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断罪のその日、私は幼なじみに拾われました  作者: あめとおと


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8/9

最終話 王都は、もう彼女なしでは立っていられない

 王宮の会議室は、重苦しい沈黙に包まれていた。


「……また、赤字です」


 財務官の声が震える。


 数字は正直だった。

 エレノアが去ってから、王国の収支は右肩下がりだ。


「商会との取引も、再交渉は拒否されています」

「理由は?」


 分かっているくせに、王太子は聞いた。


「……エレノア様が、現在は隣国商会の要職に就いているためです」


 決定的だった。


 彼女はもう、

 王都に戻らなくても生きていける。

 ――いや、戻らないほうが、うまくいっている。


 ***


 王太子は、最後の賭けに出た。


 正式な親書。

 条件付きの謝罪。

 地位の回復と、名誉の保証。


 それらすべてを携えて、

 隣国商会へ使者を送った。


 返ってきた返事は、ひどく簡潔だった。


『王都との契約は、今後一切結びません』


 理由は、添えられていない。


 だが、十分だった。


 ***


 一方その頃。


 商会の応接室で、私は静かに紅茶を飲んでいた。


「王都からの使者、断っておいた」


 レオンがそう告げる。


「ありがとう」


 それだけで、話は終わった。


 恨みも、未練も、もうない。

 私は、過去を振り返るためにここにいるのではない。


「……王都は、どうなるかしら」


「しばらくは混乱するだろうな」


 彼は淡々と言う。


「でも、それは君の責任じゃない」


 そう。


 王都が回らないのは、

 私がいなくなったからではない。


 私に頼りきっていたことに、気づかなかったからだ。


 ***


 数か月後。


 王太子は、補佐官に叱責され続け、

 ヒロイン・リリアーナは、

 “選ばれるだけ”では何もできない現実に直面していた。


 王都は、物語の中心であることを失った。


 そして私は――


「次の事業案、これで進めましょう」

「了解だ、エレノア」


 名前を呼ばれ、

 必要とされ、

 選ばれている。


 もう、悪役令嬢ではない。

 もう、ヒロインでもない。


 ただ一人の女性として、

 自分の人生を歩いている。


 物語は、王都で終わった。


 けれど私の人生は、

 ここからが本編ですわ。


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