4 二人の距離
さっきまで安田さんとずっと一緒だった私は、家に帰ってからもボーっとしたまま、気付けば彼の事ばかり考えていました。
やっぱり不倫はダメだ…もっと好きになってしまう前に諦めなきゃ…今なら戻れるという思いと、好きな人と一緒にいれた嬉しさ…複雑な気持ちでした。
私は化粧もしたまま、いつの間にか眠っていました。目が覚めたのはお昼を過ぎた頃でした。
(あ〜ぁ…眠い…)
眠い目を擦りながらも、少しだけ顔が笑っている私が鏡に映っていました。
(あ〜ぁ…眠たいなぁ…よしっ!ちょっと気分転換に買い物でも行くか〜)
このまま家にいるのももったいないし、今日はバーゲン初日という事もあったので、用意をして、化粧もしなおして買い物へ出掛けました。
4時間ほどプラプラ買い物をした私は、少し歩き疲れたので近くのスタバで休憩をしていました。 コーヒーを飲みながら、携帯を見ようと手にとると♪♪♪〜
安田さんからのメールでした。
なんだろう…と冷静に装いながらも、周りの人に音が聞こえるんじゃないかというぐらいドキドキしながらメールを見ました。
『お疲れさま!昨日はとても楽しかったです。もしかしたら寝てるかな?俺は書類を片付けに会社来てるよ〜仕事だ…また今度はご飯でも食べに行きましょうね〜』 RE:
『お疲れさまです〜仕事してるんですか〜?あんまり無理しないで下さいね!私も、昨日はとても楽しかったですよ♪ちなみに…私は今バーゲンに来てます〜買い物してました〜』
♪♪♪〜
『バーゲン!?いいのあったかな?俺も後から買い物行く予定でした〜よし!仕事片付けよっと!』
RE:
『頑張って下さ〜い!』
安田さんが買い物に行く頃に、もしかしたら連絡が来て会えるかもしれない…どこかでそんな期待をしていた私は、一通り買い物は終わっていましたが、またプラプラ時間を潰していました。
それから1時間程経った時、メールが届きました。
♪♪♪〜
『俺もバーゲンで買い物しました!5万使ってしまいました〜疲れた〜腹減った〜』
RE:
『沢山買い物しましたね〜私もまだ買い物中ですけどね!』
♪♪♪〜
『まだ買い物してたの?どの辺?多分近くだよね?』
RE:
『パルコの近くですよ!安田さんは?』
♪♪♪〜
安田さんからの電話でした。
「もしも〜し。どーも安田です。今さ近くにいるから、この後予定なければ、なんか食べに行かないかい?俺腹減っちゃって〜」
「いいですよ〜私も沢山歩いたし、お腹空いたところです。何処に居ればいいですかね…あっ!」
信号待ちをしている人の中に、携帯で話しながら私に気付いた安田さんが、笑いながら手を振っているのが見えました。
「近くにいたんだね〜すぐ会えて良かったよ〜何食べたい?」
初めて、私服の安田さんを見ました。スーツや作業着姿もかっこいいのですが、私服はオシャレで更に若く見え、なん倍も素敵でした。 二人でパスタを食べに行きました。
お互いホントのプライベートで会うのは初めてだった事もあり、二人ともいつもと違う雰囲気でした。
初めは、どこかぎこちない感じでしたが、だんだん会話も弾んでくると、お互いとまらなくなっていました。二人とも沢山笑いました。
「あの…お客様…申し訳ありませんが、当店閉店の時間になりますので…」
「あっ!すみません。すぐ出ますね!」
彼との時間は、本当に楽しい時間でした。好きなお笑いの話し。好きな食べ物の話し、好きな物、好きな服…どんな話しをしても、彼と私は『あ〜わかる〜』『俺もそう〜』、考える事、思う事…彼とは本当に気があいました。
不思議と、お互い言葉にしなくても何を思っているのかがわかりました。
ずっと昔から知っていたような、ずっとずっと一緒に居たような…一緒にいるとそう思える、そんな私たちでした。
この日から、私達は毎日メールや電話で連絡を取るようになりました。
最初は敬語で話していた私達も次第に、安田さんから祐介君。祐介…
西浦さんから美穂ちゃん、美穂…へ変わりました。 パスタを食べに行った以来、二人では会ってませんでしたが、来週久しぶりにご飯を食べに行く約束をしました。
『もしもし〜終わったよ〜これから帰るよ〜寝てたでしょ?ごめんね』
『今日も遅かったね〜1時過ぎてるよ〜疲れたでしょ?お疲れさん〜』
『疲れた〜でも美穂と話すと元気になるんだ〜』
『そうなの?ありがとう〜なんか…嬉しい』
『美穂。明日は、大丈夫そう?』
『うん。大丈夫だよ〜祐介は?仕事忙しいでしょ?』
『まあね…7時には帰りたいんだけど…頑張るわ〜仕事の様子連絡するからね。遅くなりそうなら、美穂も時間調整して仕事してて〜』
『明日楽しみだね!』
『また明日ね!遅くまでごめんね〜美穂と話すと気付いたら、いつも1時間は話してるよね…もっと話ししたいよ…明日楽しみにしてるね♪ゆっくり寝てね〜おやすみ』
久しぶりに二人で会える事になり、私は嬉しくてなかなか眠れませんでした。