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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
3章

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謝罪

 ミアとサヤは急いで森へと向かい、森の奥へ入る前にシュウに追いつくことができた。


「ミアさんがあなたに話したいことがあるそうです」


 シュウ本人と話す時は相変わらずあなた呼びのサヤに呼び止められ、振り向いたシュウは何やら緊張した様子のミアを見て状況を理解した。


「その様子だとニュース見たんだな」


 シュウは今日のシンラの会見を見ていなかったが、昨日の内にセツナ以外の全隊長に今日の会見の内容は伝えられていた。

 そのためシュウは二人の用件をすぐに察し、それに気づかずにミアはシュウに用件を伝えた。


「はい、だからそのことで謝りに来ました」


 緊張した表情で用件を伝えてきたミアを見てシュウは困っている様子だった。


「お前に謝られてもな。……お前は嘘つかれてた側なんだから色々勘違いするのはしかたねぇだろ」

「でも私の勘違いでシュウ隊長には迷惑かけちゃいましたし……」


 自分の予想通りミアの謝罪を受けて特に怒った様子を見せなかったシュウを見て、サヤはやはり今回の件で謝罪は必要無かったのではと思った。

 しかしミアはそう考えてはいないようでシュウへの謝罪を続けた。


「『フェンリル』に入る前に戦いを挑んだこととこれまでの失礼な態度をお詫びします。すみませんでした」


 ミアにかしこまった口調で謝罪され、シュウはつまらなそうな口調でミアに話しかけた。


「別に俺は三年前の件でお前が俺を恨んでたことは特に何とも思っねぇよ。さっきも言ったけどお前の立場だとしょうがねぇことだしな。俺はどっちかって言うとお前がやる気をなくさないか心配してる」

「やる気ですか?」


 シュウの発言の意味が分からず困惑しているミアを相手にシュウは話を続けた。


「お前、俺がシンラのじいさん助けたって知っても訓練がんばれるか?勘違いでも俺恨んでた方が訓練やる気は出てただろ?だから今回の件でお前がやる気なくさないかを俺は心配してる」


 シュウのこの発言を聞き、ミアはすぐに不機嫌そうな表情で反論した。


「馬鹿なこと言わないで!私は小さい頃から隊長を目指してきたわ!だからあんたが悪くなかったからって、それでやる気が出なくなるなんてことは、……ないです」


 シュウの心配の内容を聞いたミアは思わず激高してしまい口調が荒くなってしまった。

 シュウの含みのある笑みを見てそのことに気づいたミアは何とか最後だけは口調を穏やかにしてシュウに反論した。

 そんなミアの発言を聞き、長々と話すようなことでもなかったのでシュウは話を終わらせることにした。


「あっそ、それならそれでいい。ところでどうして地味子まで一緒にいるんだ?」


 二人が個人的に仲がいいことはシュウも知っていたが、この様な場について来る程サヤがミアと仲がいいとは思っていなかった。

 そのため最初にシュウに用件を伝えた後は黙ってシュウたちの話を聞いていたサヤの存在がシュウには不思議だった。

 そんなシュウの疑問を受けてサヤは自分がミアと一緒にいた理由を説明した。


「さっきまでシンラ隊長の部屋で『妖精女王』と隊長たちの戦いの映像を見ていて、そのまま外周部に出かけるつもりでした。ミアさんはその前にニュースを見たんですけど、ここまで重要な発表があるとは思ってなかったみたいです。その後流れで一緒にここに来ることになりました」

「流れでか、そりゃしょうがねぇな。まあ、いいや。とりあえずそういうわけで俺はお前の今までの態度特に何とも思ってねぇ。あ、でもじいさんにはまじで謝っとけよ。俺にお前を預けること相当悩んでたみたいだし」

「はい。これから家に帰っておじい様には謝るつもりです」

「そうか。……はっきり言っとくけどお前が謝ってもお前の気が楽になるだけだから、お前がまじでじいさんに悪いと思ってるなら一日でも早く隊長になれ。うだうだ謝られるよりそっちの方がじいさんも嬉しいだろうしな」

「はい。分かりました。これからもよろしくお願いします」


 そう言ってこの場を離れようとしたミアだったが、その前にシュウがミアに話しかけた。


「考えてみれば俺お前に相当酷い事言われたよな?だから一つだけ罰与えていいか?」

「罰ですか?」


 先程までと全く違うことを言い出したシュウを前にミアだけでなくサヤも困惑する中、シュウは含みのある笑みを浮かべながらミアに罰の内容を伝えた。


「そのうぜぇしゃべり方止めろ。今まで通りでいい」

「えっ、……でも」


 これまでシュウに抱いていた恨みが見当違いなものであった以上、今まで通りの態度でシュウに接するのはミアとしては抵抗があった。

 そんなミアを見てシュウは再び含みのある笑みを浮かべた。


「ああ、もちろんこれは命令じゃねぇ。俺はお前の今までの態度に超傷ついたし配属前に隊長の部屋に乗り込むなんて犯罪ギリギリな行為だけど、でもお前は何にも悪くねぇよ。変なこと言って悪かったな。もう行っていいぞ」


