第一話 『存在』
「さて…どうしたものか」
私は原初の女神レクシア、今スキンヘッドのアホ集団に囲まれている。
数分程前…
レクシアは異世界では定番の冒険者ギルドに来ていた。
「たのも〜」
そう言ってスタスタと受付けらしき所に駆け出したレクシア。
そこに行く手を塞ぐように足を前に出して転けさせようとする男がいた。
それに気付いたレクシアはジャンプなどして避けようとはせずに、当たる瞬間だけほんの少〜し力を入れて蹴った。
今更だが、彼女は原初の女神…つまり全ての事象の創造主だ。
彼女が本気を出せば、全ての世界…(ここで言う世界とはこの異世界だけではなく、世界線そのもの)を無かった事にさえ出来る。
そう考えれば、男の足首が5回ほどの大回転したのはそれ程大したことではないと言える。
「ギャァァァッッ!?」
だが、痛いものは痛いし彼にとって彼女は弱者に写ったのだろう。
もし、ここで彼が素直に謝罪をして許しを請えさえすればすれば、レクシアは彼を治療しただろう。
しかし、そんな頭脳を持っていたらわざわざこんな事をするわけが無い。
先程の悲鳴を聞いてその仲間であろうスキンヘッドに囲まれて今に至るというわけだ。
「おいおい、うちの若い奴に何してくれ…」
そう言ってリーダーの様な男がレクシアの肩に触れる瞬間、男の手首から先からまるでその空間だけ切り取られたかのように消えていた。
「へ?…ヒイイイ!?」
「あ、ごめんあんまり煩かったからつい『存在』を抑えられなかった。」
何故男の手首から先が消えたのかというと、簡単に言えばレクシアという『存在』に塗りつぶされたからだ。
普通の生き物は自身の肉体という器と魂という存在は同じかそれ以上の大きさの器が基本である。
しかし、レクシアは自身の魂に肉体の大きさが全く一致せずはみ出しているためいつもは抑えているのだが、先程はわざと…ではなく偶然(ここ大事)たまたま溢れ出してしまったと言う訳だ。
「ふざけたマネしやがって!!」
しかし、彼らにそんな事知るわけもなく、レクシアのおっちょこちょいで自身を覆うように『存在』を展開してしまっていた為、犠牲者がウナギ登りに増えていった。