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ピアノ2

ピアノ…ミランダは練習をさせていただけで、教えてはいなかったみたいなのよね。

指使いがメチャクチャよ。こうなると、早く指を動かせないから伸び悩むのは当たり前ね。


今弾ける曲で指使いを教えて、結局それだけで時間は終わってしまった。これでよかったのかしら…。何だか中途半端で責任感じるけど、仕方ないよね。




帰りはシトロン君の代わりに迎えに来てくれたのは長男のシュート君。ものすごく不機嫌だわ…。

「迎えにきてもらわなくても大丈夫なのに…」

「は?この暗い中、1人で帰れんのかよ。」

「……」


日が落ちるのが早いだけかと思ったら、そうじゃなかった。街のように家から明かりがもれてる事もないし、まわりは似たよう畑だけ。ランプ1つ持ってたくらいじゃ、慣れない私は方向感覚がなくなる。


「ごめんなさい。無理です。」

「…さっさと帰ってこいよな。何で俺が小枝なんか迎えに来なきゃなんねんだよ。」

…小枝

「…気を付けます。」

「おい小枝。」

…小枝

「…何かな?」

「お前の正体は何だ?」

正体?

「お嬢様っていっても、ただの金持ちってレベルじゃねぇだろ。」

「どうして…?」

「ピアノとか弾けんのは家にあるって事だし、あれくらいの仕事で全身筋肉痛になるぐらい、殆んど体を動かさねぇでいいご身分。飯の食い方は綺麗だし遅い、服だってここに来んのに買った新品。言葉だって全然訛ってねぇし、本当はミランダが護衛してる貴族の女なんじゃねえの?」


「……」

ズバリ言い当てられて、違うと言えなかった。


「やっぱな。遊び半分で来やがって…ムカツクんだよ。」

「…本当にここで働きたいと思ったから来たのよ。」


私は可哀想な扱いの女ではあっても、生活に不自由してた訳じゃないから、言われても仕方ないかもしれないけど。


「…シュート君に自由はある?」

「は?何その質問。」

「自由になるって難しい事だと思わない?やりたい事だけ出来るわけじゃないし。」

「そりゃそうだろ。」

「でも、何をするか選べる瞬間を手に入れられたなら、選択肢を間違えなければ自由に近づくわ。私の自由の第一歩は『農家に弟子入り』なの。」


「…お前、バカじゃねぇの。」


「私は貴族だとしても、『家から一歩も出るな』『家から出ていけ』って言われたら、話も聞いてもらえずその通りにするしか出来ない身分よ。」


「…別にそんなのきかなきゃいいだろ。」


「それが出来ないの。貴族にも格差はあるんだよ。」


今回、私が強気で『離縁しろ』といえるのは、『妊娠の事をバラすぞ』…って脅しでもあるし、ラッセン家も私を選んだメリットはそこで終わると思うから。侯爵と縁を切れば、たぶん実家にも縁を切られる。けど、それが嫌だなんて全く思わない。私の家族はもういないしね。


「…多分2ヶ月まるまるここにはいられないと思うから、いられる間だけでも仕事を教えてくれると嬉しいわ。」


「…何でいられねぇんだよ。」


「1年だけ実家に帰らないといけない訳があるの。アルフィ師匠に詳しく訳を話して、来年も弟子入りを希望して出ていくけどね。」



「……農家になったって面白くも何ともねぇのに。ただの興味本位の無いものねだりなんだよ…」


「何か言った?」


シュート君がボソボソと何か言ったけど、よく聞こえなかった。ただランプの光で薄く見えた表情で、いい事でないのはわかった。

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