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太陽の昇らない、雪で閉ざされた理不尽な世界、少年と竜は…

初なろうです。よろしくです。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

1章 誰かのために…

 前世のぼくは12歳の小学6年生だった。とあるきっかけから絵を描くことが好きになっていた。

「アカネさん!どう?」

「マオくん今日もありがとう、よく描けてるよ」

僕が掲げているのは一匹の竜が満月を背に雄たけびをあげている油絵だ。竜はかっこいい。凛々しく広げた翼、鋭くとがった爪、たくましいその肉体を覆う漆黒の鱗…。ここんとこ竜ばっかりテーマにしている気がする。

「あっこないだ教えた技法、もうマスターしてんじゃん!」

「へへへ…僕もアカネさんみたいなの描きたくて…」


 アカネさんは近所の1歳年上の女の子だ。僕と出会うまで、アカネさんはいつも一人で絵を描いていた。生まれつき病弱でなかなか学校にこれず、友達もできなかったそうだ。彼女との出会いは4年前だった。アカネさんが公園で花畑のスケッチをしていたところ、僕はその柔らかな、奥深い画風に心惹かれた。ついつい、うっとり見とれてしまった。

「!私の絵…どう…?」

僕の視線に最初はびっくりしていたようだったが、自らの作品を自慢げに、笑顔になっていた。

「あっ、ごめん…邪魔しちゃって。…それ、奇麗だなって」

「ありがとう!だれかに褒められたの久しぶりなんだ」

「……」


 そこから、お互い仲良くなるのに時間はかからなかった。以来僕は放課後、アカネさんの家に通って絵描きを教わるようになった。何も取り柄もなかった僕だけど、アカネさんのように何か特技を持ちたいなと思ったからだ。風景画に、静物画に、そしてアカネさんをモデルに描いてみたことも。最初は落書きみたいなものしか描けなかったはずなのに、気付けば夕焼け空のグラデーションも描けるようになっていた。


「ここをこうして…そう!筆をなめらかに滑らせて~」

この日は二人で裏山へスケッチに出かけた。僕は坂道にひっそり咲いていたタンポポの花を描くことにした。花を描くのは心が落ち着くから好きだ。一見のどかな野原だけど、近付いてみると凛々しく咲いている。白い下地に広がる二人だけの世界…。このひと時が何よりの幸せだった。空虚だった僕の中に、アカネさんのスキルが流れ込んでいく。彼女は出会った頃よりも顔色が良くなっていた。

「マオくんのおかげで私、毎日楽しいよ。もう一人じゃないんだって」

「そんな…大げさだよ。それを言うのは僕のほう。学校や家にいてもろくなことないから」


 そう、僕にとってもアカネさんは心の支えだった。この出会いがなければ今頃自分はどうなっていたのかなんて考えられない。学校…いや、とくに家庭で、正直僕の人間関係はうまくいっていなかった。


「はい、今日の夕ご飯…」

「おせーじゃねーか!毎日6時には帰ってこいって言ったろ!」

家に帰ればいつもパパがいつも不機嫌で待っている。家中ゴミや洗濯物で埋まっている。母が出て行ってしまった今、僕がしっかりしなければならなかった。

「ごめん…」

ばしっ!

ビンタが飛ぶ。

「お前どっかで遊んでんじゃねぇだろな?いっつも帰りが遅くなって…」

「そ、そんなことないよ…」

長いことパパが仕事に出かけているところを見たことがない。酒浸りでいつもテレビに怒鳴り込んでいる。だからウチは少しずつ貯金を減らし、日に日に貧乏になってきている。僕に弟や妹がおらず、兄は大学生になってすでに家を出ていることが幸いだった。

「わかったらさっさと机に向かえ、来年は中学だろ?受験に落ちたりしたらどうなるかわかってるだろうな?」

「わかってるよ…」

毎日こんなやりとりばかりだからだ。絵の具やスケッチブックはランドセル、もしくは引き出しの奥底に隠していた。


「マオくん?どうしたのそのほっぺ」

「なんでもないよ、ちょっところんじゃっただけ…」

ほっぺたの傷跡や体のアザで家庭の都合に気付かれそうになった。僕の厄介ごとにアカネさんを巻き込むわけにはいかない。でも、こうして一緒に絵を描けるだけであのストレスから一時的に解放されるんだ。

