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マイク・ファイアストンの手記Ⅰ

 ありゃあ、最悪の寝覚めだったぜ。


 朝、突如として地面を叩き砕くような音が聞こえてきたんだ。俺ぁ寝ぼけた頭で考えて、すこしして気付いた。


 攻めてきた。竜紋人が、グレイゲル王国の軍勢が、攻めてきたんだよ。


 完全に油断してたぜ。俺が住んでいるイアン村は、王国との国境からそれなりに離れてる。安全だと思ってたんだ。王国の軍勢が一気にここまで攻めてくることはないだろうって考えてた。だが、そりゃあ慢心だったみてぇだ。王国は実際に攻めてきた。でけぇ音は、村周辺に配備されてた〈機灰兵きかいへい〉がぶっ壊された音だろう。


 とにかく、慢心を悔いてる暇はなかった。俺は王国の軍勢から逃げようとしたんだ。だが家の扉を開いて、顔から表情を消した。村を囲む森には、兵士の姿がずらっと並んでたんだ。王国の軍勢はもうすぐそこまで迫ってたんだよ。


 他の連中はそれでも逃げようとしてたが、俺の足はもう動かなかった。なんつーか、悟っちまったんだ。もう逃げられねぇってな。


 けど、俺も男だったってことなのか。ただで死んでたまるか──そんな意地みてぇなもんに突き動かされたんだよ。どうせ死ぬなら、華々しく散りながら死んでやる。俺は鍬を握って、王国の軍勢に立ち向かっていったんだ。


 だが、華々しくなんてのは無理だった。俺が振り下ろした鍬は軽々と弾かれちまった。んで、腹に空気の塊のようなもんを当てられた。一瞬で動けなくなっちまったよ。俺ぁ顔を上げて、竜紋人の兵士が剣を向けてくる姿を目にした。


 ありゃあ、覚悟したな。もうダメだ、死ぬって。んで、もうどうすることもできなかった。俺は無念を抱きながら、死を受け入れようとしたんだ。


 けどな次の瞬間、俺を貫こうとしてた剣が唐突に横から弾かれたんだよ。俺はわけが分からねぇまま、目ぇきょろきょろさせて、捉えた。そこには、銀の兜で顔を覆い、銀の鎧に身を包んで、銀の片手半剣を握った騎士が立ってたんだよ。


 俺ぁ戸惑った。誰だこいつって。でもすぐ、銀の兜に、銀の鎧に、銀の片手半剣──この特徴を見て、まさかと思った。


 もう二人、騎士の両脇には人が立ってた。ひとりは袖から鋼のような筋肉を覗かせた、赤髪の兄ちゃんでよ。もうひとりは小柄な身体に不釣り合いな弓を背負った、緑髪の嬢ちゃんだった。このふたりの顔には見覚えがあった。


 次の瞬間、俺は全身から力を抜いたんだ。分かったからだよ、助けが来たって。んで、さらに気付いたからだ。助けに来てくれたのは──あの〈十聖騎士団じっせいきしだん〉の方々だってことにな。


(マイク・ファイアストンの手記Ⅱに続く)

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