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目眩の中の世界

作者: 水平

初めての作品(作品と言っていいものかf^_^;)ですので、未熟な所が多々あると思いますが、最後まで読んで頂けると嬉しいです。

僕の名前はサトシ。

地元の大学に通う3年生だ。

また今日もいつもの様にウルサイ目覚まし時計に起こされ、いつもの様につまらない授業が終わり、またいつもの様に家路につくためバスを待っていた。

と、その時向こう側から誰かが笑顔で僕の方へ近づいてくるのが目に入った。


「サトシ−!」


それは僕の数少ない友達の一人、リュウイチだった。


「リュウイチ、久しぶり」


リュウイチとは授業が違うから会うことはほとんどない。


「久しぶり!今日4限休講だったんだよねぇ!」


「そっか」

−めんどくせぇな…。


そんな事を思いながらいつもの様に適当に話しを合わす。


「あっ、そうそう今日佐々木が授業中に鼻血だしやがってさ〜、マジウケたよ〜、あっお前佐々木しらねーか!ごめんな!ハハッ!」


−知るわけねーだろ…


と、そう思いまた適当な返事を返そうとした時、僕は、急に激しい目眩に襲われた。



−やべ…またか。



僕は倒れそうになる体を必死に踏ん張った。


「どうしたサトシ?」


普通ならこういう時、気にかけてくれる友達に感謝の言葉の一つでもかけるんだろうけど、この時僕はこの目眩にただ身をまかせていた。


「おい、サトシ!大丈夫か!?」


もはやリュウイチの声はほとんど耳に届いていなかった。


−どうせまたあの世界に行くんだろ。


そう思いながら僕は段々と薄れていく世界の中でリュウイチの声をまるでBGMの様にただ聞いていた。


僕は物心ついた頃からこの奇妙な現象につきまとわれていた。

イキナリ激しい目眩がして、それから意識が遠退き、そして奇妙な世界へ迷い込む。

その世界ではいつも僕は一人だった。ただ時間と場所だけは前の世界と同じだった。自分の周りにいた全ての人が時間だけを残して消えてしまうのである。そしてまるで今までの事が夢だったかの様に自分のベッドで目をさます。そしてその奇妙な世界に行く前後で僕を含めて僕に関わる全ての人が僕に関する記憶が曖昧なものとなっていた。

こんな事が日常的に繰り返されてきたから今、自分に起きてる事もいつもとなんら変わらない出来事のはずだった…



目を開けるとそこはあの奇妙な世界だった。

この世界では僕はいつも一人だったからやる事といえば散歩ぐらいだった。


−しかし…相変わらず気味の悪い世界だな…


そんな事を思いながら何気なく大学の方へ歩いていた。



−……ん??



とその時、遠くの方でなにか人影らしきものが見えた。


−いや、そんなはずない。俺以外に人が…


そんな事を思いながら僕はその人影らしきものの方へ走った。

それは特に逃げるでもなくただぼーっと立っていた。

僕は焦る気持ちを抑え更にスピードを上げた。

そして段々と姿がはっきりしてきた。




「えっ…?」




そこには寂しそうにこっちを見ているリュウイチがいた。



「リュウ…イチ?」



僕はワケがわからずリュウイチに駆け寄った。


「こんなとこで何やってんだよリュウイチ!」


「…………」


「おい!リュウイチ!なんで無視すんだよ!なんでここにいんだよ!」


「…………」




「リュウイチ…?」




明らかに様子がおかしかった。

それはいつも明るく僕に話しかけてくるリュウイチじゃなかった。

それはリュウイチの皮を被ったマネキン…とでもいう方が正しいのだろうか。

僕が何を言っても反応しない。ただぼーっと1点を見つめているだけだった。僕は気味が悪くなり、そこから逃げ出そうとしたが、僕はこの異常な事態−といってもこの世界がもう既に異常なのだが−を放っておくわけにはいかなかった。僕はそのマネキンをもっと近くで調べる為にそいつへ近づこうとした…。



「ピピピ、ピピピ、ピピピ」


そこで目が覚めた。


−くそ…終わってしまった。


あのマネキンは一体なんだったんだろう。覚めてからはずっとそう思っていた。だけどそんな事ももう1限の授業をうける頃にはもう忘れかけていた。また確かめればいい。そう思ったからだ。そして2限目の授業が終わり食堂で昼食を食べていた時、気になる話しを耳にした。


