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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
3章

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発表

 今日の討伐局の隊員たちの話題は朝から『妖精女王』一色で、隊員たちの反応は様々だった。

 現役の女の隊長より『妖精女王』の方が強いことに驚く者、その気になれば『妖精女王』を連れて来ることができるシュウを評価する者、幻術使いの『妖精女王』が能力でSランクの邪竜を倒したと聞き希望を持ち始めた透明化能力や幻術使いなど様々な者がいた。


 今回の『妖精女王』の参戦は機構の関係者の間では概ね好意的に受け入れられており、『フェンリル』の訓練後昼食を終えたミアとサヤも『妖精女王』について話していた。


「まだ小さいのに一人で女性の隊長全員に勝てるなんてすごいですね」

「はい。シュウ隊長とテュールさんと同じぐらい外周部で影響力がある人だと聞いていたので想像はしてましたけど、あそこまでとは思ってませんでした」


 興奮気味に先程見たばかりの『妖精女王』の戦い振りについて話すミアにサヤも同意した。

 繭の中での『妖精女王』の戦闘の様子はさすがに撮影されていなかったが、その前に行われた女の隊長四人と『妖精女王』の模擬戦の様子は機構に所属している者なら誰でも見ることができた。


 といってもあまりの人気振りに正午を過ぎてもまだ希望者の四分の一もその映像を見れていなかったが、シンラがその映像を持っていたためミアとサヤは先程ミアの部屋でそれを見ることができた。

 その後二人はミアの部屋で隊長たちと『妖精女王』の戦いを見た感想を思い思いに語っていた。


「すごかったですね。最後の光線もすごかったですけど、まず殴り合いがすごく強かったですし。『魔装』まで使ってましたもんね」

「はい。シュウ隊長が基本技術をちゃんと訓練しろって言っていた意味がよく分かりました」

「あの年であの強さだと、数年後に討伐局に入ったらすぐに隊長でしょうね」


 現時点で隊長四人を相手にして勝てる程強いのだから、もし数年後に『妖精女王』が討伐局に入ったら即戦力だろう。

 そう考えてミアは怖さと頼もしさが入り混じった気持ちを『妖精女王』に抱いていたが、サヤは『妖精女王』の強さにこそ驚いたものの『妖精女王』自身にはそれ程興味を持っていなかった。


 将来隊長になりゆくゆくはシュウより強くなることを目標としているミアと違い、サヤはそこまで具体的な目標を持っているわけではなかったからだ。

 サヤは現在現実的な目標としてミアやギオルと同じぐらい強くなることを目指しており、『妖精女王』がどれだけ強くても自分には関係無いと考えていた。

 しかしミアの発言を聞きサヤは急に表情を変えた。


「『妖精女王』が討伐局に入るとしたら多分『フェンリル』に入ることになるでしょうし、そしたら『フェンリル』がすごいことになりますね」

「……そうなったらシュウ隊長が『妖精女王』の面倒を見ることになるんでしょうか?」

「まあ、そうなるんじゃないですか?あれだけ強いとガドナーさんでも面倒見切れないでしょうし」


 ミアにこう言われてサヤは考え込み、そんなサヤを見てミアは困惑した。


「どうしたんですか?」

「『妖精女王』に会いたくなりました」

「いやいや、無理ですって!警察や治安維持局でも捕まえられないんですから!」


『妖精女王』が強いという話をしていただけのはずなのに唐突にとんでもないことを言い出したサヤを前にミアは慌てた。

 とにかくサヤを止めなくてはと考えたミアは『妖精女王』は見つけることすら難しいとサヤに伝えたのだがサヤは動じなかった。


「能力で姿を消しているだけなら私の能力で見つけられます。聞いた限りでは見境無く暴れるという感じの人ではなさそうなので、こっちから攻撃しなければ大丈夫なんじゃないでしょうか」

「……会ってどうするんですか?」

「確かめたいことがあります」


 その後ミアはサヤの発言の続きを待ったが、サヤが確かめたいことの内容を言いそうになかったのでそのまま話を進めた。


「見つけるって言いますけど外周部だけでもかなり広いですよ?まさか全部歩いて回るつもりですか?」


 ただでさえ並の隊員以上の訓練を行い、それに加えて『ネスト』でのバイトまでしているサヤがその様な無謀なことをするつもりなら何としても止めよう。

 そう考えていたミアだったが、サヤもそこまで馬鹿ではなかった。


「最近は外周部も開発が進んで人が寄り付かない所はかなり減っています。『妖精女王』は人が多い所には近づかないと思うので、ちゃんと計画を立てて探せば何日かで『妖精女王』を見つけられると思います」


