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好きの形  作者: 良泉
3/5

2 恋の始まり

 相変わらず安田さんとは、挨拶程度の簡単な会話だけの毎日。

 まだこの時は、意識してるのは私だけでした…


 飲み会の席で、私のタイプが安田さんと知った笹木さんは、彼のいろんな話しをしてくれるようになりました。20代の時のコンパの話し、デパートの化粧品売り場の娘にヒトメボレした時の話し、好きになると安田さんってこんな事してたんだよ…とか

私の印象とは違って、若い時の彼は、好きになれば電話番号渡したり…積極的な人でした。

 (安田さん、あんまり私に話しかけないし、私はタイプじゃないんだな…きっと…)


 相変わらず私達は挨拶だけで、特に会話する事もない毎日でした。



 12月28日。

今日は仕事納め。午前中は仕事をして、午後からみんなで事務所の大掃除!

 夕方5時からは、事務所で仕事納めの納会がありました。

 私は、あんまり目立たない端っこの席で、お酒を飲めない10代のコと一緒に、ジュースを飲みながら話しをしていました。

 「西浦さ〜ん!ちょっとこっちおいで〜」

 少し酔っ払った声で私を呼んだのは笹木さんでした。笹木さんの方を見ると、隣には安田さんが座っている…

 ちょっと緊張しながら私は、二人の間に座りました 「安田さん!西浦さんとあんまり喋った事ないですよね?」

 「う〜ん。挨拶ぐらいしかないかもね〜本当は話しかけたいけど、嫌がられたらショックだしさ〜」

 安田さんは、冗談を言いながら、すごくかわいい笑顔を私に向けました。

 「そうそう西浦さんね、安田さんの事、一番かっこいいって思ってるんだよ!タイプなんだって〜!こないだ聞いちゃったんですよね〜」

 笹木さんからの、思わぬ一言でした。

 「ちょっと〜!何本人に言ってるの〜恥ずかしいでしょ〜」

「別にいいじゃん!かっこいいって言われたら安田さんも嬉しいしょ」

私は恥ずかしくて、顔を真っ赤にして、照れ隠しに笹木さんを叩いて笑っていました。彼を見ると、彼も顔を真っ赤にして笑っていました…。後で彼から聞いたら、この日から彼の中でも私を意識するようになったようです

 

 またいつもの毎日が始まりました。相変わらず私達は挨拶程度の会話だけでした…

 「西浦さん、今日係の飲み会するんだけど来ない?」

 久々の飲み会に参加した私は、これまた久々のお酒に楽しくなっていました。 「2次会、いつもの店行こうか!なんか今日は2係も飲み会らしいから後で合流するからね〜」

 (な〜に〜!2係?安田さんも居るかな…)

 ドキドキしながら、みんなでいつもの店に行きました。

 (あっ!安田さんいた!) 店に入ると、安田さんが歌っていました。

 (ちょっとお酒も呑んでるし、頑張って話しかけてみようかな〜)

 なんて事を考えている時、隣に座ってた笹木さんが席を立ち、空いた席に安田さんが座りました。

 「ど〜も。西浦さんは何飲んでるの?」

 ほっぺたを赤くした安田さんが話しかけてきました 「カシスオレンジですょ〜安田さん歌上手ですね!初めて聞きました」

 いろんな話をしました。休みは何してるの?車は何乗ってるの?学生の頃の話や、好きなものの話…

 周りがうるさかったので気がつくと、二人の顔が近づいていました。

 「こんなに話ししたの初めてだよね?俺さ、ずっと西浦さんと話してみたかったんだー。会社での西浦さんしか知らないけどさ、西浦さんってかっこいい人だな〜って思ってたんだよね。」

 「私も話してみたいと思ってましたよ。もうばれちゃってるけど、かっこいいな〜って最初は思ってて、仕事してるとこしか見てないけど、仕事も出来て周りからの信頼もあって、男の人の前に人として尊敬してました…」

 お酒が入ってることもあって、彼と沢山話しをしました。


 少しして私はお手洗いへ行きました。この店のトイレは男女共同なんですが、私が手を洗っていると、安田さんがトイレに入って来ました。

 「あっ!美穂ちゃんだ」 「大丈夫ですか?」

 「そんなに酔ってないから大丈夫だよ」

 「あんまり飲みすぎないで下さいね〜じゃぁ私、先に戻ってますね」

 「ダメ!ここに居て〜一緒に戻ろう」

 あんなかわいい笑顔で言われてしまい…私はトイレの鏡で髪を直しながら、彼が出てくるのを待っていました。

 ガチャ…

 「痛い痛い痛い!」

 ドアが開いた瞬間、何か企んだ顔と彼の手が現れ、私は彼に引っ張られトイレの中に入ってしまいました (どうしよう。安田さん酔ってるよね。どうしよう…)

 嬉しいような、怖いような…何かされるのかドキドキしていました。

 酔っ払った彼は私の肩に手を置いて、下を向いてる私の顔を覗き込みました。 「俺酔ってるかな…なんかすごくドキドキしてるわ。俺さ西浦さんと本当に話ししたかったから、話せて嬉しいよ。こんなトイレで話す事じゃないか?酔ってるのかな?美穂ちゃんに酔ってるのか?俺くさいかな?ん?トイレだからか?」

 「アハハ!何言ってるんですか!なんか恥ずかしくなってきた!戻りましょうか」

 ガチャ…

 戻ろうとした時、トイレに誰か入って来ました。 彼は私を見ながら、声は出さずに

 (この人が出たら戻ろうか)

そう口を動かし、そっと私を抱きしめました。そして、私の顔に彼が近づいてきました。

 「酔ってますよ…こんなとこで恥ずかし…」

 彼に囁きかけましたが、途中で彼とキスをしました。あっという間でしたが、長い時間キスをしていたような…嬉しい気持ちと、お酒を飲んでした事で少し複雑な気持ちになりました。


 この日から何か変わるかな…と思ってましたが、今までと何も変わる事なく、安田さんもこないだの事なんて忘れているようないつもの毎日でした。特に電話番号も聞かれる事もなかったし…

 (やっぱり、こないだはお酒飲んでたし…キスしたのも覚えてないんだなきっと)

 数日後、笹木さん達とカラオケに行く事になりました。私は途中から参加しました。部屋のドアを開けると、先に来てたみんなは酔っ払って出来上がってる感じでした。

 何曲か歌ってから、私は酔っ払いの相手と部屋の暑さに耐えられず、外の階段で涼んでいました。

 外で携帯をいじっていると…

 「お疲れさん!何してるのこんな所で」

 そう言って私の頭をポンポンと叩いて隣に座りました。

 安田さんでした。

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