「あっ、コースケ、リュウイチ見なかった?」


「いや、みてねーよ?どした?」


「いや、今日あいつにゲーム借りる予定だったんだけど…、今日学校来てねーのかなー、ケータイも繋がらねんだよ」


3人がリュウイチの事について話していた。


−…まさかな…


忘れかけていた事が頭に過ぎった。

あの世界にあったリュウイチのマネキン…。僕はいよいよ確かめざるを得なくなった。


それから僕はまたいつも通り授業をうけて家に帰ろうとバスを待っていた。今日は目眩はおこらないはず。今まで2日連続でおこったことはない。1番早くて1ヶ月だった。

しかしここでもまたいつもと違う事がおこった。

2日連続であの目眩に襲われたのだ。


−なんで…。


そう思いながらまた静かに向こうの世界に行くのを待った。

その時、微かに僕の方に近づいてくる声が聞こえた。


「あっ、あれ…ウイチの…じゃね?」


「あっ、…トだ!聞いて…うぜ!」


食堂でリュウイチの事を話していた2人だった。よく聞き取れないが、どうやらリュウイチの事を僕に聞きに来たみたいだ。


「ん?…んか様子おか…ね?」


「…じょぶか?」


−大丈夫じゃねーよ。話し掛けんなよ…


僕は朦朧とする意識の中でそう思った。



そして僕はまたこの奇妙な世界に来てしまった。なんで2回連続できてしまったんだろう。そんな事を思いながらとりあえずリュウイチのマネキンのあった場所に向かう。



「……あれ?」



その場所に近づくと昨日と様子が違う事に気付いた。


なんとマネキンが3体に増えていたのだ。

しかもそれはさっき僕にリュウイチの事を聞きに来た2人だった。



「なんで!」



僕は思わずそう叫んだ。そしてその瞬間目が覚めてしまった。

今度はこんな異常事態を忘れるわけがない。僕は学校の準備をしあの2人がこっちの世界ではどうなっているのか確かめに学校に行った。

もう授業どころではない。僕は昨日食堂でマネキンになった2人と一緒にいた人を探し回った。そしてやっと見つけた。


確か、コースケといっただろうか、その人は教室で1人で次の授業の準備をしていた。

僕はあの2人の事を聞くため、その人に話しかけた。


「あの…さ」


「はい?」


「あ、あのさ、ちょっと聞きたいんだけど…昨日昼休み、食堂にいたよね?」


「うん…」


その人は明らかに怪訝そうな顔で僕を見ていた。


「でさ、その時一緒にいた2人って今日…」


「あ、シンタロウとユウタの事?だったら今日はきてねーよ。ゲームでもやってんじゃね」


「連絡とかって、取れる?」


「ん、あいつらの友達?」


「あぁ、うん、そうそう友達…なんだけど、アドレスとか、しらなくてさ。ハハ」


「…そっか。じゃあちょっと電話してみるから」


「あ、うん。お願い」


−電話に出ちゃったらどうすんだ、俺。


そう思いながら電話が終わるのを待っていた。


「あれ〜、つながんね〜」



−やっぱり…。



「両方電話してみたけど電話つながんねーみたい」


「そっか。ありがと」


そう言って僕はその場を去った。

やっぱりそうだった。2人はリュウイチと同じく、あの世界に捕われていた。

こうなったらもう学校なんかどうでもいい。とにかくこの理解不能な状況をどうにかしたかった。僕はとりあえず家に帰ろうとバス停に向かいバスを待った。


とその時、僕はまたあの目眩に襲われた。


−またかよ!


僕はあの世界に行くのが怖くなっていた。今まで普通にやり過ごしてきたあの奇妙な世界が。



そして、今日も来てしまった。



僕は逃げ出したい気持ちを押し殺しとりあえずあの3体のマネキンのある場所にむかった。

そして、そこには確かにあの3体のマネキンが礼儀正しく並んでいた。

僕はそこに駆け寄り、言いようのない怖さを払拭するかの様にこう叫んた。


「おい!お前らなんなんだよ!こんなとこでなにやってんだよ!」


そして僕はリュウイチのマネキンに掴みかかり、無我夢中で叫んだ。


「リュウイチ!何か言えよ!マジなんなんだよ!おい!」


そうしているうちに僕はリュウイチの手に何か握られているのを見た。



−…ん?



