破滅に導く人形は神殿に戻りたい
月明かりがある森にふり注いでいる、そこには焚き火を取り囲んでいるある一団がいた。
「この二年間、俺たちの仕事が上手くいくように
なったのは、この御神像のおかげかな」
「あぁ、そうだな」
その一団のリーダーらしき者がある人形を手にする。その御神像はある神殿から盗み出されたのを彼ら少しが預かっているモノである。
その時、ランタンを手にして、その光を頼りに一人の若者が周りを用心する様に見廻しながら歩いていた。
「おい、見ろよ」
一人がその様子を見る。
「旅人か、こんな夜にこんな所を歩くなんて、お宝を輸送しているのだろう」
彼らの中の一人が呟いて、剣を手にする。
「どうするつもりだ」
「ひとっ走りしてくるわ」
その男はその若者を目差して走り出した。
「全く、なにを考えているのか」
彼らが、笑っていると、その男がぶっ飛んで戻ってくる。
「なに、どうした。お前」
仲間達が彼に近づくと、あの若者がこちらにやってきた。
「なにかと、思ったら、愚かな盗賊団か」
「なんだと、愚かな盗賊団だと」
その一団のリーダーが立ち上がる。
「そうだよ。その人形に導かれて、人形が封印されていた神殿の近くに来ているから」
「なんだと」
そのことを聞いたリーダーは手持ちの地図を広げて見る。
「そんなバカな」
彼らは神殿に近づかない様に注意を払いながら動いていたバスだが、改めて地図を見ると、目と鼻の先にその神殿があったのだ。
「そんな、神殿へ近づかないように、細心の注意をしながら動いていたのに」
「それは、その人形が自分の力を恐れて、神殿に封印されたいから、お前達が地図を見間違える様にしたのだろうね」
その若者が彼らを静かに見つめる。
「そんなのは聞いてはいない」
「その人形は自分の力を恐れて、自ら封印されることを選んだそうだ」
若者がそう言うと、彼らは怒りだした。
「人形に意思があると言いたいのか、青二才が」
「そのとおりです。その人形は自分のその力を恐れて、旅をしていたあの神殿の神官に頼んで、自ら封印したのさ」
その言葉に彼らは驚く。
「自ら封印を選んだだと、そんなバカな」
「そう、彼女は自分の力で好きになった子供の家族が不幸のどん底へ落ちるのを見て、決意をしたそうだ」
若者は彼らを睨んだ。
「なにを決意をしたのだよ」
「さっきも言いましたけど、自分の力を恐れて、神官に頼んだのさ」
若者は呆れて言う。
「てめい、俺たちをバカにしているのか」
「てめい、じゃあないよ。俺には、ジャック・キットという名前があるよ」
自らジャックと名乗った若者は彼らを再び睨みつけた。
「まるで、偽名みたいな名前だな」
「そうだよ。幼い頃、記憶喪失だったので、仮の名だったのだから」
ジャックがそう言うと、盗賊団は彼を取り囲む。
「そうか、本名は名無しか、墓標にはそう彫ってやろう」
「それでも、かまわないよ。でも、俺は負けないから」
ジャックは不敵に笑った。
「負けないだと、これだけの人数に一人で勝てるといいたいのか」
男達はそう言って、武器を取り出して次々と構える。
「そうかい、そのくらいの武器だったら、俺のこのファング・オブ・エタールドラゴンが噛み砕いてやるよ」
彼はそう言って、後ろ腰からナイフを取り出した。
「おい、そんなナイフで勝てると思っているのか」
男達は笑いだして、ジャックに襲いかかるが、何故か、彼のナイフが自分達の武器に触れると、ジャックの宣言どおりに、武器が獣の牙に噛み砕く様になってなっていく。
「どうゆうことだ」
「このナイフはあらゆる武具を噛み砕く力があるのだから」
その言葉に男達の一人が怒りだして、バトルアックスを振り上げて彼に振り下ろすが、ブラストは左腕を上げて、その攻撃を受けるが、そのとき、何か硬いものがぶつかる音がした。
「てめい、何か腕に仕込んでいるのか」
「さぁね」
ジャックは笑って、ナイフを構える。
「それでは、コレならどうだ」
男達のリーダー格の男がある一本の剣を出した。
「それはまさか、セイント・ブレイド・ミリオンの一つ、ガルホーン」
「ほう、知っているのか」
リーダーが笑うと、ジャックは静かに言う。
「それなら、俺のナイフに勝てるかも、だが、真の所有者じゃなければ無理だな」
「真の所有者だと、そんなのは関係ないさ、強い者が強い武具を持つ権利があるのさ」
リーダーは剣を振り回しながら叫んだ。
「それは大きな間違えだよ。巨大な力を持つ武具は自ら所有者を選ぶ」
ジャックはナイフを腰の後にある鞘に収めて、両手を獣みたいに構える。
「ほう、獣牙拳か」
リーダーは笑って彼に襲いかかったが、先ほどと同じ様に左腕を上げてそれを防いだ。
「やっぱり、何か、仕込んで居るのか」
「さぁね」
ジャックが笑っていると、リーダーは仲間に助けを求めようとすると、彼らは数人の男達に捕らえられている。
「何者だ。あいつらは」
「思ったとおりになったか」
ジャックは笑った。