「私みたいに、マオくんの絵が…誰かの助けになったらいいな…」

「……!」

その言葉を聞いて僕の心の灯が強く輝いた。

「…じゃあ、じゃあ!とびきりすっごいの描いてくるからね!できたらアカネさんに真っ先に見せるよ!!」

ついつい興奮してしまった。

「ふふっ、楽しみにしてるよ」

あぁ、このひとときが永遠に続けばいいのに。僕が僕でいられる時間、空間…触れあう心…。


「そんなものが社会の何になる!?」

怒声とともに叩き付けられた画材、薄汚れたそれを拾おうとしたとき、お腹に強い衝撃が加わった。

「がはっ…うぅっ…」

ついにバレてしまった、僕の楽しみ…。

僕だって遊んでばかりじゃない、家に帰れば家事の合間に受験勉強に明け暮れている。6年生になったときはアカネさんのところに訪れる頻度も減らしたつもりだった。

「べ…勉強も…いだっ…!」

父にこうも虐げられているのは優秀な兄の存在もあった。物理学系の有名大学に進学し、さらなる研究分野を目指そうとしているのだ。

「お前もあいつのように、無駄な道を歩むつもりか?」

父は僕のスケッチブックを拾い上げた。嫌な予感がする。

「……!や、やめて……」

父は起き上がれない僕の前で、それを力一杯破り捨てた。

「ーーーー!!」


 そのあとのことはよく覚えていない。熱かったような、寒かったような。体も心もボロボロだ。傷付けられた果てに全身から力が抜けていく。お腹もすいた…。もう鉛筆で落書きする力も残っていない…。これってもしかして……。



いやだ、まだアカネさんに見せていないのに、約束したのに…。


「あちら」の世界での僕の記憶はここまでだった。



『検体711111、アストラル体を確保。肉体再構成及び、キュベリウム注入開始』


2章 転生

 気が付くとそこは真っ白な空間、僕はそこで横になっていた。何も聞こえない、何もない…。ここは一体…。


…そうだ、アカネさん……。


僕は起き上がるとその人物のことが真っ先に浮かんだ。

「おはようございます。検体711111、海野マオさん」

「!!」

無音の世界に聞き覚えのない女の人の声が聞こえた。

「だ…誰…?」

声のする背後を振り返ると、女神様のような白い衣装をまとった金髪碧眼の大人の女性がいた。

「ここはどこですか?僕は一体…」

「マオさん。残念ながら貴方は死にました」

「え、」

唐突にとんでもない事実を宣告された。

「ままま待ってください!ここはあの世だと言うのですか?…っというか、僕はなぜ…?」

焦る僕とは正反対に、彼女は冷静に応答した。

「あなたは日常的に父親から暴行を受けていたようですが、栄養失調による衰弱、そして精神的損傷が致命傷になったようです」

「ーー!!」

その時、あの悪夢のような光景がよみがえった

「あっ…あぅぅ…」

頭を抱え込み、フラッシュバックする父の怒声、痛み、悲しみ、僕の楽園が崩れ去った瞬間が再生される。

「僕は…僕は…」

もう死んでいるだろうに、息が苦しい。くらくらする。

「これでもとの世界とはお別れです」

するとここは死後の世界…。天国なのか?それとも地獄?まさかどっちにも行けなかった者が迷い込むという煉獄とか…?

「………もう…いいです…」

強く否定された僕に残っているものなんて…あるのだろか?もういっそのこと、どうにでもなってしまいたい…。



ふふっ、楽しみにしてるよ



いや、違う。僕には確かに「あった」。


「…アカネさん……!」

まだ残ってたじゃないか、現世の未練…。

「あぁ、あなたのリビドーを構成する『触媒』の…」

「今すぐ生き返らせてください!アカネさんが待っているんです!約束したのに…。僕がパパを困らせるから…。僕の力も…誰かの助けになると言ってくれたのに…」

嗚咽が空間にこだまする。あのパパのいる世界でもいいと思えた、希望があったから…。なんでもいいからお金を稼いで、家を出よう。そしてアカネさんと楽しく日常を過ごしていくんだ、と。なのに、希望を持てたところでおしまいだなんて…。そんなの嫌だ。


「それは不可能なのです。この損傷レベルだと、あなたの肉体だった物はもう使い物になりません。たとえ冷凍保存して未来の蘇生処置を施しても、望めないことでしょう」

僕にとってこの女神様の淡々とした事実の陳列はあまりに冷酷すぎた。

「それだけ、ヒトは脆い生き物ですから…」

「お願いします…お願いします…」

女神様の無機質な眼差しの前に涙を流しながら頭を下げる僕…。

「貴方の『転生』先は私が指定しました。まもなく覚醒するでしょう」

「!」

 転生…!?そう言えばそんなお話、聞いたことあるな…。さえない高校生やサラリーマンが不慮の事故で命を落として、神様にとてつもない力を与えられてゲームみたいな世界に連れて行かれちゃうっていう…。

「ま…待って」

僕が行きたいのは異世界じゃない、女神様を止めるひまもなく、空間がコンピュータバグのように黒に染まり、僕は下へ下へと落ちていった。

「大丈夫、この先は我々の構築した次元構造物…楽園なのです……」

「うわああああああああ」

またもや意識が遠のいていった。


3章 この世界の不条理

 僕は大きな赤い花の上で目覚めた。今まで花びらの中で眠っていたのか、花びらがだんだんと広がっていく。


はっ…。こ、ここは…。


夜だ。雪の降り積もる曇り空の下、森林の中だった。

「寒い…」

ここが『転生』してしまった『異世界』だというのか。服装は生きていたころと同じだった。記憶も継続している。


そんな…もとの世界とはお別れなの……?


