第二章 意思があれば道はこじ開けられる! 1
この時代に、スマホや携帯電話のような注意をそらすものが普及しているのは、初めてありがたいと感じた。犬のリードを握るボクは横断歩道を渡る。前方に広がる人混みは、全員がスマホに夢中で、唯一一人として気づかない。犬の姿に全く見えない、野球帽を目深にかぶり、大きなパーカーを着た恐竜にーー。
「おい、ポチ。そんなに引っ張らないで」
人混みを通り抜けながら、ボクは小さな声で床を嗅ぐように何かを探している恐竜に言った。
約束どおり、恐竜はボクに付いていないが、ボクの心に合わせているせいか、ボクに付いていないまま、その恐竜の姿にしか変えない。それと、どうやら恐竜の姿をすると、しゃべれないようだ。詳しいことはわからないが、犬のふりをしているほうが、人を驚かせずに済む……かもしれない。
ボクは空を見上げた。人の視界に入らないように、小さなドローンが無音で飛んでいる。龍登はマンションを出ることに反対したから、代わりに自分で作ったドローンで探すことにした。そのドローンは、さすが龍登らしく、普通よりもずっと精巧な仕組みだ。
「……もうすぐ日が暮れるよ」
龍登からもらった通話機から、龍登の小さな声が聞こえてきた。朝からずっと、ボクたちはパラサイトの仲間を探していたが、何の手がかりも見つからなかった。姿を自由に変えられる存在を、どうやって見つければいい?見た目に頼れない以上、頼れるのはポチの鼻だけだ。
ボクは鼓動が遠くなり、落ち着かない焦りが胸からあふれ出す。ポチの歩調も速くまり、前より強くリードを引いて、路地の奥へとボクを引っ張った。上空を漂うドローンのカメラ越しに、龍登の視線を感じた。
龍登には、まだポチに対する疑いがあるのだろう。けれどボクは、ポチが正直に話していると信じている。後ろに太陽が沈み、街路灯が付いた。
「やめようか。ポチ、もう帰ろう……?」
近くのゴミ箱の後ろに、何かが勢いよく飛び込んだ。