 そう言って森の奥へと向かおうとしたシュウにミアはこれまでとは質の違う怒りを覚えながら話しかけた。


「分かったわよ。今まで通り話せばいいんでしょ?」

「おいおい、俺がお前の弱みにつけこんだみたいな顔するの止めろよ。俺が悪者みたいじゃねぇか」

「まあ、確かにこっちの方が私も楽だし、これでいいわ。改めてこれからよろしくね」

「ああ、精々気が抜けないように気をつけな」


 そう言ってシュウは今度こそ森の奥へと消えた。


 シュウと別れた後、予定通り外周部へと向かったミアとサヤは、その道中先程のシュウとのやり取りについて話していた。


「予想はしてましたけど、シュウ隊長全然怒ってなくてよかったですね」

「あそこまで何とも思われてないとそれはそれでムカつきますけどね」


 シュウがこれまでのミアの言動を大して問題視していないのはミアがシュウにとって脅威ではないからだとミアは考えていた。

 シュウに近い強さを持つ『妖精女王』とは関わり合いになることすら避けるシュウがミアの言動はまるで気にしていなかったからだ。


 もちろんこれから先強くなったとしてもシュウに危害を加える気はミアには無い。

 しかし今もミアがシュウを目標にしていることに変わりはなく、そんな相手が自分の強さを意にも介していないというのはミアの自尊心を傷つけた。


 これはシュウ以外誰も知らないことだったが、外周部にはシュウが鍛えれば二ヶ月以内に隊長になれる能力者がシュウが把握しているだけで三人いた。

 彼らは全員が問題無く暮らしているようだったのでシュウに彼らを討伐局に入れる気は無く、彼らの存在もありシュウにとって鍛えれば隊長になれる人材というのはそこまで珍しいものでもなかった。


 そのためシュウはミアの勝気な性格こそ好ましいと思っていたが、ミアの将来的に隊長になれる才能の持ち主という点はそれ程重視していなかった。

 もちろんミアはシュウのこうした事情までは知らなかったが、シュウが自分のことを見込みのある部下の一人としか見ていないことには気づいていた。


 大抵の者はここで満足するのだろうが、ミアの向上心はシュウ、そしてシンラが思っているよりずっと大きかった。

 とりあえず討伐局の中で一番強い女を目指そうと考えていたミアにとって今の女の隊長全員をまとめて相手にできる『妖精女王』の存在はかなり大きいものだった。


『妖精女王』を探せる能力も人脈も無いためミアは『妖精女王』に会うことは諦めていたが、今回サヤのおかげで『妖精女王』に会えるかも知れないことになった。

 何とか『妖精女王』に会い話だけでも聞ければいいのだがとミアは『妖精女王』の危険性も知らずにのんきなことを考えていた。


 一方ミアとサヤと別れた後、一通りの訓練を終えたシュウは体を休めながら今後の方針について考えていた。

『魔装』の更に先の技の開発については出力を上げる方向でしばらくは進めるつもりで他の技の開発も順調だったが、問題はミア、サヤ、ギオルの訓練だった。


 シュウが訓練時の強さを徐々に上げていくという従来の訓練だけでもこの三人なら強くなれるとは思うが、戦闘技術はともかく能力を鍛えるとなるとそろそろ個別の訓練内容を考えないといけない。

 昨日レイナに頼まれた他の隊の隊員たちの訓練についてはそこまでする気はシュウにも無かったが、シュウはこの三人にはかなり期待していた。


『フェンリル』に入隊したら間違いなくその日の内にくびになる程才能の無いリンドウが隊長を長年勤めあげているのだから、自分がその気になれば単なる隊長ならいくらでも育てられるとシュウは考えていた。


 しかし訓練を受ける側にやる気を出させるのはシュウにも限界があり、そういった意味では才能・やる気共に十分のミア、サヤ、ギオルへのシュウの評価はかなり高かった。

 三年前の真実を知りミアのやる気が損なわれないかシュウはかなり本気で心配していたのだが、先程の様子なら大丈夫だろう。


 やる気と才能に満ち溢れて実力が互角の同期がおり、何より自分という優れた師匠がいるのだから隊長の中でも上位から中位に位置する実力者にあの三人を育て上げてみせる。

 そう考えていたシュウはこの三人だけでなく他の隊の隊員たちの訓練にも役立つあるアイデアを思いついた。


 その後シュウは一本の木を標的に定め、緩やかな速度で歩き出したかと思うと急に速度を上げた。

 それと同時にシュウは袖口に忍ばせていた短刀を投げ、木に突き刺さった短刀はシュウの能力に耐え切れずに崩壊した。

 短刀が刺さった場所が腐食した様になっている木をしばらく眺めた後、シュウはしばらく考え込んでから口を開いた。


「何とかなりそうだけどクオンをどうするかな」


 そうぼやきながらシュウはここ最近行っている野暮用のためにクオンに入れてもらった透明化能力を発動して外周部へと向かった。

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