 最近テュールから聞いた話を基に立てた計画を話すサヤを見て、それ程時間がかからないなら会うだけなら問題無いのではとミアも考え始めた。

 自分より若いのにあれだけの強さを持つ子に会えるならミアとしても一度会っておきたかったからだ。

 映像の最後で『妖精女王』が放った光線を見た時、ミアはそのあまりの強大さに心を奪われた。

 そのためミアはサヤの計画に乗ることにしたが、無制限というわけにはいかなかった。


「私にも『妖精女王』探しを手伝わせて下さい」

「私はバイトがある日は夜も『妖精女王』を探すつもりです。シンラ隊長が心配するんじゃないですか?」

「毎日は無理でも夜に抜け出すぐらいなら何とかなると思います」


 シンラもキキョウも比較的早く就寝する上いざとなったらミアは空を飛べるので、夜中にばれずに部屋を抜け出すのは簡単だった。

 そのためミアは自分が今回の『妖精女王』探索に参加できるかどうかは心配しておらず、すぐにサヤにある提案をした。


「一週間以内に『妖精女王』が見つからなかったら諦める。この条件でやりませんか?見つかるまでずっとやるのは現実的じゃないですし、それに私たちがずっと外周部に入り浸ってると治安維持局の人たちの目に留まってシュウ隊長まで話が行くかも知れません。そうなったらシュウ隊長は嫌がると思うので」

「嫌がる?どうしてですか?」


 今回の件にシュウは関係無いと思っていたためサヤはミアの発言を聞き不思議に思った。

 そんなサヤにミアはリンシャから聞いた話を伝えた。


「シュウ隊長はできるだけ『妖精女王』と関わり合いになりたくないみたいで、私たちが『妖精女王』を探してるって知ったら止められるかも知れません。だからばれずに探すとなると一週間が限界だと思います。どうですか?」

「……分かりました。じゃあ、早速明日の訓練が終わってからどうですか?」


 シュウの不興を買いかねないと聞きサヤは今回の『妖精女王』探索を一瞬迷ったが、結局実行に移すことにした。

 自分の目的を果たすだけなら『妖精女王』と会えばいいだけで無理に会話までする必要は無く、これぐらいならシュウに迷惑をかけることなく終えることができるだろうと考えたからだ。

 こうして大まかながら『妖精女王』探索についての話し合いは終わり、その後二人はいつも通り勉強会を始めた。

 

 七月九日(木)

 昨日サヤと話した通り、ミアは訓練を終えて『妖精女王』探索のために外周部に向かうつもりだった。

 しかし昨日の夕方シンラから明日の訓練後にニュースを見て欲しいと言われていたので、その前にニュースをチェックしておこうと考えた。


 どうせテレビが備え付けてある機構本部一階は通ることになるので大した手間ではない。

 昨日からどのニュースも邪竜との戦いに子供である『妖精女王』を参加させた機構に対する批判一色だったので、正直言うとミアはニュースを見たくなかったのだがシンラに言われた以上見ないわけにもいかない。


 自分で誘っておいて何故かニュースを見ることに乗り気でないミアを不思議そうに見ていたサヤと共にミアが機構の一階に着くと、事務局の利用客や事務局局員が一様に驚いていて全員の視線がテレビに向いていた。


 それ程衝撃的なニュースをやっているのかと思いながらミアはテレビに意識を向け、先程から繰り返し報道されているニュースの内容を聞いて驚いた。

 そんなミアの横でサヤがテレビに視線を向けると、『妖精女王』を邪竜討伐に参加させたことに関する報道機関や市民からの批判に対して機構が急遽開いた会見で話すシンラの姿が映っていた。


 今回の会見で記者たちの質問に答える形でシンラが発言した内容をまとめると以下の様になる。

 ・機構が邪竜の討伐に部外者の手を借りるのはこれが二度目で、最初の協力者、シュウの介入が無かったら三年前の戦いでシンラとレイナも死んでいた可能性が高く街まで被害が出ていた。


