No.005 えっ!
ほんと入院ってさ、ほんとかね、と心の中で疑うのだけれど、正直に声に出せないのだ。
夢乃「でも1回だけって言ったよね、だから了承したんだけどさぁ」
和也「ごめん、今回で最後にする、約束する」
夢乃は貸すだけ、返してくれんだから大丈夫、金額も少ない方だし、今回で最後ってことを信じることにした。
夢乃「うん、わかったよ、1万円、土曜日振り込むね」
和也「ほんとありがとう、助かるわ。」
夢乃「そんな仕事忙しくて、炊飯器買いに行けるの?」
和也「休み時間にディスカウントショップ・ヤマゼンっていう店があるから、その店行って値段みてくる、あと米の値段とか見てくるわ、別に10㎏じゃなくても今はいろいろな㎏で買えるし、それは便利だよね」
夢乃「そうね便利だね、炊飯器買ったら連絡ちょうだい、」
和也「うん、助かるほんと、絶対夢の手伝いさせてもらうからね、何でもするよ、マネージャーは仕事取りにいかないとね」
夢乃「ありがとう、なんかわくわくしてくるわ、あっ、もうこんな時間つい話し込んじゃったわ」
和也「ごめん、また話そう、25日に返却するから今日はありがとうおやすみ」
夢乃の心の中は、ほんとか?検査入院も、労災扱いってことも、なんか信じれないままだ。企業はそんな簡単に労災を使うのだろうか、と言うところがまず疑問すぎるのだ。詳しくないからハッキリ疑えないのが残念な推察。
"マネージャー"と言う、単語を出されるとなぜか弱くなってしまう夢乃だ。一緒に夢に向かってくれる人、そう最後まで信じたい気持ちがそうさせているのだろう。約束通り土曜日に1万円振り込み、連絡した、
和也からは、"今昼休み引き出ししたよ、ありがとう"
と返信が届いた。がやっぱり変だよと感じるのだ。
自分の事に関することは返信があるけれど、それ以外は質問しても返答がないからだ。結果はいつ出るの?/検査と入院支払金額はいくらなの?
と尋ねても返事はない。
返信するくらい5分も必要ないだろうに・・・・・
数日後、"5.5合炊き炊飯器購入した、9,500円で米が買えなかった"
そのメッセージに唖然とする。これは追加で借りたいってことなのか?
状況を読み取れってことなのか?
様々な言葉と意味を夢乃の脳裏はぐるぐる駆け巡っている。
一体私は操られているのか、奴隷なのか、落ち着け、でも、けど、だって・・・・・
こんなの旦那に内緒だし、誰にも打ち明けることはできない。
自問自答しながら・・・・・
暦は12月。
労災の受け取りが戻ってくるのは書類上時差ができ、数カ月を要するのだ。和也はそれさえ知らない。
そして12月25日になっても和也からの振込連絡がなかったのだ。
夢乃はあーとうとう騙されたか、私・・・・・