僕はその手を見た。 


するとその手にはケータイ電話が握られていた。僕はそのケータイ電話を手から引き抜きディスプレイを見てみた。


「えっ!?」


なんとそのディスプレイには僕のケータイ電話の番号が表示されていたのだ。リュウイチはこんなカチコチの状態でケータイを取り出し僕に電話をかけようとしていたというのか。

そうして僕が更に持ち物を調べようとしたその瞬間、目が覚めてしまった。



「リュウイチ…」



なんだったのか。リュウイチは一体何を伝えようとしていたのか。

僕はリュウイチに電話をかけてみようとケータイに手を伸ばした。もしかすると僕なら連絡が取れるのかもしれない。


−トゥルルルル…トゥルルルル…トゥルルルル…


僕は正直怖かった。リュウイチが今どうなっているのか知るのがとても怖かった。


−…トゥルルルル…


何回コールしただろう。恐らく実際はそんなにコールしてないんだろうけど、僕には物凄く長い時間コールしている様に思えた。


とその時、いきなりコールが鳴りやみ、通話状態になった。


「リュウイチ!リュウイチか!?」


僕は向こうで聞こえる風の音に必死に話しかけた。


すると向こう側からとても微かな声で何か喋るのが聞こえた。


「サ…トシ…」


リュウイチの声だった。


「リュウイチか!?リュウイチなんだな!」


「サ…トシ…俺…どうなって…」


「リュウイチ!絶対助けてやるからな!俺にもどうなってるのかわからないけど絶対助けて…ウッ!」


その時だ。いつもより激しい目眩と、そして更に激しい頭痛に襲われた。そしてまもなく、どこからか声が聞こえ始めた。




−やめろ。




「えっ…?」



どこかで聞き覚えのある声だった。



−やめろ。お前の為にやったんだぞ。



「は!?何だよ!ワケわかんねーよ!誰だよ!」




−…お前だよ…




そう言ってその声は目眩と頭痛と供に消えていった。

そして僕はさっきまでリュウイチと話していたのを思い出し、ケータイに話しかけた。


「あっ、リュウイチ!?」


しかしケータイはもう繋がっていなかった。



「くそ!なんなんだよ!」


そう言って僕はケータイを投げ付けた。


その日僕は母さんに風邪と言って学校を休んだ。こんな状況でまともに授業なんか受けれるははずがない。

さっきの声はなんだったんだろう。確かに自分の声にそっくりだった。でもなんで僕がこんな事を…。

そんな事が延々と頭の中をぐるぐるまわっていた。

そしてその晩、僕は思いのほか、早く眠りについた。そして奇妙な夢を見た。



−おい…。



僕はその声が今朝の声だとすぐにわかった。


−なんで邪魔するんだよ。お前の為にやったんだぞ。なんで邪魔するんだよ。


−は!?お前誰だよ!俺の為!?何言ってんだよ!そんな事頼んでねーぞ!


僕は夢の中で必死に叫んだ。


−頼まれなくてもわかる。俺はお前だ。お前はああなる事を望んでいたはずだ。


−そんな事望むかよ!さっさと元通りにしろ!


−お前がそう望むならそうするさ。だけど、違う。お前はそうは望んでなんかいない。


−そんな事ねーよ!早く元通りにしねーと大事になるだろうが!


−そうだよな。大事になるよな。だから元通りにしたいんだよな。別に友達を助けたいからってわけじゃないんだろ?


−えっ…?