とにかく体が冷える。とりあえず、人のいるところを探さなきゃ。


 ずぽ…ずぽ…後ろを振り向けば真っ白な雪原に残る足跡。

「おなかすいた…」

異世界って言ったってどんなものなんだろう?とりあえず呼吸はできる。森だから当然、木もある。こないだ理科でやったっけ、針葉樹っていうやつだ。とりあえず「地球」といえる天体の上だというのは間違いない。木星のように地面がないわけではなく、火星のように空気が薄いわけでもない。重力も普通だ。SFにちょっと興味のあった僕だからか、ついそんなことを考えてしまう。問題なのは…人がいるかどうかだ。


 異世界小説や漫画ではもちろん、人が住んでいて文明を持っている。それはゲームみたいな世界だった。それもいわゆる剣と魔法のファンタジー世界…。だとすると居住区に着くまでの道中、スライムやドラゴンといったモンスターに出くわす危険がある。しかし「それ系」の主人公のほとんどは神様から絶大な魔法や超能力を与えられていて、苦労することはないんだっけ。もしかして僕も…?いや、女神様があの様子では不安しかない。


 そんなことばかり考えていたら、木造の家々が見えてきた。どれも屋根に雪が積もっていて窓から暖かな灯りが見える。

「やった…」

僕のような子供にこの長距離歩行はツラすぎる。まさか異世界でもハードな経験をするとは。ひたすら温もりと休息を求めて村へと駆け込んだ。

「そこのぼく、見かけない顔ね」

案の定、よそ者扱いだった。周りに他の集落や道路が見当たらないため、おそらく閉鎖的なコミュニティなのだろう。しかし、不思議なことに言語が通じた。それもなんと日本語だ。一方看板などに書かれた文字は漢字とは似ても似つかぬ形で読めなかったが。…こんなご都合主義なんて存在するものなのか?モンスターが飛び交い、それを魔法で撃退するであろうという差異はあれど、異世界ものの舞台が同じ地球なだけですごいと感じてしまったのに…。

 ひとまず、この村で一旦お世話になろう。元の世界に生き返る方法はまた後で考えることにして…。

「!…これ、この子の目!」

先ほどの村人が僕の顔をのぞき込むと突然、様子が変わった。僕の目が…?どういうこと?

「まちがいない、『侵食の目』だ」

近隣住民が何人か集まって騒がしくなる。そして僕から距離を置き、何かをひそひそと話したあと、村人の中でもリーダー格の人が戻ってきた。

「見たところ身寄りのない感じだな。いいだろう、共に働いてくれるのならば寝床を貸してやる」

少しひやっとしたが、村人たちは迎え入れてくれるようだ。

「あ、ありがとうございます」

宿屋の一室をサービスしてもらい、なんとか休めるところを確保できた。部屋の紹介が終わるとみんな即座に立ち去ってしまい、辺りはしーんと静かになった。


「んー…?」

入浴しようとした時に鏡で自分の姿を確認した。目がうんたらかんたらと言われたら気になってしまう。

「あっ…」

その瞳は赤く変色していた。前までこんな色じゃなかったような…。転生したときに新しく作られた肉体は何か違うのだろうか?漫画や小説で読んだ特殊な能力が発現する兆しもない。こんな世界で…どうすれば…。

「…アカネさん……」

そんなことばかり考えながらひとり、夜を過ごした。


 翌日、目を覚ますと窓の外はまだ闇と雪が広がっていた。あれ?途中で起きてしまったのか…?と思ったが外はすでに人で賑わっていた。

「こんな時間に…早くないですか?」

「バカ言え、もう朝だぞ?」

「えっ…?」

リーダーから不意にパンのようなものを口に突っ込まれた。これがここの朝ごはんのようだった。

「食え」

あんまりおいしくないそれにかじりつきながら、周りを見渡した。どんな店もすでに開いている。

「もしかして…太陽、出てないんですか?」

いわゆる極夜なのだろうか…?高緯度地域でよく見られる一日中太陽が出ない日という…。

「よそ者、何ボケてんだ?太陽なんてとっくの昔に消えてンだろ、メシ食ったら働け!」

「は、はいー!」

この世界は今まで見てきた異世界もの以上に異世界していた。日の出ない季節どころか、太陽が出てこないのだ。だからこんなに冷え切っているのだろうか、単に冬だというわけではなさそうだ。


