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断罪のその日、私は幼なじみに拾われました  作者: あめとおと


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7/9

幕間 ヒロイン・リリアーナは、誰にも選ばれなくなった夜に立ち尽くす

 夜の王宮は、こんなにも静かだっただろうか。


 私は一人、窓辺に立っていた。

 かつては、殿下が隣にいて、

 皆が私を見つめて、

 未来は当然のように約束されていた。


(……なのに)


 殿下は最近、私を見ない。


 正確には――

 何かを探すような目で、過去ばかりを見ている。


「エレノア……」


 彼の口から零れる名前を、

 私は何度も聞いた。


 そのたびに胸が冷えていく。


 ***


 私はヒロインだった。


 守られ、愛され、選ばれる存在。

 努力しなくても、物語が味方をしてくれる。


 ――そう、信じていた。


 でも。


 エレノアがいなくなった途端、

 物語は私を助けてくれなくなった。


 誰も教えてくれない。

 誰も決断してくれない。

 失敗すれば、ただ責められる。


(……私、何も持っていなかったんだ)


 優しさも、知識も、覚悟も。

 ただ“ヒロイン”という立場だけ。


 それは、

 誰かが支えてくれて初めて成立する役割だった。


 ***


 噂は、残酷だった。


 エレノアが商会で活躍していること。

 信頼され、必要とされ、

 誰かの隣で穏やかに笑っていること。


(違う……)


 そう思いたかった。


 悪役令嬢は、

 私を輝かせるための影であるべきだった。


 なのに今は、

 私のほうが影に立っている。


 ***


 鏡に映る私は、

 相変わらず“可哀想で、守られるヒロイン”の顔をしている。


 でも。


「……もう、誰も来ないわ」


 泣いても、

 祈っても、

 物語は動かない。


 そのとき、初めて理解した。


 エレノアは、

 悪役をやめただけではなかった。


 自分の人生を、自分で選んだのだ。


 私は?


 選ばれるのを、

 ただ待っていただけ。


 ***


 膝から力が抜け、

 私はその場に座り込む。


 闇に落ちる一歩手前で、

 まだ、かすかな分かれ道が見えていた。


 ――努力する道。

 ――変わる道。

 ――誰かに依存しない道。


 でも、その道は、

 もう“物語”の外にある。


「……怖い」


 小さく呟いた声は、

 誰にも届かなかった。


 ヒロインだった少女は、

 この夜、初めて知った。


 役割を失うことは、終わりではない。

 ただ、始め方を知らないだけなのだと。


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