14.「お礼の提案」
「ーーいやぁ、恥ずかしい所を見せちゃったわね! ごめんごめん!」
あっはっはっ!、と明るく笑うベナンに、ジルは思わず脱力する。
あれから『なんでも売買店』に戻ってきた一行。
オルラッドが腕のいい医者を知っているとのことで、その医者とやらにベナンの治療を頼んだところ、件の医者は秒で治療を終わらせ去っていってしまった。
何者なんだ……。
ジルの中でオルラッドの謎が深まる。だが聞いてはいけないと、彼は浮かぶ疑問を心の中で封印した。
「てか、ホントに大丈夫なんですか? その、身体……めっちゃ……」
「あー、大丈夫大丈夫! 私こう見えても結構病気とか怪我には強いから! ていうか、お医者様の手配までしてくれてありがとね。また助けられちゃったなぁ〜!」
あはは!、と笑うベナンに、ジルの口元がゆるくなる。
元気そうだ。良かった。
頭に浮かぶその言葉。心の底からの安堵の言葉に、ジルは小さく目を伏せた。
「それはそうと、こんなに助けてもらってるのに何もしないワケにはいかないわね……」
「別にいいっすよ。そんな大したことはしてないし……」
「あら、ひと一人の命を二度も救ったのよ? それはもう十分大したことになると思うけど?」
「それはまあ……うーん……」
悩ましげなジル。
と、部屋の隅で二人を観察していたミーリャが突如動いた。かと思えば、彼女は驚くジルを片手で退かしながら、ベッド上にてキョトンとするベナンに向け口を開く。
「お礼がしたいなら食糧を頼みたいのね」
「食糧?」
「そう。ミーリャたちは言ってしまえば旅人。だから道中ありつける飯が欲しいのよ」
「ああ、なるほどね。そんなことならお安い御用! 腕によりをかけて美味しいお弁当作ったげるわね!」
「ふん。期待はしないけど頑張るのね」
吐き捨てるミーリャ。
ジルは堪らず彼女の名を呼ぶ。
「なによ」
「いや、なによじゃないだろ! お前さぁ、言い方って知ってる!?」
「ふん。興味ないのね」
吐き捨てたミーリャが踵を返す。
扉の傍で待機していたオルラッドに何かを告げて出ていく彼女を見送り、ジルは深々と嘆息。してから、困ったように笑顔のベナンを振り返った。
「すんません、ベナンさん。アイツ……」
「いいのいいの! 気にしないで! それに、子供はあれくらいあった方がかわいいってもんよ!」
「……優しいっすね、ベナンさんは」
「そう? 普通だと思うけど……」
話していると、「ジル」とオルラッドが少年を呼んだ。ジルは不思議そうに振り返り、「どうかした?」と彼に訊ねる。
「いや、そろそろベナン嬢を休ませてあげた方が良いのではないかと思ってね。本調子ではないだろうし……」
「それもそうか」
頷くジルは「んじゃゆっくり休んでくださいね」と一言。ベナンに頭を下げ、扉を開けてくれたオルラッドに礼を告げて彼と共に廊下に出る。
「早く治るといいな」
閉ざされた扉を見つつ、一言。
「治るさ。それに、ベナン嬢を治療した医者は俺が知る中でもトップクラスの腕を持っているからね。絶対に大丈夫と言い切れるよ」
「そんな医者と知り合いのオルラッド……一体何者なんだ……」
思わず告げたジルに、オルラッドはニコニコと笑っていた。




