第一章 逃げ場所、4
龍登はずっとボクのことを気にかけてくれている。ランゲージ・エクスチェンジの相手から、大切な友達へと変わってきた。日本の文化ゃマナーなどを教えてくれたおかげで、日本での生活は思ったよりも順調だ。本当にありがたい。
「いただきます!」飢えたオオカミのようにカップ麺をガツガツ食べながら、そう思った。辛くて美味しい!
「何をすればいいのかな?この恐竜は危なくない……と思うけど、無視するわけにもいかない」麺をすすりながら、ボクは言った。
龍登は手を顎に当て、目を閉じる。そのとき、ティラノサウルスは子犬のようにゆっくりと龍登の膝へ頭を乗せ、見上げた。その大きな丸い瞳には、龍登の真剣な眼差しが映っていた。恐竜は、どこか心配そうに龍登を見つめていた。まるで声にならない思いを胸に抱き、いつかその気持ちを打ち明けそうだった。
さまざまな考えを、龍登は小さくつぶやく。解体や実験のために研究所へ売る、という案も口にしたが、自分でも納得できない。今のティラノサウルスの様子では、そんなことをすれば、誰かのあとけない愛犬を追い払うようなものだ。話しながら、龍登はゆっくりと恐竜の頭へ手を伸ばし、撫で始める。
「……ポチ……飼い主がいる?……」
思わず赤ちゃんに話しかけるように、龍登は尋ねた。恐竜は首を横に振る。……!?
言ってることが分かるのか!?その発見に、ボクは椅子からひっくり返るほど驚き、ラーメンを喉に詰まらせてしまった。胸を叩きながら咳き込む。
「おい、ちょっ……ゲホッ……!言語が分かるなら、話せるのか?」
突然、恐竜がボクのほうへ向かって飛びかかってきた。その瞬間、恐竜はティラノサウルスの姿から、形のないベタベタした何かへと変化する。それは膨らみ、ボクの頭を完全に覆った。ーー食われたのか?いや、違う。頭に……注入している!目、耳、口、鼻孔、ーーあらゆる穴から喉へ向かって、ベタベタした感触が走る。
一瞬、息が苦しくなったが、やがて呼吸できるようになった。目を開けると、ボクの前に立っている龍登が見える。たが、ボクの目の前にはヘルメットのバイザーのようなものがあったーーヘルメットを被っている?
「聞こえるか?」深く低い男性の声が、ボクの耳に響いた。
「は、はい。ど……どうやって……」
急にSF映画のような場面に放り込まれたボクは、両手でヘルメットの形をなぞった。
「お前の脳に入り込んだからだ。俺は仲間とともに、別の星から来た。俺たちは生き延びるために、他の生物と共生関係を結ぶ必要がある。だから、お前ともそうした」声の言うどおりだ。その声は耳から来たと思ったが、脳の奥に直接響いていた。
深く低い声は、まるで優れたリーダーが戦場へ突撃する直前のような迫力を帯びている。
「つまりーーお前の言葉で言えば『パラサイト』だな。」




