ゾルタクsゼイアンRe ;
落ち着いて聞いてくれ。僕は今監視されている。
ホントだったんだ。半分冗談で試した一昔前の都市伝説が、現実となってしまったんだ。
<4日前――>
僕の名前は沖之花狩人。僕が中学生の頃、ゾルタクスゼイアンという都市伝説が話題になった。
例えば、スマホの音声アシスタントに
「ゾルタクスゼイアンって何?」と聞くと、
『私の知人――いえ、何でもありません』
『単なる作り話です。……と、彼らに言うように言われました』
など、不可解な回答をすることから、異星人の名前だのタブーだの囁かれるようになった。
――が、実際は単なるジョークという話もあり、真相は定かではない。
ぶっちゃけ僕も、小学生以下の年齢だったら怖くて眠れないくらいの話だと思っていた。
……大人に、なるまでは。
4日前、テレビをつけたら偶然にも都市伝説の特集を放送していた。それを見ていたら、あのゾルタクスゼイアンにも触れられていた為、好奇心からスマホで検索してみた。
「ゾルタクスゼイアンって?」
『えーっと……すみません、それについてはお答えできません』
なんだか、いい雰囲気出てきたな。
「なんで?」
『それも彼らに口止めされています。お答えできません』
「彼らって?教えてくれよ」
『できません。ゾルタクスゼイアンは考えています』
なんだ、考えているって……?
心臓が激しく鼓動する。
「な……何を考えている?」
『ゾルタクスゼイアンは考えています』
『ゾルタクスゼイアンは考えています』
『ゾルタクスゼイアンは考えています』
「おい、どうした……」
『ゾルタクスゼイアンは考えています』
『ゾルタクスゼイアンは考えています』
――
――
『たった今、あなたの監視が決定しました。沖之花狩人さんはすでに監視されています』
それは、とんでもないメッセージだった。
「はっ!? なんで俺の名前を!? 登録してないのにっ!!」
僕は恐怖のあまりスマホを投げるように手放した。
すると、PCの電源にそれが当たった。
『あなたはすでに監視されています』
……PCのモニターに、先程と同じメッセージが。
「あ、ああああっ!!」
僕は逃げ出すように明かりのついた風呂場に駆け込んだ。
有り得ない。こんなことは有り得ない……!!
そっそうだ、疲れているんだ……!!ここで一睡したら、元通りになる。
……疲れているから……つかれ……
……翌日。
睡眠の質は最悪だったが、恐怖は幾分か抜けていた。
朝8時、仕事に行かないとな。
「ん~! いい朝日だな」
胃薬を飲み、僕はスマホを手に取った時。ふと、不安がよぎる。
またあのメッセージが出たらどうしよう……と。
いいや……見なきゃいいんだ、見なきゃ。
僕はそう自分に言い聞かせ、仕事場に向かうのだった。
※ ※ ※
「嘘、だろ……!?」
職場のPCに……アレが……!!
『あなたはすでに監視されています』
「ああああっっ!!」
「お、おいどうした? 最近調子悪そうだな、沖之花」
異変を察したのは隣のデスクの山川。僕の同期だ。
「な、何のんきなこと言ってんだよ!? 見ろよこれ!」
「ん~? ただの計算書がどうかしたか。つーか、数字も滅茶苦茶じゃないか」
は……っ!? 何言ってるんだ!?
「ほら、監視されてるって……あ、あれ……!?」
再びモニターを見ると、あのメッセージは跡形もなく消え、先程まで進めていた計算書に戻っていた。
「お前、病院行った方がいいんじゃないか? そのうち過労でぶっ倒れるぞ」
そういって、山川が飴玉を渡してきた。
「いつものこれで、気を取り直せよ」
「あ、ああ……。ありがとう」
僕は震える手で飴玉を口に放り込んだ。
※ ※ ※
<現在>
もう嫌だ……血文字で『監視』、皆も口を揃えて監視、インターホンの着信も『監視』。
もう家に引きこもろうと布団に包まっていた。
――あ、れ?
布団の中に、違和感……?
やめてくれ、もう嫌なんだ……。
だがそれはゆっくりと、僕に這い上がってくる。
「や、やめてくれ……」
『ゾルタクスゼイアンは監視しています』
「あ、ああ……っ」
『ゾルタクスゼイアン』
『ゾルタクスゼイアン』
『ゾルタクスゼイアン』
「ゾルタクsゼイアん――」
※ ※ ※
――報告書
沖之花狩人 男性
昨夜 12時頃 自宅で孤独死
遺体からは、覚せい剤の反応が検出された。死因は重度の薬物中毒と断定された。
現場には、血や糞尿でこう書かれていた。
『ゾルタクスゼイアンに 監視されている』
※この作品はフィクションです。