 村での日々は苦しいものだった。この村に学校はなかった。僕ぐらいの年の子供たちも当たり前のように働いていた。確かに、この文明レベルなら僕の世界のような教育システムは一般住民たちに行き届いていないだろうなぁ…。僕に割り当てられた仕事は暖炉のための薪集めだった。暖房、そして太陽のない世界でこの寒さ。住民みんなのために働かなければならない。森に出かけては斧を振るい木を切っていく…。というかここの植物ってどうやって生きているのだろうか?光合成は?…やっぱり、僕の「特殊な能力」は出てこない。1番燃えやすい薪の割り方や火のつけ方のコツなどは、昔友達とキャンプしたときの知識が役に立った。


 薪集めが終わると、村の外の魔物退治に駆りだされることもあった。やっぱりいたんだ…「異世界」ゆえの脅威が。村に接近してくる粘っこい生物の群れ。これがいわゆる「スライム」というやつか?鎧で身を固めた大人たちは村を囲うように陣形を成し、迫り来る厄介者を撃退していた。村の兵たちはスライムによく効くという杖を掲げ、そこからエネルギーを発してやつらを消し去っていった。

「蒸発の魔法だ。打撃の効かないやつらにはこれを食らわせる」

討伐片手間にリーダーが教えてくれた。今度は魔法まで…。間違いない、剣と魔法のファンタジー世界だ。しかし、戦場に連れてこられた僕のはずが、そういった杖などの装備は渡されていなかった。

「あの…僕は何をすれば…」

「そこで立っているだけでいい。何しろ、『侵食の目』なのだからな」

「侵食の目…この赤いの…ですか?」

「あぁ、魔物の活動を狂わせてしまう効果がある。場合によっては竜にも…人間にも…な」

「竜…人間……?」

このヘンな目にそんな効果があったなんて。それにしても人間にもって、どういうことなんだ…?


 転生して一ヶ月が経過した。わかってきたことが3つあった。


 一つ目は、この世界の問題だ。200年前に突如、太陽が昇らなくなり寒冷化がこの村、いや世界全体を脅かしているということ。やはり、冬だから雪が積もっているわけではなかった。…とはいえ人類がこうしてギリギリ生き残れる温度なのが不思議だったが。村の通りで親子のこんな会話を聞いたことがあった。

「ねぇお母さん、『太陽』ってなぁに?」

「太陽はね、悪魔に殺されてしまったかつての神様なの。悪魔は欲張りだから、太陽の玉座をうらやましがってついに、軍勢を率いて…」

「それっていつなの?」

「うーん…。私たちのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんの…」当然ながら、農業はあまり良いものではなかった。生産性はギリギリ、村人全員を最低限賄える程度だった。そんな中、よそ者の僕がお邪魔してよかったのだろうか?先人たちが努力を積み重ねた元の世界の、日本の恵まれた環境のありがたみをひしひしと感じた。


太陽が消えたって一体…?赤色巨星になって燃え尽きた?いや、そうならばこんな人であふれた風景なんてありえない。僕の世界とは地球…いや太陽系…宇宙の構造とか都合が違うのかもしれない。


 続いて、生態系が悪化したせいか竜が度々人間を襲いに来るということ。以前描いていた、大きな翼を広げた勇敢な生き物が人々を食らうのだ。まだ僕は実際に見たことはないけれど村の大人たちは彼らに仲間を奪われたことがあるらしい。人間の血を好物とし、力を蓄えているとリーダーから聞いた。


 二つ目。「イイ子にしていないと『ミササゲ』にされる」ということ。そんな人喰いの竜のご機嫌をとるために、口減らしの子供をやつらのエサにするという。つまりは「生け贄」だ。実は竜にも知性があって、ある程度の取り引きをすれば見逃してくれるらしい。…ちゃんとお仕事しなきゃ。「侵食の目」を持ちよそ者扱いされつつも、優遇されているかもしれない僕でもなんだか怖くなってしまった。


 三つ目。やはり、元の世界に生き返る方法は見つからなかったということ。ダメもとで僕のいた世界のこと、そこから生まれ変わってきたことを話しても

「寝ぼけたコト喋ってないで働け」とどやされるか、笑い物にされるだけだった。同世代ぐらいの子供たちにもピンとこないような反応をされた。


 ある晩…というかずっと晩みたいなもんだけど、宿屋のロビーで1日の疲れを癒やしていると奥の部屋から話し声が聞こえてきた。何となく、その内容が気になった。僕はドアに耳を近付け、盗み聞きしてしまった。

「今月の『ミササゲ』は決まったか?」

!!

竜に子供を捧げる、あのミササゲの計画だった。どうしよう…。この村の子たちはみんな怯えていた。自分の番が回ってきたらどうしようって。こんな怖い習慣なんて、僕にはどうすることもできないだろう…。

「あぁ、今度こそあのクソトカゲを始末できるぜ!ホラ、この子だ」

ああ、ついに決定してしまったんだな、かわいそうに…。


「ウミノマオ、あのよそ者さ」

え…僕?

耳を疑った。僕が、竜の生け贄に?