僕は一瞬言葉に詰まった。


−お前はいつも一人だったよな。友達がいなくていつも一人で遊んでたよな。ホントいつになったらこっちの世界に友達を連れてくるのかと思ってたよ。いつも一人でこっちの世界にきやがって。


−…何言ってんだよ…お前。


−あいつらはお前が連れて来たんだよ。お前がこっちの世界に来る時あいつらお前に触ってたろ。だからこっちに来たんだよ。逆にお前が触れても 連れてこれるんだけどな。


確かにそうだった。リューイチもその友達2人も僕が目眩で倒れそうになるところを支えてくれていた。


−…何で俺が…そんな事…


僕は何がなんだかわからなくなっていた。


−お前は友達が欲しかったんだろ?いつも自分の側にいてくれる友達が。絶対に離れていく事のない友達が。そうだろ?小さい頃からいつも一人で楽しそうに遊んでたけどホントは友達と遊びたかったんだろ?だからお前が自分でこの世界を造り出したんだよ。このお前だけの友達の庭を……




そこで夢は終わった。

起きた時にはもう既に朝だった。

そして、僕の頬には一筋の涙が流れていた。




 

今日もまた学校を休んだ。何も考える事ができなかった。風邪で休むと母さんに伝える事で精一杯だった。


あの世界は全て僕が造り出したもの。3人をマネキンにしてしまったのも、僕…


その事で頭が一杯だった。どうすれば3人を元の世界に戻せるのか。そんな事を考える余裕は全くなかった。



気付けばもう外は暗かった。時計に目をやると既に10時をまわっていた。


−なんで…。僕は一人でも大丈夫なのに…。友達なんかいなくたって…僕は…僕は…。




−来い。




「えっ…?」




あの声だ。

もう一人の僕が僕に話しかけてきた。



−お前が望んだ世界に連れていってやる。



「嫌だ!やめろ!!」

そう叫ぼうとしたが、激しい目眩と頭痛に襲われ声が出なかった。




目を開けると、そこは夜のバス停だった。大学の前のバス停。


こんな事は初めてだった。場所が変わるなんて。いつも場所と時間はそのままだったのに。


僕は泣きそうになりながらもあのマネキンの場所へ向かった。とても怖かった。これが自分のした事だと思うとすぐにでもこの場から逃げ出したかった。



そこにはやはり3体のマネキンがいた。寂しそうに3体だけ。


そのマネキンを見た瞬間僕の目に涙が溢れてきた。

それは怖さからでもあり、また今までの寂しい自分と初めて向き合った瞬間でもあった。



「こんな事!望んでなんかない!僕はこんな事望んでなんかない!」


僕は涙混じりの声でそう叫んだ。



「やめろ!!元に戻せ!おい!聞こえてるんだろ!!おい!…おぃ……頼むよ………やめてくれ…」


僕はその場に泣き崩れた。もう僕の声は言葉になっていなかった。



−サトシ…



とその時、あの声が聞こえた。



−サトシ…お前が望んだ事だろ…?どうしてやめたがるんだよ…なんでだよ……サトシ……



その声も泣いていた。



「俺はこんな……こんな事で……こんな事をして友達を作りたかったんじゃない!」


僕は必死に自分を否定した。


「ちゃんと…ちゃんと友達を…」



−それができないからお前はこうするしかなかったんじゃないのかよ!?お前はちゃんと友達を作る事なんかできないじゃないか!だからこの世界を造ったんだろ!?



「違う!!そうじゃない!!違う!!」



僕は必死に否定した。



−違わない!お前はいつも他人に壁を作ってきた!自分に自信がないから!自分を知られるのが怖かったから!そうだろ!?いつも明るくお前に接してくれるリュウイチにさえお前は壁を作った!それでもお前は友達が欲しかった!だからこうやって!


