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契約書

 次の日のお昼すぎ、ラッセン家の執事長がわざわざ私を迎えに来た。


他の人なら『帰るつもりはない』と突っぱねる事も出来るのに、それを見越して妻の私でも逆らうなんて出来ない人が来たって事は、ここにいるっていうのは大体予想はついてたって事ね…。


「ルーナ様、お迎えに上がりました。」

「ルーナ様ではなくて、()()()のルーナよ。違いないでしょう?」

「……」


メレブ君が私の手をキュっと握って後ろに隠れた。


「ルーねえちゃん、この人だれ?」

「知り合いのおじさんよ。」

「しりあい?」

「うん。」

「…なかよくない人?」

「うん。全然仲良くないよ。」

「ルーナ、行くわよ。メレブ離れなさい。」

「ミランダねえちゃん、ルーねえちゃんとどこ行くの?」

「仕事しにいくの。」

「いやだ!ルーねえちゃんは、うちにずっといるって言ってた!!」

「メレブ君。少しの間だけお家に帰らないといけなくなったの。仕事が終わったらまた来るね。」

「いやだ!ルーねえちゃんはずっとここにいるのっ!!」

「メレブ、我が儘いわないの!」

「いやだ!」


ミランダに言われて、メレブ君はますます私にくっついて離れなくなった。


「メレブ君、またここに来るから。ね?」

「…いやだ!!」


ひき止めてくれるのは嬉しいけど、これだけは中途半端にしてはおけない問題よ。


「アルフィさん、リンダさん、また来年弟子入り希望なので、よろしくお願いします!」

「ああ、いつでも歓迎するよ。」

「ありがとうございます!」


2人の笑顔に嘘はないのはわかった。


「うわぁぁあん!ルーねえちゃん、いっちゃやだぁあ!」

「…メレブ、離せ。困ってんだろ。」


泣きながらくっついてるメレブ君をシュート君が引き剥がした。


「メレブ君、また会えるから泣かないで待っててね。」



メレブ君はまだ納得いかないようでグズグズ言っていたけど、『いつまでも切りがないから』ってミランダに馬車に押し込められた。


「どういうつもりですか?護衛がこれでは意味がありません。」


馬車が動き出して、執事長のマイセンが話しかけてくるのは私にだと思っていたら、何故か先にミランダにだった。


「そちらが提示した契約内容を全てご覧になりましたか?『ルーナ・ラッセンの護衛』の中に場所は指定されていませんでした。私は違反をしている訳ではありません。」

「それくらいの事は書かなくてもわかると思いましたが?」

「私はフリーなので、契約以外の事をするのであれば料金は上乗せで頂かなければ動きません。それは此方から提示した契約条件に記載してましたよ。ご理解いただいた上で雇ってるのだと理解しましたが、違いますか?」

「……」


ミランダ凄いわ。

侯爵家の執事長相手でも全く動じない。それどころか『契約内容も覚えていないとか…』と、正論で馬鹿にした感じ。

何もかも一枚上手よ!!それに、契約というものがどれほど力を持つものなのか実感したわ。

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