1ガチャ目
2人は湖を離れ、草木が生い茂る森の中を進んでいた。
「私以外にも、違う世界から来た人が存在して安心しました」
「そういえば東平高校のこと知ってたみたいだけど...」
「私も東平の生徒だったんです、そういえば名前を言ってませんでしたね、私は神崎 千夜です、2年4組だったんですけどもしかして知ってたりします?」
「いやー流石に...僕1年1組の宝富 万代です!」
(思いっきり先輩だったー!今から敬語使えば怒られないよね?)
「そ、そうですよね!知ってるわけないですよね、アハハ...あと敬語じゃなくていいですよ?私は上下関係とかあまり好きじゃないので」
「あ、はい」
(怒られなかったけどなんかむしろ気まずい...)
そうして森の中を進んで10分が経った。
「先輩、これあとどれくらい歩くんすか?」
結局、先輩という事実が万代に敬語を使わせているようだ。
「あと5分くらいで着くと思います。」
万代は、元の世界と違う生態系に目を凝らしていた。
「なんというかここら辺の生物って動物も植物もサイズ感がおかしくないっすか?」
「私もここに来た時は驚きました、ただ、このエリアだけ生物のサイズ感がおかしいという可能性もあるのでなんとも言えませんけど...」
「あ、ちょっと待ってください先輩!」
「どうかしました?」
「見て下さいこれ!綺麗なコインが落ちてますよ!」
万代が手にしていたのは、両面に竜の足跡が描かれた金色のコインだった。
「これ...ドラゴンコインだ...もしかしてそこに落ちてたんですか!?」
「そうっすね...落ちてるのを偶然見つけて...」
「ドラゴンコインは、私達がこの世界から元の世界に戻るために必要不可欠なんです」
「こんなコインがですか?もしかして100個集めたらなにかのアイテムと交換とか?」
「そんな便利なシステムがあればいいですけどね...でも複数枚集める必要があるのは確かですね」
「にしても先輩、結構この世界に詳しいんですね?」
「ここに来てからもう半年ぐらい経ってますから」
「半年!?」
「はい、この半年で元の世界に帰る方法を模索してました」
「よく精神持ちますね...」
「慣れれば案外平気ですよ!あ、あれが私の家です」
そうして2人は、森の中にポツンと佇む千夜の家に辿り着く。
「意外と何も無い...」
千夜の家はコンクリートで出来た家ではなく、木製のロッジハウスのような家だったため、新鮮さから色々な妄想を膨らませていたが、万代の琴線に触れるようなものは特に無かった。
「ここには娯楽という娯楽が無いんですよ、あとお金を稼ぐために街の人の依頼をこなしてたら、忙しくて食べて寝るための場所になってたんです...」
「なんか社畜じみてますね...あれ?これなんですか?」
そこで万代が見つけたのは、龍の頭と手が付いたかなり大きめの四角い石だった。
「依頼をこなした時に貰ったものなんですけど、正直私には良さが分からないです」
「へぇーにしてもでかいっすねーガチャポンの機械くらいの大きさですよこれ」
「ガチャポン?あー確かにそれくらいの大きさですね」
そうしてじっくり観察してた万代だったが、
『人間よ』
「ん?先輩何か言いました?」
「へ?何も言ってないけど...」
『我に力を与えよ』
「え?じゃあ誰の声だ?」
「宝富君!なんかポケット光ってるよ!?さっきのドラゴンオーブじゃない!?」
「ん?ほんとだ!」
万代も光っているポケットに気付き、その光源を取り出す。
『そうだ!それを近づけろ』
「もしかしてお前が喋ってんのか!?」
(目の前の石が俺に話しかけるなんてそんな事あるか?)
しかし、興味本位でドラゴンコインを近づける。
「ちょっと万代君!危険だよ!」
千夜の警告も虚しく、2つは共鳴するかのように輝き出す。そして、持っていたドラゴンコインは石の中に吸い込まれ、今度は石から不思議な力が放出され、その力は万代を覆う。
「え、なになになにこれ!?」
戸惑っていた万代だが、その光は程なくして収まった。
「ん?特に変わった様子は…いや、なんか力が漲る気がする!」
頭の中で浮かんだイメージが彼を突き動かす。
「え、何するつもり...」
千夜はまたもや嫌な予感がしたが時すでに遅し。万代の左手の掌から放たれた炎の柱は、木造住宅を瞬く間に火の海に変えた。
「あ」
「私の家があぁぁぁぁぁ!!」
「やばやばやば!どどどどうすれば!?」
「とりあえず外に出て!私の魔法で消火するから!」
1時間ほどかけて消火しきったが、木造の家はもはや見る影も無かった。
「私の家...」
「本当にすみませんでした...」
あまりの申し訳なさに土下座をして、頭を上げられない万代だった。
『愉快な人間達だ、暫くはこいつらに着いていくとするか』
ちょっと追加で話書いてみました。