プロローグ:絶望の始まり
〜ここは、原初の女神、レクシア様によって作成された世界、グランテーゼ。
この世界で最も栄えているのがレクシア様がいる神殿周囲だ。
主にレンガ造りの建物が並び獣人にドワーフ、エルフに人族など多種多様に渡っている。
そんな神殿のとある一室にて先程から「うぅー…」と唸っている一人の少女がいた。
その少女は透き通るような白い髪にとても綺麗な瞳をしていた。
何故唸っているのか、それは…
「…私って一応原初の女神だよね?敬い奉る存在だよね?じゃあ何でこんな書類仕事を毎日やってるの…?」
そんな事を譫言のようにブツブツ呟いている彼女こそが原初の女神、レクシア様なのだ。
そこへ、メイド服を着た一人の女性が大量に積まれた紙の束を持って現れた。
その光景に、レクシア様は目を点にして一つの分かりきった疑問を口にした。
「えーと、ソレハナニカナ」
その問いかけに、メイドは小さく首を傾げてレクシア様に会心の一撃に相当する言葉を紡いだ。
「…?今日のお仕事ですよ?」
「え?今日の仕事は今やってるので最後の筈…」
レクシア様はそう言って反論したが、メイドは時計を指さして絶望の始まりを告げた。
「つい先程深夜0時を回りましたので、今から一日の始まりです。だから、大至急終わらせてくださいね?」
その言葉に、レクシアは恐怖した。今までの人生でこれ程までに追い詰められた事などなかった。しかも、このメイドはすごくいい笑顔で言ってくるではないか。まるで自身を嘲笑うかのように…(被害妄想である)
その瞬間、レクシアの何かが外れた音がする。(妄想、幻聴)
「ふふふ…アハハッ…なんか、もういいや」
そう言ってレクシアは指に小さく火球を出現させ、書類を火葬し始めたではないか。
「ちょっ!?何をしておられるのですか!?」
「うるさい、知ったことか!!」
レクシアは即座に転移門を開き、逃げるように飛び込んだ。
「なッ!?」
「フハハハ、さらばだ書類担当くん」
レクシアはそう言い残して、火の手が上がる執務室から姿を消した。
余談:
「…なんの騒ぎですか?」
「め、メイド長!!実は書類仕事中にレクシア様がご乱心を…」
「?何故でしょう…たった五枚程の書類を確認して判を押すだけの仕事に、この時間帯まで掛かるような事は…」
「え?でも執務室のテーブルに山のように積み重なって…」
「…恐らくですが、別の担当の書類かと」
「あの、そんな事より早く消火を…」
「…それもそうですね」
この事実に、レクシアが気付くことはなかった。