学園長に呼び出される
俺はその日もまた、メトの特訓を受けていた。
「今日はこれぐらいで終わりにしましょう。さあ、帰りましょう」
メトはそういうと、服についた砂埃などを払い落した。
「ああ、ごめんメト。俺、学園長に呼ばれてるから先に帰ってて」
今日学校で担任のクラリス先生から学園長が俺に会いたがっているから放課後、学園長を訪ねるようにと言われ、さっそく学園長に会いに行ったのだが今は仕事で忙しいからと会うことができず数時間後にもう一度訪ねることになったのだ。
「もしかしてなんかやらかしてしまったんですか?学園長に呼ばれることなんて普通はないですよ」
メトが眉を寄せ俺を疑うように言ってきた。
「何もやらかしてないよ、、、たぶん。でもなんで呼び出されたか俺も知らないんだよね」
俺の記憶では何かやらかしてしまったことはない。休みの日はメトと一緒にいたし、学校内でもただ授業を受けてただけだし。たぶん大丈夫。
「まあ何もないことを祈ります。それじゃあまたあとで」
メトはあきれたような表情をしながら、手を振った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「学園長はまだお仕事をしているので、ここに座ってもう少しお待ちください」
俺が学園長を訪ねると、まだ仕事が忙しいらしくもう少し待つようにと学園長室に案内された。
どんだけ仕事あるんだよ。さっき来た時とほぼ同じことを言われたぞ。まあ学園長ともなると膨大な量の仕事があるのかなあ。
そんなことを考えていると部屋の扉が開いた。
「急に呼び出してすまないな、ライト」
俺は席を立ち頭を深々と下げた。
「いえ、こちらこそお忙しいな、、、えええええええ。なんであなたが!?」
「何だよ。会ってそうそう叫びやがって」
「なんだよってこっちがなんだよって感じですよ。ここで何しているんですか」
部屋に入ってきたのはまだ俺が幼く、ろくに異能力も使えなかった頃に俺に戦いの基礎を教えてくれた師匠だった。
「まあ落ち着け。ひとまず座ろうか」
師匠に促され俺は椅子に腰かけた。
「はい。座りました。教えてください」
学園長、いや師匠は俺の前の席に座り、しゃべり始めた。
「そうせかすな、しっかりと説明するから。お前元を離れた数年後、私のもとに異能学園の前学園長から手紙が届いたんだ。異能学園の学園長になってくれと。そんな感じで、ただ誘われたからなったってことだ。私も若いころにこの学園にお世話になったからな。そのお礼って意味でもな」
「で?」
「で?ってなんだよ。それだけだよ」
「いや、もうすこし詳しく話してくださいよ。誘われたからなったなんてことありますか?ほかにも何か理由があるんじゃないんですか?」
普通に考えて、誘われただけで学園長になるなんてことないだろ。友達に遊ぼうって言われたから遊んだみたいな、そんな軽い気持ちでなるものなのか。というか、前の学園長がどうして師匠を選んだのかも謎だ。
「ほかに理由なんてないよ。昔お世話になった学園長からのお願いだ。ただそれだけだ」
「じゃあもう一つ教えてください。どういう理由で師匠が学園長に選ばれたんですか?」
確かに師匠は世間では有名な異能士で、異能学園時代にも数々の逸話を残している。だからわからないこともない。だが、師匠には決定的な欠点がある。あほなのだ。俺が言えたことではないがあほなのだ。そんな師匠に学園長の仕事が務まるはずがない。
「お前今、俺があほなのにどうして学園長に選ばれたんだって思ってるな?」
「はい、そうです。よっぽどの理由がない限り、師匠が学園長なんてありえません」
「お前、今自分がどれだけ失礼なこと言っているかわかっているのかよ。まあ別にそんなことは気にしないがな。理由かあ、まあ色々とあったんだよ。理由なんて気にするな。ところで学園生活はどうだ?」
はぐらかされてしまった。確かにそこまで気にすることでもないからまあいいか。
「今のところは結構楽しいですよ。仲間もできましたし。一人だけですけどね」
実際、この学園に入ってからの毎日はとても心地いい。入学式でやらかしてしまった時はどうなるかと思ったけど、あれのおかげでメトと仲間になれた。メトのスパルタ特訓はできればしたくはないけど、そんなところも含めてとても充実した日々を送っている。いまの生活が心地よいと感じるのはメトのおかげだと思う。
「今、彼女のことを頭に浮かべているんだろう?俺は二人のことお似合いだと思うぞ。メト・アリラトス、あんなにもいい子とはそうそう出会えない。しっかりと捕まえろよ」
「いやメトと俺はそういう関係ではないです。そういうこと言わないでください」
ライトは頬を染めながら慌ててメトとの関係を否定した。その口調にはお似合いだといわれたことに対する照れと、メトをそういう目で見てしまったことを否定しないといけないという焦りが渦巻いていた。
「そんなに動揺するな。少しからかっただけじゃないか。それにしてもこの数週間ほどであの子がライトにここまでなつくとは思わなかったよ。二人きりで一緒に生活していたらそりゃこうなるか」
「なんで師匠はメトのことを知っているんですか」
「なんでってこれでも学園長だぞ。生徒のことぐらい多少は知っているよ。・・・おっと、もう日も落ちてきたから帰宅だ、帰宅。家で愛しの仲間が待っているぞ」
悪戯な笑みを浮かべる師匠に対してライトは反論しようとしたが恥ずかしさが勝ってしまい頬を染めながら何も言わずに部屋を後にした。
一方的に遊ばれて終わってしまった。あああ、だめだ!メトの顔が頭から離れない。
てか師匠は俺に何の用があったんだよ。まあいいか。はやく帰るとしよう。
夕日の明かりが赤く染まったライトの頬を隠すように帰路を照らした。




