第一章 逃げ場所、3
心地よい場所は、人によって異なる。シャンデリアが吊られ、光沢のある家具が並ぶ住まいは、多くの人が思い浮かべる一般的なイメージだろう。しかし、龍登のマンションは、それとはまったく違う。空間は広く、家具はほとんどない。その工作室のような部屋を除けば、引っ越してきたばかりのような印象だ。壁に並んでいるのは、絵画や写真ではなく、金属くずの詰まった箱や、死骸のようなロボットやドローン。今では、見慣れたが、初めて遊びに来た時のボクは、言うまでもなく驚いた。
ガラスの破片を片付けてから、ボクと龍登は、その恐竜とともにダイニングへ集まった。ダイニングというより、ただのテーブルと椅子が二つ。龍登は水を出してくれて、ボクの向かいに腰を下ろした。永遠を見つめるような眼差しで、コーヒーを口にしながらまっすぐ前を向いていた。かつてその眼差しは希望を宿していたが、今はその希望は砕かれ、誰かに裏切られたかのような色を帯びている。その眼差しは、たとえ恐竜がマンションに入り込み、自分の尻尾を追いかけてぐるぐる回っていても変わらない。ーーまさに、今の彼はそんな状態だ。
「……サラが無事でよかった」ノロノロとポケットからスマホを取り出し、テーブルに置いた。「……インターネットで家具を売るところだった」
スマホに映ったのは、新聞の記事とその見出し、『行方不明者たちが帰った』だ。記事によるとボクだけではなく、先週にほかの三人が消えた。それと、墜落した隕石の現場に隕石がないらしい……「ちょっと、先週!?一週間が経ったというわけだ!」ボクは驚いたあまり、大声で言った。休みが……休みが……。ボクは、深呼吸して、落ち着いた。龍登の前の言葉が気になる。
「何で家具を売りたい?新しい家具を気に……」
「この恐竜に、誘拐された?」ボクを見ないで、龍登にボクの言葉を遮られた。確かに、今は家具の話なんてする余裕はない。
「されてなかったよ。気づいたら、急に現れたんだ。ボクは先週からの記憶がない。公園で目を覚ました時、もう死んでると思ったけど……まあ、生きててよかったじゃないか。台湾まぜそばも、まだ食べられるし」自分が死にかけた体験を軽く言いながら、ボクは椅子にぐったりと身を沈んだ。食事の話をしていたら、お腹が「ゴー」と鳴った。思わず腹を押さえる。そうだ、まだ何も食べていなかった。
龍登はテーブルから台所へ移動した。何分かして、ようやく戻ってくると、ボクの前に大きなカップ麺と箸を置いてくれた。「まぜそばじゃないけど、これでもいいんだ。ありがとう!」