「カワイイ顔してるから都で売れそうだがなぁ…まあ村の安全が第一だ。せいぜい竜のヤツらに愛されることだな」

「来たんだな、『侵食の目』を喰わせるときが」

今度はリーダーの声だ。中は僕と『目』の話題になり、竜への挑発のような声が聞こえてきた。

「あいつらはスライムよりタフな分、『目』の気配には鈍いだろう。だが、『目』の毒は確実だ」


そんな…生まれ変わったばかりなのに…。また死ななきゃいけないの…?


正直、ここの人たちとはあまりいい関係ではなかった。確かに寒い世界で衣食住をとれたのはありがたかったけれど…。もといた世界と違って、ここには味方なんていなかった。もしかして『目』の特性を買われて?リーダーたちに、竜に殺されてしまう…。これが「異世界転生」なの?


逃げなきゃ…


「おっ、よそ者じゃないか!いいところに!」

「ひっ…」

リーダーが扉を開けて僕の肩を叩いた。

「…ごめんなさい…ごめんなさい!」

恐怖と緊張が入り交じり、不意に謝ってしまった。しかしリーダーは上機嫌だった。

「これから旨いモンでも食いに行こうぜ」

ウソだ。「旨いモン」は僕だ。そのまま僕はリーダーの子分らしき男に魔法のようなものを浴びせられ、意識が遠のいてしまった。


4章 結晶と竜

「んーっ!んーっ!」

連れ込まれた先は大きな洞窟だった。火山ガスで着火した炎が中を照らしている。僕は裸にされ四肢を枷で拘束され、口も布でふさがれていた。


「悪く思うな、お前は村を救う英雄さ」

生け贄の準備を済ませたリーダーたちは村へ帰ろうとしていた。ここが竜の住処らしい。

「んーっ!」

「『侵食の目』は竜を呪える。しかもその毒は伝播する。やつらには感知できないという」

リーダーは僕の目を覗きこみながら嬉しそうに語った。僕は竜という名のGを群れごと殺虫するホウ酸団子だというのか。

「そもそも『目』を知っていたとしても、こんなぶっそうな目のお前に誰が歓迎するつもりなんだ?」

「!!」

人間にも影響が出る…そんなことを聞いたことがあるが、僕にはショックが大きかった。

「リーダー!ここは魔力が濃い。それにヤツらの来る時間だ。長居はできないぜ!」

「あぁ。じゃあなよそ者!死ねばもしかしたら、元の世界でまた生まれることができるかもしれねーぜ!ハハハハ!」

「んーっ!んーっ!」

みんな洞窟を去ってしまった。


置いてかないで。僕もっと働くから。どんなツラいことも、恥ずかしいことも…!


悶えても無駄だった。辺りに静寂が戻る。


竜が来るの…?いつ?何匹?どうやって食べられるの?


震えが止まらない。こんな目になってしまったせいで、竜のご飯にされちゃうなんて…。恐怖に続いて孤独感が襲い、涙が止まらなかった。


一人にしないで…。


 あれからどれくらい経っただろう。いまだ竜は来ない。幸いにもガスのおかげで生暖かい。なんらかの中毒になってやられちゃいそうだけど…。


…こんな理不尽、前もどっかで味わったような。


そうだ、一ヶ月前パパに…。あの時の記憶が孤独をより一層深める。


社会の何になる?だって…はは…誰かのために…なったよね。僕…。


あいまいだが、不意にそんな言葉を思い出した。しかし、次に蘇ったのは…。


マオくんの絵が…誰かの助けになったらいいな…。


アカネさん…。


ずっと絵…描いていないな。


パパに破られて以来…転生して以来、一ヶ月間なにも描いていなかった。木の棒が落ちていた。


 食べられる前に時間があるのなら、枝で地面に何か描こっかな…。洞窟の底にはさらさらした砂が積もっていた。僕は手枷をつけられたままなんとか起き上がり、枝を手にして線を引き始めた。


タンポポ…。


アカネさんと裏山に行ったときに描いたっけ。異世界にはなかった青い空、緑の山、色とりどりの花…太陽に向かって咲いた花…温かい空間。どんなに回想してもこの世界には見つからなかった。


せめてまた、あの温もりに出会えたら…。



ぴりっ

突然、僕の体に電気のような何かが流れた。次の瞬間、落書きされていたはずの砂のところにありえない物体が現れていた。


…タンポポ?


