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弱者が悪を目指した黙示録  作者: ヤヤ
第一章 弱者の周りに集うは強者
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12.「恩人を助けるために」

「ーー死亡フラグぅうううう!!」


 ハッと覚醒した直後、ジルは頭を抱えてそう叫んだ。かと思えば全力疾走で『なんでも売買店』の中へ。駆け込んでいく。


 今し方見た光景は恐らく、少女の容姿から察するにベナンに関係していることは間違いない。彼女の幼い頃の話、といったところか。


 エレベーターのボタンを連打し、全然降りてくる気配のないエレベーターに舌打ちし、ジルは階段へ向かった。持ち前の素早さを生かし、長いそれを駆け上がる。


「過去話とかまじ死亡フラグだから!勘弁してくれよほんと!!」


 さすがに優しくしてくれた女性を見殺しにするわけにはいかない。いやまだ死ぬと決まったわけではないが。


 宿泊していた部屋が存在する階までやって来たジルは、そのまま速度を保ち与えられた部屋へ。飛び込んだそこで、音に驚き跳ね起きたミーリャから渾身の一撃(物理)を食らう。


 しかし彼はめげない。


 若干フラフラになりながらも、ちょっと引き気味のミーリャへとジルは詰め寄った。


「き、聞いてくれ、ミーリャっ! 敵が襲ってきてベナンさんがぶっ飛ばしてぶっ飛ばされたそいつをベナンさんが笑顔で追いかけて死亡フラグたてて死にそうで大変なんだ!!」


「……わけがわからないのね」


「とりあえず大変なんだって!!」


 とりあえず簡易的に説明しなおす。

 ミーリャは納得しているのかしていないのかよくわからぬ表情で頷いた。


「早く助けに行かないと死亡フラグ回収してベナンさん死んじゃうから! まだそうだと決まったわけじゃないけどでも多分高確率でやばいから! 語彙力の欠如によりうまく伝えらんないけどとにかく力貸してくれお願いしますミーリャ様!」


「……ミーリャは別に構わないのね。でも、そういうことだったらミーリャより適任の奴がいると思うのよ」


「オルラッドぉおおおお!!」


 床を蹴り跳躍。そのまま未だ夢の中のオルラッドの上へと着地した彼は、聞こえた呻き声など気にすることなく彼の胸ぐらを掴み激しく揺する。


「頼むオルラッドお前の力が必要だ手を貸してくれお願いしますっ!!」


「ジル、落ち着きなさい。オルラッドが死ぬのよ」


「へ? あ、ちょっ、オルラッドぉおおおお!!?」


 胸ぐらを掴まれたまま目を回す彼を前にし、焦るジルの背後。ミーリャは先が思いやられると言いたげに額に手を当て、ゆるく首を振っていた。


 オルラッドの回復までには五分程の時間を有した。どうやら彼は朝ーーというよりは寝起きが非常に弱いらしい。未だ完全に目覚めていない状態でジルの話を聞いている。


 一番頼りになる奴が一番助けて欲しい時に一番頼りない。


 本当に大丈夫だろうかと内心彼を疑い、そして彼の意外な弱点にシメシメと思いつつ、ジルは気を取り直すように言った。


「ーーとにかく、そんなわけだから急いでついて来てほしいんだ。見た感じ目的地はそんな遠くないと思うし……って、聞いてる?」


「うん、あー……うん」


「ダメだこりゃ……」


 少年はガックリと肩を落とした。




 ◇



 眠りの波に乗り船を漕ぐオルラッド。その腕をジルとミーリャで片方ずつ掴んで引っ張れば、彼は逆らうことなく足を動かす。


 現時点での最強人物大丈夫かおい。

 ジルは不安を増させていく。


 エレベーターを使用して一階に降り、そのまま建物を後にし向かったのは高層ビルの建ち並ぶ街中だ。

 まだ朝早いためか、車通りの少ない道路を過ぎったり、路地の壁をよじ登ったりして時間短縮したお陰か十分足らずで目的地に到着。


 そこは窓ガラスなどが取り外された、今にも壊れそうな程におんぼろの廃ビルだった。


 耳をすませば中から微かに金属音が聞こえてくる。どうやらここで間違いないらしい。


 危険を察知したジルはオルラッドの背後に隠れる。

それをミーリャが冷めた目で見ながら、先頭を歩いた。


 特に難もなく入り込んだ屋内は、ひどくカビ臭く、獣族の血が流れるジルにとってはかなり辛い場所であった。思わず鼻を抑える彼を尻目、まだどこかボンヤリとしているオルラッドが静かな動作で上を向く。


「……五階かなぁ」


 やはりこ奴はすごい。

 彼の寝ぼけた呟きに従い、三人は薄汚れた階段を駆け上がる。

 階を増すごとに、耳に届く音は大きくなっていった。そして例の五階までたどり着いた瞬間ーー


「はぁあああっ!!」


 大きく手にした武器を振るったベナンの姿が、彼らの視界に写り込んだ。その先では手を合わせて佇む女の姿がある。


「っ!? ベナンさん!! 避けて!!」


 何かに気づいたようだ。オルラッドの背後から飛び出したジルがそう叫ぶ。しかし、その声がベナンに届くより、女が行動に出る方が早かった。


「ーー死に腐れクソビッチ」


 歪に弧を描いた口元。白い歯を覗かせながら、女はその呪文を紡ぎだす。


「ベル・ベルダ」


 直後、耳を覆いたくなるような甲高い音と共に、辺りは眩い光に包まれた。

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