表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/49

策士

「ミランダ、帰りましょう。街に出掛けなければよかった…。」

「まぁまぁ、反りがあわなくて離縁しました。って言えばいいのよ。」

「そうなんだけど。お父様のお友達…っていうのが……。」


両親の親しい友人みたいだし、自慢の娘がコレか…ってガッカリするかもしれない。


「元気だしなさい。…それより先に部屋へ入ってて、私は荷物を置いてくるから。」

「うん。」


・・・・


『荷物を置きに行く』っていうのは嘘。前から来た執事に少し話しかけたかったから。



「さすがラッセン家の執事長…といったところですね。」


ルーナが気が付かないのは、まっすぐに育った証拠。


「何を仰りたいのですか?」

「ランスロット・アレンがこの街を通るのを予めわかっていたから、わざわざ妊婦のルーナを見せた、違いますか?ルーナの父親は顔が広いと聞いた事がありますから。」


まさか『ルーナ』と呼び止めるほどの仲だとまでは思っていなかったようだけど。


トーマ・ラッセンは愛人ばかり気にしてるから、ルーナの本当の良さが見えてない。うちの人見知り甥っ子3兄弟がなついてしまう子だし、虐められて小屋に放置されても『農家弟子入り』の夢を持つ前向きな性格。ルックスも上出来。それが解らないうちは当主として失格ね。

けど面倒なのはこいつよ。この執事は『便利な女を手に入れた』と本気で離縁を邪魔しにくる。


ルーナを出世と家名の為に不幸にするなら、即農家弟子入りよ。


「あの契約書、トーマ様に納得頂けないようであれば、ルーナは私が連れて帰りますので。」

「そんな事は護衛ごときが口出しする事ではありませんね。」

「そうでしょうか。ルーナが気がついてないから内心ホッとしていますよね。」

「……」

「アレン様はラッセン家ではなく()()()の味方だという事をお忘れなく。では。」


とりあえず言いたい事は言えたので、ルーナの部屋にもどった。




「ミランダ、シュート君の休暇はいつになりそう?どこを案内するか決めておこうと思って。きっとあの邸では詳しく話せないし。」

「まだ来れるかどうかもわからないのに計画を立ててるの?」

「シュート君の人生が決まる瞬間かもしれないのよ。後悔しないようにしっかり考えないと!」

「それは後でもいいの。先ず問題はルーナよ。両親が親しくしてた人がいるところに行くのは極力控えた方がいい。今回がいい例じゃない。」

「…誰と親しいのか知らないのよ。」

「家に招待されたりしなかったの?」

「招待されても…邸や庭を駆け回ったり、薔薇の花びらを全部とって皆を困らせてた…そんな記憶しかないかな…。」

「迷惑なお嬢様ね。メレブレベルよ。」

「……」


言い訳できない…。


「ルーナ、子育て要員を突き進むなら、侯爵夫人としてパーティーも舞踏会もお茶会も、全て欠席を貫く事。雇い主が王族でもない限り、私はパーティーで側につけないから。」

「そうね。誰に何と言われようともそうするわ。」


いいように使われてたまるもんですか。既に結婚した日からいいように使われてるけどね…。


「予定日って私が聞いてる日より早かったりすると思う?」

「予定日だから…。妊娠したのを本人が気付いてない状態で過ごしてた期間がある場合、

約10ヶ月の計算も数週前になる可能性はあるわね。お腹の出てくる具合で何となくはわかってくるでしょうけど、ルーナのお腹が愛人と同じなら『いつでも産まれます』って感じもするわね。」


「……私と結婚した時、既に何週目だったのかしら。」

「さぁ。でも、最低な男だっていうのは変わらないわよ。」


本当に最低な男だわ。


「けど前向きに考えればいい事かもしれないわ。だって、その分早く農家に弟子入り出来るもの。」

「たしかに、子供が産まれてから1年で離縁なら、前倒しになっていい結果ね。」

「これは早く農家に弟子入りしなさいってお告げよ!!」

「そういう前向きな考え、嫌いじゃないわ。」

「ありがとう。…ねぇ、赤ちゃんは女の子か男の子、どっちなのかしら。」

「愛人の子の情報は全く…」


ミランダが『わからない』と言うように、首を横にふった。


これは重大な問題でもあるのよ。男の子だったら跡継ぎという問題はなくなるもの。怖いのは女の子だった時。息子が欲しいとか言って、とりあえず私に1人子供を産ませとけばいいや…みたいな考え方をされた時よ。

大丈夫、契約書に『指1本触れない事』って書いたしね。


「今日はずっとそのお腹なの?」

「うん…。」



そう思っていたのは私だけで、次の日も妊娠の演出…。


「…こんな事をしなくても変装すれば私だと気が付かれる事はないと思うのですが。」


前に座るマイセンさんに言うと、冷たく返事が返ってきた。


「昨日のような事があっては困りますから。」


もう外出する気なんてないわよ。


「ルーナ…お腹辛くない?」

「かなり…」


お腹が苦しい…

妊婦のふりはしていても、偽物なので馬車は全然スピードを落とさないのよね。


この苦しいのも何もかも、トーマが愛人と子を作ったりするからよ!!


それから1度も外出する事なく3日後にラッセン家の本邸に到着した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