水色の半透明な結晶でできたタンポポだった。しかし、輪郭は本物と変わらなかった。この世界では巡り会えなかった、懐かしい花…。


…もしかしたら。


僕はふたたびタンポポを描いた。するとまた体に電撃が加わって、描いた場所から結晶のタンポポが生えてきた。


僕が描いたとおりに、生えてきた。


…ひょっとすると。


今度はチューリップを描いてみた。やっぱりタンポポじゃなくてチューリップの結晶が生成された。


わぁ…。


『侵食の目』はさておき、これが僕の能力なのだろうか。描いたものが実体化する。しかし本物ではなくそれを模した結晶として。そのまま僕はいろんな花を描いた。アサガオに、マリーゴールド、ホウセンカ…ヒマワリ…。手枷足枷がなければもうちょっと描けたのにな。それでも、僕の周りに不思議な花畑が広がった。


「人間、それはなんだ?」

「んっ…!?」

突如、他人の声が洞窟に響いた。声の主をさがしたが、そこにいたのは…。

「我に見せろ。…ほう、不思議な石を生やせるんだな」

大きな翼をもった、黒い竜だった。

「んっ…んーーーっ!!」

ついに竜が来てしまった。


た、食べられる…。


しかも日本語を、人語を話している。知性があるというのは知っていたが…。大きな爪に牙に角に…かっこいいと見とれたいところだけど、今は緊急事態だ。

「お前みたいな人間…いや人間か?見たのは初めてだぞ?」

相手は竜とはいえまじまじと裸を見られて恥ずかしくなる。着る物がほしい…。

「んー…」

「喋れないみたいだな。どれ」

竜の大きな手に掴まれ、いよいよ食べられる…?絶叫したいのに…。


 だが、竜は僕の口の布を取っただけだった。

「ぷはっ…た、食べないでー!!」

「ふんっ、だれが食うもんか」

「えっ…」

その竜からは野蛮なイメージを感じられなかった。もしかして目のことに気付いた…?

「お前まずそうだから」

「え…ああっ…!」

そのまま地面に落とされ、竜は言った。

「もっと作れ。こんなの見たことない」

「あの…食べないの…?」

「いいから!じゃないと燃やすぞ!」

「は、はいっ!…あ、待って。ちょっと…いいかな…」

服が欲しい…。なんとなく昔描いたアカネさんの全体像の絵を思い出した。花以外でも…試してみるか。

「なんだよ、形違うじゃんか~」

「ごめん、これ描いたら続きするから」

その記憶をたよりに衣服を描いてみる。先ほどの花しかり、僕が描いたことのある物のほうが実体化しやすい気がしたからだ。そのせいで、衣服はスカートっぽくて女の子みたいなのが生成されてしまった。が、仕方ない。着てみると材質は先ほどのような岩ではない。いや、同じ結晶なのは確かだが、なぜか柔らかくなって繊維質になっている。こんなのも作れるなんて…。

「ほほ~う」

竜も見とれていた。

「…うっ」

ようやく落ち着いてきたところだったが、直後に強い疲労が襲った。

「おいおい寝るなよ!なーあ!」

少し休んだ。この生成能力は質量保存の法則のように僕の力を結晶に変えて生やしているのだろうか。特に衣服を出したときのほうが多く体力を使った気がする。


「起きろ~、まだ終わってないぞ~」

「う…うーん……」

竜は待っていた。

「これ…一体何なんだ?植物…なのか?」

竜は質問した。

「それはね、僕のいた世界のものだよ」

「お前のいた世界…?」

竜は興味津々だった。

「みんな信じてくれないんだけど、僕は別の世界から生まれ変わったんだ。その時にヘンな力に目覚めちゃって…」

「ふぅ〜ん。わからん!とにかく、もっと出せ!」

この竜、やたら人懐っこくてせっかちだ。ウォーミングアップということで適当に丸を描いたらどでんと結晶の塊が生成された。

「はぁ…はぁ…。さて、描くよ」

「おお~っ」

めきめきと芽を出す結晶の花畑。洞窟のゴツゴツとしたイメージが華やかなものへと変貌を遂げていた。

「はぁ…はぁ……どう?」

力に目覚めたばかりでこんなに行使することになるとは。

「わぁー……。…フン、これでお前の来た世界というものがちょっとだけわかった気がする」

竜は一瞬本心を見せたようだった。直後に取り繕おうとしたが。

「ふふっ」

ずいぶん久しぶりだった。僕の絵…というか構造物が誰かに受け入れられるなんて…。

 ちなみに、花や服、大岩以外にも実体化を試してみたが携帯電話やゲーム機のような機械、複雑な物の生成はムリなようだった。服を作れたのはたまたまだったのか。護身用に剣のようなものは作れたが。


6章 初陣


「みんな、日の光を浴びてキレイに咲くんだ。…ここでは、なさそうだけどね」

それを聞いて、竜の目の色が変わった。

「ん?お前、日の光って言ったか?」

「あっ…」

「日の光って…。お前の世界には昼間があるのかよ?!」

どの花も、太陽の恵みなしでは生きられない。この暗黒の世界で同じような植物が育ったとしても今では失われてしまっただろう。昼を見たことのない人や竜、彼らからするとこの興味は…。


「おいアオイ、人間食ったか?」

洞窟の向こうから別の竜が流れた。先ほどから僕に興味を示していた竜はアオイと言うらしい。

「…フン。あんなゲス種族、誰が食べますってんだ」

「何度も言ったろ?『人間の体液は魔力を秘めている』からしっかり食えってな?」

「魔力…?」

僕は物陰で二匹の会話を聞いていた。

「はいはい、それ食って『戦士』になれというんだろ?世界をこんなにした人間たちに復讐するために」

「え…?」

寒冷化の原因は、人間?あの村では人は竜を脅威とみなし、竜は人を憎んで襲っていた?

