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かばったゾウ

作者: ルーごん

落選作です。

供養として投下させていただきました。

「おいっ! 何度言えば分かるんだ!!」

 ここは動物園、職員さんがゾウさんを怒っています。

「ごめんなさい……」

「物を壊したのこれで三回目だぞ!」

 木で作られた仕切りが壊れています。

「気をつけるんだぞ!」そう言って、職員さんは出て行きました。

「あ、あの……」と影から申し訳なさそうに言って出てきたのは、サルさんでした。

「ゾウさん、ごめんなさい、本当は俺が壊しちゃったのに……」

「いいんですよ、サルさん」

 どうやらゾウさんはサルさんをかばっていたようです。

「でも、ゾウさんはかばったせいで、今日のご飯が少なくなっちゃって……」

「私の方が長く生きています。若いあなたたちは、少しでも沢山食べてくださいね」

 そう言って、ゾウさんは自分の寝床に帰っていきました。

 その日のゾウさんのご飯には、普通のご飯の他にリンゴが三切れ出るはずでしたが、一切れだけでした。


 別の日、ゾウさんが寝床から外を見ていると、職員さんが壊れた木のイスを直していました。

 ゾウさんは職員さんに近づいていって、「ごめんなさい……」と言いました。また別の子達をかばおうとしたのでしょう。

 ですが、職員さんは、「何がだ? これは俺が壊してしまったんだ……」と、返しました。珍しく職員さんの失敗だったようです。

 そこに、園長さんがやってきました。

「おや、これは……」と壊れたイスを見つけた園長さんが言いました。

 すると、すかさずゾウさんが「私が壊してしまいました……」と、言いました。

「えっ?」職員さんは、驚きました。

 園長さんは、「そうですか、仕方ありませんね、また今日もご飯が少なくなりますが、よろしいですね?」ゾウさんに、そう問いかけます。

「構いません……」ゾウさんは、そう返しました。

「わかりました」と言って帰っていった園長さんを見た後、職員さんは、「何で俺が壊したのに俺をかばったんだ?」と、ゾウさんに聞きました。

「私の方が長く生きています。職員さんのお給料は、職員さんのお子さんに使ってあげてください」

 そう言って、ゾウさんは自分の寝床に帰っていきました。

 その日のゾウさんのご飯には、普通のご飯の他にリンゴが三切れ出るはずでしたが、一切れも出ませんでした。


 それから何日かたった後、職員さんは園長さんの部屋に行きました。

「どうしましたか?」

「実は、この前の壊れたイスについてお話させていただきたいのです」

 そういって、職員さんはこの前のイスを壊したのは自分だということを話しました。そして、それをゾウさんにかばってもらったことも。

「そうだったのですか」

「はい、ですので私の給料から弁償代を引いていただきたいのです」そう言って職員さんは頭を下げました。

「あなたからも弁償分を引いてしまったら、動物園が余分にもらったことになってしまいます。ですので、あなたのお給料からは引きません」

 園長さんは、そう言って、「もしも何かをしたいのならば、ゾウさんにお礼をしてあげてください」そう続けると、にっこり微笑みました。

「分かりました。ありがとうございます」

 そう言うと職員さんはすぐに、「失礼しました」とお辞儀をして、部屋を出て行きました。


「ゾウ、いるか?」

 職員さんがゾウさんの寝床に呼びかけます。

「はい、なんでしょうか?」と言って、ゾウさんが出てきました。

「お前はこの前俺をかばってくれたな、それのお礼とお詫びだ」

 そう言って職員さんは、リンゴを差し出しました。それも二つです。

「いえ、そんなことをしていただかなくても……」

 ゾウさんは、そう言って断ろうとしましたが、

「すでに園長さんには、お前がかばってくれたことを話した、その上で持ってきたのだ」

 職員さんは続けます。

「お前が他の者をかばっていたことも聞いた。それにそのお礼に来たのは俺だけではないらしいぞ」

 そう言って職員さんが後ろを向いたその先に、サルさんやウマさんがいました。

「あの……俺、職員さんがゾウさんにお礼をするって聞いたので、この前のお礼を持ってきたんです……」

「サルさんがお礼に行くと言っていましたので、私も以前のお礼をさせていただきたいと思って……」

 サルさんやウマさんも、リンゴを持っていました。

「皆さん……ですが、皆さんにこそ沢山食べていただいた方が……」

 ゾウさんはそういいましたが、職員さんは、

「皆お前にお礼がしたいと思ったから来ているんだ、受け取ってくれ」

 そう言いました。それを聞いたゾウさんは、

「分かりました、皆さんありがとうございます」

 そう言って、皆からリンゴをもらいました。そんな話が聞こえていたのでしょう。他の動物さんたちもやってきて、

「ゾウさんが皆からリンゴをもらったんだってよ」「じゃあ、私も持っていくわ」「俺も俺も」

 と、そんな話をしながら沢山の動物さんたちが集まって来ました。

「お前はいろんな動物たちに好かれているんだな」

 職員さんは、笑顔でそう言いました。

「皆さん……では皆で食べましょう、私もご飯を持ってきます」

 ゾウさんも、笑顔でそう言いました。

 その日のゾウさんのご飯には、普通のご飯の他にリンゴが三切れのはずでしたが、皆が持ってきたリンゴでいっぱいでした。 

ご覧下さりありがとうございました。

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