「やめろっ!!もうやめてよ…やめてくれよ……」


僕の顔は涙でグシャグシャだった。


−なんでだよ…サトシ…寂しかったんだろ……サトシ……俺ももう寂しいのは嫌なんだよ……



「リュウイチィ!」



僕はもう一人の自分の声を振り払いリュウイチのマネキンに駆け寄った。



「リュウイチ……ごめん…リュウイチ…ホントはもっと仲良くしたかったんだ…自分を知られるのが怖くて…リュウイチ…許して……」






−…サトシ……






「サトシー!!」



僕はバス停にいた。



向こうから駆け寄ってくるのはリュウイチだった。


「久しぶり!今日4限休講だったんだよねぇ!」



あの日に戻っていた。

あのリュウイチがマネキンになった日に。



「リュウイチ!?リュウイチ!?大丈夫!?お前…!?」


「はぁ?サトシお前何言ってんの?あっ、それよりさ!今日佐々木が授業中に鼻血だしやがってさ〜、マジウケたよ〜、あっお前佐々木しらねーか!ごめんな!ハハッ!」



僕はこの状況が飲み込めなかった。でも今、あの日と全く同じ事が起きてる。

だとすれば確かこの後…



「リュウイチ!俺に触んなよ!俺今から目眩がして倒れそうになるけど絶対触んなよ!」



「はぁ?お前マジ何言ってんだよ、ほらバス来たぞ!」




目眩は起こらなかった。




僕はワケがわからずただ呆然と立ち尽くしていた。


「サトシ?どした?」


僕は何事もなく僕に話しかけるリュウイチを見て急に涙が溢れ出して来た。


「リュウイチィ!ごめんなぁぁ!リュウイチィ!許してくれ!リュウイチィ!ホントに…ごめん…」


僕は今まで生きてきた中で一番と言っていいくらいに泣いていた。


「リュウイチ…良かった……」


「はぁ!?サトシお前何泣いてんだよ!マジなんなんだよお前大丈夫か!?」


「リュウイチー!」


向こう側から2人が僕たちの方へ向かってきた。


「おぅ!お前らもう帰んの?」


「うん、休講だったんだよ!」


「ウソつけよ!どうせサボったんだろ!」


「ははっ!まぁな!」



シンタロウとユウタだった。


「ってか、その人なんで泣いてんの?まさか、お前!」


「んなわけねーだろ!俺にもワケわかんねんだよ!おぃサトシ!大丈夫か!?バス行っちまったじゃねーかよ!」



「あぁ…ごめんな、リュウイチ」


「だから何で泣いてんだよ!」


「あぁ、ごめん」


「ってか笑ってんじゃねーか!おぃ!ふざけんなよ!マジ焦ったよ〜!」


「ははっ、ごめんな、ごめんごめん」


僕はホッとしたのか、泣いてるのか笑ってるのかわからない顔になっていた。ハタから見れば物凄く気持ち悪い顔だっただろう。



「あっ、そうだ!リュウイチお前この2人に明日ゲーム貸すんだろ!?絶対忘れんなよ!」


「あっ、そうだよリュウイチ明日絶対忘れんなよ!」


「お、おぅ。…ってかお前、何でしってんの?」


−あ、やべっ…


僕は嬉しさの余りつい余計な事を言ってしまった。


「あ、あぁ、リュウイチ達がそう話してるの聞いたんだよ!ははっ」


「ふーん、まいいや。あっ、またバス来たぞ!」



そうして僕はバスで4人と他愛もない話しをしながら家に帰った。それは今まで僕が感じた事の無いようなとても幸せな時間だった。




「ただいま!」


「あっ、おかえり〜。」


いつもと同じだった。バスから降りて家まで5分の道のりも、その途中でいつも僕に吠えてくる犬も、そしていつも僕の

「ただいま」の声に応えてくれる母さんの声も。前となんら変わりのないものだった。

でも僕はそれが嬉しかった。いつもと何も変わらない。それがなにより嬉しかった。



その晩僕は夢を見た。

その夢ではもう一人の僕がただ一言こう言った。






−もう、俺は必要ないよな。






僕はこのもう一人の僕が消えて行くのがはっきりとわかった。その時僕は帰りのバスで4人で楽しく喋っていた時の気持ちに似た清々しい気持ちだった。




−ありがとう。




僕はそうもう一人の僕に言った。



この日から一度も、あの目眩は起こっていない。

最後まで読んで頂きありがとうございました。これは僕の好きな小説家の乙一さんの小説を読んでいた時に、こういう作品があったら面白いな、と思い、半ば興味本位で書き上げたものですのでストーリーや登場人物などの設定が不完全ですf^_^;ですので最後まで読んでいただいた方にはホントに感謝しています。評価して下さった方の意見は真摯に受け止め、またこんな機会があれば参考にしようと思います(^^)

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― 新着の感想 ―
[一言] おもしろいです!私も乙一さんのファンなんですけど、作者様も負けないくらい素晴らしい作品を書いてますね! これが初めての作品とはこの先がとても楽しみです。物語のキーワードの“目眩”で興味をもち…
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