」

驚いた顔をして、母が振り向いた。

「瑞希か、びっくりした。大丈夫よ、うちには届いてないわ。」

片道約20分の道を全力で走ってきて息が上がりきっていた。

ずっと入り切っていた体中の力が抜け、きつく痛んでいた脇腹を抑えながら床に倒れこんだ。とにかく安心した。

「そっか、よかった。とりあえず一安心だ。」

「そうね、それにしてもあんたがそんなに走って帰ってくるなんて珍しいわね。心配してくれてありがとうね。それはそうとして、とりあえず靴を脱ぎなさい。」

急ぎ過ぎて靴を脱がないままリビングに上がってしまったらしい。その後、床を掃除させられた。


とりあえずは一安心した。送られてくる場合は市町村でまとめてその日に送付されると言われていたからだ。だから逆に言うとこの町でアカガミが届けられることが決まってしまっていた人は今日中に届けられるということになるわけだ。

そうなると、心に引っかかっているものがなんなのか、すぐに気付くことが出来た。

唯に電話を掛けてみた。だけど唯が電話に出ることはなく、折り返し電話が掛かってくることもなかった。

本当に心配だった。今すぐにでも唯の元へ行きたいと思ったけど、夜も更けていたのでとりあえず今日は大人しく寝ていようと決めた。

自分でもこんなにも唯のことを心配しているというのがなんだか不思議に思えた。

とりあえず明日唯から返事がなかったら、唯の家へ行ってみよう。

そう決心して、眠りについた。


その日は珍しく、長い夢を見た。


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