「だいたい何だよ、魔力を取り入れるために嫌いな人間を食わなきゃなんないって。解決の糸口を探さず憎んでばかり、我はイヤだね」

すると、話しかけてきた竜の背後からわらわらと他の竜たちも現れた。

「『戦士』になれば、お前も上手く飛べるようになるだろうに」

「アオイ、忘れたのか。人間のせいでこの星は凍りつこうとしているのだ。同胞もどれだけ殺されたことか!」

「え?君飛べないの?」

「しっ…!」

アオイはくやしそうにこちらを睨んだ。こんなに立派な翼が生えているのに、意外でつい口出ししてしまった。今割り込んだらアオイじゃないやつらにムシャムシャされそう…。

「…長、我はあんたのことも嫌いになるよ」

アオイと他の竜との間に緊張が走る。

「『戦士』にならぬのなら、力づくでもさせてみせるつもりだ」

長と呼ばれた竜が手下の竜をけしかけ、アオイの体を取り押さえさせた。

「ぐっ…何を…」

「『ミササゲ』を食らわぬという意地などこれまでだ!」

長は身動きの取れないアオイのふところに飛びつき、鋭い牙で噛み付いた。

「ぐわああああっ…!」


「アオイーー!!」

…はっ、アオイの苦痛につい叫んでしまった。竜たちの視線が一気にこちらに向く。

「人間が一匹…そいつが『ミササゲ』か!」

「ぐうぅ…」

僕は全速力で向こう側の陰に隠れようとしたが、見張りの竜にあっさりと掴まってしまった。

「大人しくしろ、お前はアオイを戦士とするための贄となるのだ」

「は…離せ!」

飛ぼうとしても体が言うことを聞かない。どんどん竜の群れの中へと連れてこられる。長に痛めつけられるアオイの姿も…。


もしも僕がアオイへ食べさせられたら…『目』の毒にやられてしまう。そうなれば竜は駆除できる。しかしアオイは…。


「我は戦士にならない。ここを出るんだ。世界を直しに…行くために」

「人間がいる限り平和は戻らん。我だって何人もの『ミササゲ』を食らって力を付けてきた。さぁお前も…」

長は口をがばっと開けて火炎放射の体勢に入った。手足を押さえられ、ボロボロなアオイめがけて…。


ぼっ


「………!!」

アオイは一瞬目を閉じた。このまま力でわからせられて、人間を食わされることに…。

「え?」

だが、熱風は巨大なあの結晶とともに遮られていた。

「…お前!」

「はぁ…はぁ…アオイ、大丈夫…?」

掴まれたとき、空いているほうの腕で先ほど生成した結晶の剣をふりまわし、竜の腕をはらいのけてなんとか脱出した。

「いってぇ…こいつ……」

それから、剣でめいっぱいの円を地面に描き、とびきりの魔力をこめて岩盤を生やした。

「…フッ、人間のくせにやるな…食わないで得したぜ」

アオイは他の竜が驚いている隙に飛び去った。

「おい人間!我は家出することにした!太陽を見ることにした!その前にこのクソ長をぶっとばしたいんだ!なんか出せ!」

「えっ…き、急にそんなこと言われても…」

えーと剣?盾?槍?んんん…竜に似合うものといえば……。目に入ったのはその鋭い鉤爪だった。そうだ、装着する感じで…。

「お前たち!『ミササゲ』とアオイを逃がすな!」

「うおおおお!」

竜たちの羽ばたきでものすごい風が吹き荒れる。何匹も何匹も僕の体を掴もうとする。アオイも防戦一方だ。

「はぁぁぁぁっ…!」

それでも僕は地面に絵を描き続け、描き終わると瞬時にありったけの魔力を注いだ。

「ううううっ……」

「ギャハハハ!後ろがお留守だぜ!」

「はっ…!」

隙を突いた竜が飛び込んできた。

がしっ!

「…?」

そこへアオイが駆けつけ、取っ組み合っていた。

「アオイ…」

「ボサッとするな。まだなのか?」

「うっ…もうすぐ…」

今度は赤く輝く結晶が地面からせり出し、すかさずそれをアオイが手にした。

「て…手と背中にはめて!」

それは竜の体格に合う、大きな刃の付いた手甲と補助翼だった。手甲は攻撃用に、補助翼は飛行用に。あんなに描いていたんだから、きっと効果を発揮するはず…!

