プロローグ
国立宝中学園
その学園はあらゆる種類のエリートを世の中に排出してきた。
中高一貫校全寮制で高校からの途中入学はできず、入学試験は面接のみ。
よく合格できなかった子供の両親から不正があったのではと苦情がくるが学園側は、方針を変えることはなかった。
毎年10万人以上の受験者がいるが合格できるのは各年150人前後。
倍率100倍以上と言うおかしな数字になっている。
しかし、授業は無料であり将来の事は約束されたと言っても過言ではない。
この学園の生徒のエリートさは部活動を見ても一目瞭然だ。特にこの学園で一番有名なのは吹奏楽部だ。
全国吹奏楽コンクールには出場させて貰えないが、年2回ある定期演奏会のチケットは毎回完売。今までここの演奏を聴いて不評を言った者は居ないとまで言われるほどの上手さだ。
「ここが宝中学園か…」
(これから俺が生活する場所。)
桜が舞う中を寮へと歩いて行く。
この学園の敷地に入るにあたって金属探知機、ボディーチェック、荷物検査、act……色々な検査をした。
何でも、この学園内には機密事項が沢山あるらしく盗聴器などが持ち込まれない様にする必要があるらしい。
警備員さんに聞いたとうりに道を進んでいくと大きなホテルが6つ並んでいた。
中高一貫校で各学年に1つ寮というよりホテルがある。
新入生はこちらですと書いてある看板のとうりに一番手前の寮に入っていくと、そこには他に10人程度の新入生がいた。
「君も新入生だよね?僕は一条春紀って言うんだ宜しく!」
10人の生徒の中で一番目立っていた爽やか金髪イケメンが話しかけてきた。
「宜しく……。」
「君は何処の部活に入るか決めたかい?僕は、サッカー部に入るつもりだ。」
やはりイケメンは運動系の部活に入るらしい。こいつの場合、女の子達にキャーキャー言われてる所が容易に想像できる。
「俺は吹奏楽部だな。クラリネットを小学校の頃からやってるんだ。」
「ここの吹奏楽は全国大会金賞の常連だからね。」
「あぁ。そう言えば自己紹介がまだだったな。土御門雅だ。よろしく。」
「雅って呼んで良いかい?」
「あぁ。俺も春樹って呼ばせてもらって良いか?」
「もちろん」
イケメンは大抵性格が悪いんだが、春樹は性格も良いみたいだ。
「そう言えば今は何をしているんだ?」
「ここの寮母が来るのを待っているんだ。今は8時半だろ?9時からしか開かないみたいでね。」
「まだ、30分もあるんだよね!」
赤髪短髪の女の子が話に加わってきた。
「私、神崎可憐。可憐って呼んで。」
「俺も雅で良い。」
「よろしく、雅!」
「可憐は陸上部だったっけ?」
「そう!私は風のように自由に走りたい!」
パワフルな子だなぁ。
その後、可憐に走ることの素晴らしさを散々聞かされ目が死んでいた俺と春樹に寮母という救いの女神が舞い降りた。
「みんな早いね〜。私はここの寮母をしてる雛形庵よ〜。よろしくね〜」
黒髪で巨乳の美女が奥の関係者以外立ち入り禁止と書いてある扉から出てきた。
可憐はまだ話したそうだったがそこら辺の分別は出来る様だ。
「それじゃあ順番になれんでね〜。家に送った入学案内に入っていた生徒証明書を手元に出して進んでね〜」
雛形さんは入り口付近にあるカウンターに入るとある機械を起動し、生徒証明書をその機械に通していくように指示する。通したら横に付属している画面に自分の部屋番号が出てくるようになってるみたいだ。
「何階だった?」
「俺は47階だった。」
「私は30階。春樹は?」
「僕は32階だよ。」
「みんなバラバラかぁ。」
「この後、みんなで学園を探索しない?この学園は広い入学式の会場である講堂までの道程は確認しといた方が良いと思うんだけど。」
「はいはいっ!賛成!」
「雅は?」
「予定は無いから良いぞ。」
それから各自荷物を部屋に置いてまた入り口付近に集合する流れになった。
自分の部屋がある階に到着すると、エレベーターを降りたすぐの所にメイド服を着た美少女(幼女?)が立っていて、俺に向かって礼をした。
「土御門 雅様ですね。わたくしはこれから雅様のお世話をする事になった神巫花火と申します。以後よろしくお願いします。」
「・・・?」
「まずはこの階の事を説明致します。この学園には順位と言うものが存在します。中学1年は入試の成績やその他色々な審査ですね。他の学年はテストや各種のイベントでの順位、学園への貢献度が関わってきます。それらで決まった順位で学園からの待遇が決まります。代表が寮の部屋ですね。この寮は50階で、順位の高い人は大きい部屋を、低い人は小さい部屋を与えられます。2階〜25階は各階5部屋、26階〜35階は各階3部屋、36階〜40階は各階2部屋、そして41階〜50階は各階1部屋となっています。ここ48階は一階まるごと雅様に与えられています。端的に言うと雅様は学年3位であるという事です。更に、上位5人にはわたくしのようなメイド、執事のどちらかかがつく事になっています。ここまでで何か質問はありますか?」
「特には。」
「では部屋を案内します。此方へどうぞ。」
部屋の構成は7LDKだった。書斎に客間、パーティールームまで取り揃えてあって、凄いとしか感想が出ない。あまり二人を待たせるわけには行かないのである程度みたら荷物を置いて一階のロビーに降りる事にした。