結婚
「こら!ルーナ!危ないから走っちゃ駄目よ!!」
「だいじょーぶー!」
ドンッ
「わっ!?」
「キャ!」
角を曲がった所で男の子にぶつかってしまった。
「…何をやってるんだ、お前は。」
「ごめんなさい!!」
その人はぶつかって転んだ私に手を差し出してくれた。どこでだったかは憶えてないけど、それは私が10才の時。綺麗な男の子に一目で恋におちた。
あれから10年。
5年前にお母様が他界、1年ほどでお父様は再婚した。そして悲しい事にお父様も他界してしまった。私は継母に虐められてるのである。
早く結婚でも出来ればいいんだけど。今日のパーティーも『邪魔だから出席するな』…って。20才になって出会いもない。誰かと結婚なんて無理なのかもね。
「ん?」
何だか急に邸が騒がしい。
「お嬢様!大変です!」
「何を慌ててるの?盗みでもあったの?」
「はは、盗人にはされたくないな。」
「……誰?」
突然部屋に入ってきたのは、背の高い金髪の男性。
「ルーナ、俺と結婚してくれませんか?」
「へ?」
ちょっと待って…。勝手に部屋に入ってきて、いきない結婚してって…普通無理でしょ。
「あの、貴方お名前を…」
「ああ、すまない。俺はトーマ・ラッセンだ。」
ラッセン…
「まさか、ラッセン侯爵の…」
「ああ。返事を聞かせてもらいたい。」
こんなの、断れる訳ないっ!!
「…っはい」
「よかった。俺は君と10年前にぶつかった日から、ずっと気になっていたんだ。」
「…では貴方はあの時の?」
「憶えててくれたんだね。嬉しいよ。」
「私もです。」
それから、すぐに結婚。私はルーナ・ラッセンとなったのだけれど…。
結婚してすぐに後悔した。
あまりにも結婚までの流れが早かった理由と、結婚した理由。
愛人が懐妊したのを私の子供として扱う、それだけのため。
既に私達は付き合っていて、プロポーズされた日には妊娠していた…って流れになってるらしいわ。
そんなの誰も信じてないのに、形だけね。
お腹が大きくならないのもおかしいから、それが誰にもわからないように閉じ込められてるのよね。小さな山小屋に…。侍女でもなく、女騎士のミランダと2人暮らし。黒髪でショート、するどい茶色の瞳はいつ見ても綺麗だと思う。
あれから3ヵ月
「ルーナ、元気か?」
「はい。」
忙しいのに週1回は会いに来る。ご機嫌とりもいいところ。
これなら会いにこないほうがスッキリする。
「心配してるふりなどしなくて結構です。子供が出来たらかえりますので、どうぞ本妻のもとへお帰りください。私は気分がすぐれませんので、奥で休ませていただきます。お好きな時間にお帰りください。行きましょう、ミランダ。」
「はい。」
「今日は何時間いると思う?」
「この前は3時間いましたよ。今日もそれくらいはいるんじゃないでしょうか。」
「さっさと帰ればいいのに。」
偽物の心配も何もいらない。私はずっとこの山小屋にいてもいいのよ。