「しゃあっ!これが我の新しい力、『破竜甲』と『滅帝の翼』だ!!」

そ、そんな名前なんだ…。ただ僕はアオイに合いそうな武器を適当に考えただけなのに…。

「うらあっ!」

「ぐわっ!」

手甲の一撃を受けた竜が撃沈した。

「ひるむな!押さえろ!」

長の号令でこちらへ特攻する無数の竜の軍勢。それでもアオイは両腕を振り回しながら攻略していく。

「ハッ...長!この者の魔力は異質です!これを食べてしまえば…」

「なにっ」

『目』のことだ。手甲の色…以前鏡で見た僕の目と同じ色だった。

「人間!我の背に乗れ!ここはもう崩れる!」

「う、うん!」

アオイの背中にまたがると力いっぱい翼が振り下ろされ、洞窟の外へと急上昇していった。

「う、うおっっ!我、飛べたぞ!?」

僕のそばで補助翼がアオイの飛行をサポートする。これならいける!だが、下方から凄まじい勢いで長が僕たちに突撃してきた。

「この裏切り者がああああ!」

すごい熱気だ。こんなの食らったらひとたまりもない。

「うるせえええええ!」

ぐるんと体をひるがえし、ひと蹴りが決まった。火炎は不発に終わったが、長は獲物にから目を離さなかった。

「ぐおおおおおおおおお!」

「おおおおおおおっ!」

最後は竜と竜との一騎打ちだった。手甲の一撃が長へと、呪いの効果を打ち込んだようだった。

「ぐっ…」

そのままダウンし、高度が下がっていく。

「覚えてろよ……我々は諦めぬ…」

長は洞窟へと姿を消していった。


7章 旅立ち

 パチパチとたき火の燃える雪降る雪原。僕はアオイの背中で目覚めた。あれだけ結晶を繰り出したのだから、またまた動けない。

「……いいの?僕、君たちにあんま良くないパワーが出てるみたいだけど」

「『破竜甲』と『滅帝の翼』を付けても平気だったんだ。我はそんなヤワじゃないぞ」

アオイは翼を折りたたんでたき火のそばで丸くなっていた。

「ってかアレ、あの後すぐ消えちゃったじゃないか!もっと飛びたかったのに!一緒にお前の服も消えたらおもしろかったんだけどなぁ~」

「なっ…!?」

途端にご機嫌ナナメになるアオイ。どうやら、魔力を込めすぎると結晶は不安定になって短時間で分解されてしまうようだ。

「お互い…居場所をなくしちゃったね」

「世界がおかしいからあんなロクでもないやつが湧き出るんだ」

アオイもへとへとだった。長との戦いが終わっても、追っ手から逃れるために精一杯だったのだろう。

「ありがとう。僕を助けてくれて」

「…お前食ったらあの『異世界』を味わえないだけだ」

アオイの声色が優しくなっていた。

「我は世界に何が起こったのか確かめに『氷床山』へ行く。ヤツらの話によると200年前、あそこで人間が何かやらかしてから世界は冷え始めたんだ。お前は…元の世界へ帰りたいんだろ?」

「…うん……。でも、なかなか手がかりが掴めなくて…」

「なら我と旅をしろ。道中で何かわかるかもしれないだろ?」

「!…い、いいの……?」

「この世界のヤツじゃないんだろ?ほっといたらすぐくたばるぞ」

長い首をもたげ、アオイの瞳がこちらを覗いている。僕も半身を起き上がらせ、静かに返事をする。

「うん…よろしくね。アオイ」

ぐるるる…と静かに唸り、小さな火の粉をぼっと上げた。

「それにしても…アオイいい鱗してるね…。体中のトゲも空気をつんざくような…うへへ♪」

ふと、久しぶりに竜の凛々しさに惚れた自分が戻って来た。今度はなんと本物だ。

「うっせー!腹減った、肉描け。我がうまい具合に焼くから」

「あの〜出てくるのは結晶…岩だよ?そもそも僕の元気で作るから…」

「明日起きたら真っ先に飯だ!爆睡して備えろよ!」

「は、はいー!」


僕が転生したのは竜の飛び交う、常夜の冷たき異世界だった。僕とその友達は、それぞれの目標を果たすべく旅に出た。


8章 おまけ

 アオイを連れて闇夜の雪の大地を進む。手甲と補助翼はまた描いてあげるからとなだめたものの、アオイは大きな翼があるのにおとなしく地を歩くのが不満だったようだ。実をいうと、不満なのは僕もだった。偶然生成できた、スカートみたいにスースーしているこの服…「はいてない」んだもの。

「……お互い様だね」

氷床山はまだまだ遠い。


■章 ■■■■■

古き略奪と蹂躙の時代は終わった。これからは「統合」の時代だ。


我らが知恵は神も、時空をも生み出せる段階に至った。


ヒトの「願い」は知恵をもって完遂される。


脆弱な肉体を捨てよう。知恵を持とう。力を持とう。我らが女神は荒野に火を灯した。新宇宙「キューブ」はすでに産声をあげた。


無尽蔵なるキュベレーの民に、栄光あれ。


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