 ・今回の邪竜討伐には女性しか参加できず討伐局が投入できる戦力が限られており、今回シュウが『妖精女王』を連れて来なかったら邪竜の討伐はまず不可能だった。(仮に男性しか参加できなかったとしても同様の問題は起こっていたとシンラは会見で述べた)

 ・邪竜を送り込んでいる『創造主』の存在が隊長により確認されたため今後も意図的に討伐局の戦力を制限する形で邪竜が送り込まれる可能性が高く、今後も前例が無い方法を取らなくてはアイギスを守り切れないかも知れない。


 これらの事実を記者たちに伝えた後、シンラはシュウたちが初めて『創造主』に会った時の車載カメラの映像を公表し、『創造主』が伝説上の存在ではないことを市民に知らせた。

 その後様々な批判はあるだろうが今後も機構はアイギスの防衛を第一に考えて行動すると発言してシンラは会見を終えた。

 テレビで流れていたシンラの会見の一部始終を見終え、放心状態のミアにサヤが話しかけてきた。


「『妖精女王』を連れて来るだけじゃなくて隊長四人が手も足も出なかった邪竜を一人で倒すなんてさすがシュウ隊長ですね」

「……ええ、そうですね」


 サヤは機構本部の資料室にあるシュウに関する資料には一通り目を通していたので、シュウはシンラたちと共に三年前の邪竜を倒したのだと思っていた。

 しかし実際はシンラとレイナを含む当時の隊長四人が勝てなかった邪竜をその場に駆け付けたシュウが倒したと聞き、どこか誇らし気にしていた。


 しかしそんなサヤに話しかけられたミアは簡単な返事をするのがやっとの状態だった。

 今さらそんなことを言われても困るというのがニュースを見たミアの正直な気持ちだったからだ。

 シンラが隊を率いることができなくなる程の怪我を負ったあの事件以来、ミアはずっとシュウを恨んできた。


 それが原因で『フェンリル』に入る前にシュウに決闘まで挑んでいるのだ。

 シンラに何度もシュウを恨むのは筋違いだと言われていたので自業自得だと理屈では分かっていたが、長年信じていた前提を覆されてミアはどうしていいか分からなかった。

 そんなミアにサヤが声をかけた。


「シンラ隊長のニュースを聞いてから様子が変ですけど、シンラ隊長がシュウ隊長に助けられてたのがそんなに嫌だったんですか?」


 サヤもシュウ単独で成し遂げたと思っていた功績が実は別の隊長の手も借りて行われていたものだと分かったら複雑な気持ちになる。

 そう考えてサヤはサヤなりにミアの心情を推測したのだが、サヤの推測は当たらずとも遠からずといったところだった。


 サヤに話しかけられたミアは誰かに話を聞いてもらって気持ちの整理をつけたかったこともあり、サヤに自分が今まで三年前の件についての勘違いでシュウを恨んでいたことを伝えた。

 ミアから見て最近のサヤはシュウに敬意を持っているように見えた。


 そのためミアがシュウに的外れな恨みを持っていたと知り、サヤが自分のことを嫌うのではとミアは心配になった。

 しかしサヤは特に気分を害した様子も見せずにミアに気にする必要は無いと伝えた。


「ミアさんは嘘をつかれていたんですから別に気にする必要は無いと思います。ミアさんがシュウ隊長に戦いを挑んだこともシュウ隊長はおもしろかったぐらいにしか思ってないと思いますし」

「そうですね。実際私が『フェンリル』に入ってからシュウ隊長だけじゃなくてその時いたリンシャさんも何も言ってきませんし、このことでシュウ隊長が私に何か言ってくることはないと思います」


 それなら何も問題無いのではないかとサヤは思ったが、自分の発言を聞いてもまだ浮かない顔をしているミアを見て解決策を提案した。


「ミアさんが何を気にしてるのかよく分かりませんけど、悪いと思ってるなら謝ればいいと思います。今森に向かってるところみたいですから急げば追い着けると思います」


 そう言ってサヤはいつもシュウが訓練に使っている機構本部裏の森の方に視線を向けた。

 サヤの能力による人の探知は精度・距離共にコウガのそれと比べると拙いものだ。

 しかし毎日会っていることもあり、余程距離が離れていない限りサヤはシュウの居場所だけはすぐに特定できた。

 迷っていたところにサヤの手でいきなり状況を整えられてミアは焦ったが、こういったことは後回しにした方がやりづらくなると考えてサヤと共に森へと向かった。

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