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断罪のその日、私は幼なじみに拾われました  作者: あめとおと


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5/9

第5話 ヒロインは、物語が思い通りに進まないことを知る

 ――おかしい。


 王太子殿下の隣に立っているのは、

 リリアーナ・フェルナンド――この私のはずなのに。


 祝福される未来も、

 皆に愛される立場も、

 すべて手に入れたはずだった。


(なのに……どうして、こんなに不安なの?)


 断罪の日、私は泣いた。

 怖くて、可哀想で、守られるヒロインでいるために。


 それが、正しいはずだった。


 ***


「エレノア様は、王都へ戻らないそうです」


 その報告を聞いた瞬間、胸がざわついた。


「……戻らない?」


 悪役令嬢は退場するもの。

 それが、この世界の“流れ”だった。


 なのに、エレノアは去ったまま、

 しかも幸せそうだという。


(そんなの……想定外)


 ***


 エレノアがいなくなってから、王宮は変わった。


 会議は長引き、

 殿下は苛立ち、

 書類は山積みになる。


「リリアーナ様、この件ですが……」

「……ごめんなさい、分かりません」


 口にした瞬間、気づいてしまった。


 私は、

 答える役ではなかったのだと。


 エレノアがいた頃、

 私はただ、隣で微笑んでいればよかった。


(ヒロインは、選ばれる存在……)


 その考えが、

 初めて不安に変わる。


 ***


 噂は、私を追い詰めた。


 追放されたはずのエレノアが、

 商会で信頼され、

 誰かの隣で笑っている。


「……間違ってる」


 悪役令嬢は、不幸になる役。

 私が幸せになるための、踏み台。


 それなのに。


(どうして……私じゃなくて、あの人が?)


 気づいてしまった。


 私が欲しかったのは、

 殿下の愛ではない。


 物語の中心にいる安心感だったのだ。


 ***


 夜、鏡の前で立ち尽くす。


 涙を流す顔は、

 完璧なヒロインのはず。


 けれど。


「……この先、どうすればいいの?」


 答えてくれる人は、もういない。


 エレノアは、物語から降りた。

 そして物語は、私を守らなくなった。


 初めて知った。


 ヒロインであることは、

 幸せを保証する役割ではない――。


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