タヌキとキツネの化け合戦
「きつねくんって人間に化け狐って言われてるけど本当なの?」
タヌキは丸いお目めで訊ねました。
「こんなもんさ」
ボンッ!。
キツネの体が白煙に包まれて、可愛らしい人間の女の子に変わる。
「ふぇーすごい。実は僕も」
おでこに葉っぱをつけたタヌキがドロンドロン。
みるみる内に、大人の女性に変身しました。
二人はそれから、どっちの能力が上か試して色々な物に変身しましたが決着がつきません。
「ハァッハァ・・・・・・たぬきくん、なんでも変身できるんだね」
息を整えるようにキツネが言う。
「君のだって本物にしかみえないよ。でも、これじゃあ・・・・・・」
「「決着がつかない」」
2人の声が合わさりました。
お互いに変身しているのでは拉致があかないので、他者に判断をゆだねることにしたのです。
正体を暴かれるのは避けたいので、人に対して変身してどれだけ騙せるかで決めることにしました。
タヌキは女性に変身して、所々はだけだ身なりになりました。
人の男を見つけるやいなや
「あっちに暴漢が助けてくださいっ・・・・・・」
「なに、本当か?その男にやられたのか」
勇んだ男はクワを持ってすっ飛んでいきました。
キツネは見目麗しい女性に変身して町を歩きました。
早速男が話しかけてきました。
「やぁやぁべっぴんさん、花つみに行きませんか?」
「私は花を摘みません。野原に大人2人分の花を持ってきた人をあいてにします」
女性は照れて紅潮し非常に色っぽい仕草をしました。
男はどこかへ急いで行ってしまいました。
タヌキとキツネが野原に先回りして隠れていると、男がよろよろ、と花を両手いっぱいに持ってくるではありませんか。
その様子を見て2匹はケタケタと笑い転げました。
ある日、動物の中である噂が立ちました。
その美しい姿、いで立ちで輝き、皆を虜にするウサギが現れた、と。
2匹はすぐに見に行きました。
綺麗な毛並みで鮮やかなピンク色の柔らかそうなフォルムでみる物の心を奪います。
「ほぉ、あの子かい」
「きつねくん。話しかけてみなよ」
「まかせな」
相手が人の場合は失敗したことのないキツネは自信に満ち溢れていました。
次々に男や女に変身しましたが、まるで相手にされません。
ウサギは興味なさそうにするばかりでした。
キツネがとぼとぼと戻ってきます。
「きつねくん、人に変身しても意味ないよ。みてごらん」
タヌキはスキップしながら向かっていきました。
「かわいいうさぎさん。僕の特技をお披露目します」
サル、ニワトリ、キツネ、ポンポンッと勢いよく変身していきました。
「どお?」
「すごいわ、なんでも変身できるのね」
気をよくしたタヌキは最後までとっておいた秘策を見せます。
透明感のある真っ白なウサギに変身したのです。
「どうだ!完璧だ!」
タヌキはとても嬉しそうな顔をしました。
「それはあなたじゃない。真実のあなたはたぬきでしょ」
その言葉はタヌキの脳天に衝撃を与え、頭がもやっとして何も考えられなくなりました。
キツネの元に戻ってもしばらく塞ぎこんでいました。
2匹はつるのむを止めて
タヌキはタヌキの里に戻り。
キツネは野生に戻っていきました。