あれから5年?№1
な、長くなったorz
2014年12月12日:大幅に文章を変更。
マルスが生まれて5年が経過した。地球同様今までの5年間でわかった事が様々ある。
まず、この世界はマルスの思っていた通りアレイヤードの世界であった。ちなみに、現在はマルスが地球へと転生したあの日から300年近く経っていたアレイヤードであり、マルスの家は公爵家で四男であった。長男のカルダと次男のマーカス共々優秀な存在であるため四男のマルスは自由な未来が見込めそうであった。
また、300年も経過したせいか、様々な事柄が変貌していた。大きな変貌としては魔法である。マルスが以前大賢者と呼ばれた時代とは比べ物にならない程に衰退していた。原因としては、マルスが死んでから5年後に起きた大陸全土を巻き込む大戦争が勃発したからである。きっかけは、亜人差別によって我慢の限界を迎えた獣人、エルフ、ドワーフ、魔族等の人族以外の種族が人族に敵対したことにより始まった。この戦争により、全世界の人口が一時的に10万人程度までに減少した程の大規模な戦争である。この戦争は開戦から12年が経過した後、両者の疲弊が激しくなった事が原因で終戦を迎えた。
そして、この大規模な戦争が原因で魔法の技術の多くが失われた。それと同時にこの時から魔法が大きく変わった。今現在マルスが生きている世界における魔法は、杖や腕輪、指輪や特殊な武器等の発動体を媒体として魔法を発動する過去に比べるとめんどくさい魔法へとなった。何故めんどくさいのかは後述する。
現代魔法(今のマルスが生きている時代の魔法)の長所としては発動体による補助で容易に魔法を発動させることが出来、個人の力量に左右されないことが挙げられる。短所としては古代魔法(転生前のマルスが生きていた時代の魔法)と違い自由度がとにかく少なく、威力も低い。そして、発動時間に関しても古代魔法の方に軍配がある。
逆に古代魔法の長所は前述した現代魔法の短所と逆で威力が高く発動速度が高い事が挙げられ、また非常に自由度の高い魔法である。短所としては発動させるまでが難しく個人の力量に大きく左右される事が挙げられるが、短所以上に長所が魅力的なため、多くのアレイヤードの住人が古代魔法が使えるようになろうと努力している。そう、これこそがマルスからして現代魔法がめんどくさい所以である。マルスが生きていた時代の魔法はとにかく自らの力量と工夫によって魔法の発動スピード、工程、威力がいくらでも変えることが出来、いわば自分に最も適した形の魔法を作り上げることが出来る。しかし、現代魔法はと言うと型に無理やり当て嵌めた非常にめんどくさい魔法へとなっていた。
そして、現在残されている古代魔法の練習及び習得方法に関してマルスは驚きを隠せなかった。確かにその練習方法を行えば古代魔法は理論上は習得できる。だが、あまりにも非効率的で尚且つ練習を行うための環境が厳しすぎるのである。ちなみに、マルスが考案した当時使われていた最も一般的な方法は失われており、残っている方法は当時最も困難とされていた方法である。今現在マルスの生きている世界でマルス同様に古代魔法を使えるのはおおよそ1万人程度であり、この数字は亜人含める全人口のおおよそ0.0001%程度の人数である。
マルス自身に関しては問題なく古代魔法を使用でき、尚且つ地球で学んだ知識も混ぜているためとんでもないことになっている。まず、マルスは生前と同じく全ての属性に適性を所持していた。属性が何故わかっているのかは、属性を調べる装置を作ったのが過去のマルスだったからである。全属性に加えてマルスは地球で科学を学んだ。これによって今までほとんど使い手の居なかった雷系統、氷系統の魔法まで扱え、それ以外にも様々な凶悪な新しい魔法を作り上げる事に成功した。そんな全ての新しい魔法の実験はマルス自身が部屋の中に入り口を作った亜空間にて行っている。ちなみに、この亜空間はマルスが無属性魔法にて作った空間で此方の世界にタブレットPCを持ってきた原理を発展させて作り上げた空間で非常に重宝している。
マルスの事はこの辺でおいておいて気になる華凜の事であるがなんと華凜はマルスの家の隣にあるユリウス家の四女として生まれていた。華凜のこの世界における名前はこれまた運命の悪戯なのか、カリン・ユリウスと言う名前であった。生前とあまり変わらない名前であったため、初めて出会った2歳の頃にすぐにマルスが気が付き日本語で話しかけ華凜もマルスの事に気が付き、それ以来しょっちゅう一緒に遊んだりしている。また、シューゲン家及びユリウス家はマルスが大賢者の頃から住んでいる国、ブラッダー王国の5大貴族の内の2家であり、関係も良好なおかげか、マルスと華凜は幼い頃から何かと顔を合わせる事も多く、お互いの両親は「将来の夫婦だな」と考えており、両家族満場一致で許嫁関係になった。それが決まった3歳の頃からお互い何をするのも常に一緒であった。魔法の勉強、学問、遊びからとにかく何をするにも一緒であった。華凜自身もマルスから魔法の手ほどきを受けたおかげか、古代魔法をマルスほどではないが自由自在に操れるとんでも存在へとなっている。
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とある日、今日もまた華凜とマルスは一緒に庭で魔法の講習をしていた。ちなみに、2人には家庭教師の先生がおり、エルフ族の女性のリザと言う名の見た目が10代後半ぐらいの優秀な家庭教師である。彼女自身古代魔法は使えないが、現代魔法に関しては素晴らしい腕前で宮廷魔術師にスカウトされたほどである。
ちなみに現在、リザがマルスと華凜に初めての家庭教師という事で魔力に関して説明している。
「マルス君、カリンさん、魔力とはなんだと思いますか?」
「えっとー、魔法を発動させるために必要な物?」
疑問形ではあるが華凜が答える。
「魔力とは、魔法を発動させる際に使われる体内にて空気中に存在する魔力の残存粒子を糧に作られるエネルギーの事じゃの。魔法を形成する際には、魔力は様々な役割を果たす便利な物じゃ。具体的な例を挙げると……何が良いかのー?一般的な物じゃと魔法の維持のために使われる燃料や、魔法の現象の再現、必要な要素の生成等があるの。他には正しいか怪しいのじゃが魔力と体力は似通った部分が存在するかの。リザ先生、こんなとこでどうじゃ?」
マルスが魔力について説明する。それをポカーンと口をあけながら聞くリザとキラキラと瞳を輝かせて聞く華凜。
「えーっと、はい。なんだかとんでもない事実がいくつも飛び出した気がしますが、正しいかはわからないのでスルーします……はい……。マルス君の話を聞いて本当に私が先生なのか疑わしくなってきました。一応宮廷魔術師にもスカウトされたのに……なんだか、自信喪失です」
(なんなの、このマルスって子……本当に子供なの!?カリンちゃんは良い子そうだけど……この仕事失敗したかな?)
内心こんな事を考えながら段々と暗い雰囲気になっていくリザ。しかし、この家庭教師は今日始まったばかりで、これからリザはマルスと言う名の超絶規格外な存在に触れて苦労する日々がやって来るとはこの時ばかりは思ってもいなかった。
最後まで読んで頂きありがとうございます!