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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
3章

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キャッチコピー

「そろそろ俺もキャッチコピーの一つぐらい欲しいと思ってるんだ」

「は?」


 できるだけ力になろうと考えていたところに想像以上に下らない相談をされ、レイナは一瞬あぜんとした。

 しかし他の隊の隊員の育成という仕事を頼んだのだからここは我慢しなくてはならないと自分に言い聞かせてレイナはシュウとの話を続けた。


「キャッチコピーって具体的にどういうこと?」

「ほらお前って歴代の隊長の中で一人だけAランクの邪竜倒さないで隊長になってるじゃねぇか?」

「それがどうしたっていうの?」


 この手の事はこれまで散々言われてきたのでレイナはシュウの発言を聞いても特に怒ったりはせずシュウの話の続きを待った。


「それにクオンは初めて隊長と研究局の局長を同時にした隊長だろ?俺もそういう隊長の中で唯一何々みたいなキャッチコピーが欲しいと思ってるんだけど、ぴんと来るのが思いつかなくて。何かいいのねぇか?」

「最強でいいじゃない」


 シュウは自分が討伐局で一番強いと常々言っており、少なくとも今の隊長の中でこのシュウの発言に異論のある者はいないだろう。

 そう考えたレイナはシュウの馬鹿げた相談への答えを口にしたが、それと同時にシュウがこれ程分かりやすい自分の特徴をキャッチコピーにしなかったことを不思議に思った。

 そんなレイナの疑問はシュウによってすぐに解消された。


「馬鹿言え。最強なんてどんなにレベル低くても必ず一人はいるんだぞ。これキャッチコピーにするって俺どんだけ特徴無いんだよ?」


 最強の座にいる者以外が言ってもむなしいだけの発言を当然の様にしたシュウを見て、納得や羨望などが入り混じった感想をレイナは抱いた。

 しかしこうした感情は表情に出さずにレイナはシュウとの話を進めた。


「外周部出身はアヤネたちがいるし、『魔装』もコウガが使える。……言われてみればあんただけの特徴って特に無いわね」

「ああ、俺って能力に尖ったところが無い地味な優等生だからな」

「……『魔装』より強い技でも作るしかないんじゃない?」


 シュウの発言に色々突っ込みたいところはあったが、レイナはそれらを無視して話を進めた。

 一刻も早くこの不毛なやり取りを終わらせたかったからで、レイナの発言も多少内容が雑になっていた。

『魔装』より強い技などそう気軽に作れるわけがない。

 そう考えながらのレイナの発言にシュウは真顔で現状を説明した。


「そりゃもちろん『魔装』の先については色々考えてるけど、これいつ完成するか分からねぇからな。目立つためだけに半端な新技作るのもそれはそれで何か違う気がするし、うーん、どうすっかな」


 当たり前の様に『魔装』の先などと口にするシュウを見てレイナは驚いたが、そんなレイナに気づかずにシュウはキャッチコピーについての悩みを口にし続けていた。


「新しく隊長育てまくるか?いやでも隊長何人も育てたって何か引退間際のおっさんぽいな。……やっぱ強くなる方向でやっていくしかねぇか」


 新しく隊長を育成するという本来なら討伐局全体で行うような事業を自分の特徴づけなどという理由で実行しようとするシュウを見てレイナは呆れ、それと同時に少なからず嫉妬した。

 しかしそれをシュウにぶつけてもしかたがないので、レイナはシュウの発言を聞いて思い出したことについて質問した。


「サヤさんだったかしら?あんたが引き取った血を操る能力持ってる子ってその後どうなの?ミアさんと一緒にがんばってるって聞いてるけど。もしかしてその子も隊長クラスになったりする?」


 戸籍を持たない外周部の人間を討伐局に入れること自体はそのための法律もあるので、サヤの討伐局入り自体は何の問題も無かった。

 そのためレイナはサヤのことは最初それ程気にしていなかったのだが、シュウがミアと共にサヤにも個人的に訓練をつけていると聞き興味を持った。


 シュウは以前『ナイツ』に所属する天候操作の能力を持つ男、テトから訓練をつけて欲しいと頼まれたのは断っており、それをレイナは知っていたからだ。

 テトは一度隊長就任試験を受けたこともある実力者で、そのテトの頼みを断ったシュウがわざわざ訓練をつけているということはサヤは相当見込みがあるのではレイナは考えた。

 しかしこうしたレイナの考えを聞いたシュウの答えはレイナの予想とは微妙に違っていた。


「確かにあいつはその内並の隊長よりは強くなると思うけど、別にそれが理由であいつに訓練つけてるわけじゃねぇぞ。クオンとかリク、ヴェーダが隊長辞めたくなった時の保険だ」


 そう言ってシュウは三人に隊長を辞めたくなったらいつでも言えと伝えたことをレイナに伝え、それを聞いたレイナはサヤに同情した。


「それはさすがにサヤさんに失礼でしょ」


『フェンリル』全体で受けてもきついシュウの訓練を一人で受けるとなると、そのきつさは並大抵のものではないはずだ。

 それをサヤと全く関係無い事情で受けさせるのはサヤが気の毒だとレイナは考えたのだが、これは杞憂だった。


「大丈夫だ。地味子はあっちから俺に訓練つけろって言いに来たからな」

「自分からあんたの訓練を?確かあんたサヤさんの母親殺してるのよね?」

「ああ、だから地味子は自分の母親殺したんだから訓練つけろみたいなこと言ってきた。やる気もあるみたいだしこのままいけば一年もしない内にクオンやリンドウのおっさんよりは強くなるだろ」


 今日の話をする前からシュウが隊長クラスの人材を育てていたと聞きレイナは驚いたが、それと同時に不安も覚えた。


「サヤさんが強くなったとして大丈夫なの?強くなった途端あんたに襲い掛かるかも知れないわよ?」

「そうなったら俺があいつ殺して終わりだろ。何か問題があるか?」


 一切迷うこと無くサヤが襲ってきたらサヤを殺すと明言したシュウを前にレイナは何と返事をすればいいか分からず、そんなレイナにシュウは安心するように伝えた。


「安心しろ。聞いてるかも知れねぇけどあいつ『メリクリウス』の連中に記憶消されてるから、母親殺した件で俺恨んでるってことも無さそうだ。そもそもまじで俺のこと嫌ってたら俺の真似して鎌使ったりしないだろ。孫娘以外の連中ともうまく、」


 やっているみたいだから安心しろと言いかけたところでシュウは突然黙り込んだ。

 サヤはシュウとミア以外だとギオルとよく訓練を行っているらしいが、サヤは『フェンリル』の他の隊員たちより強いギオルの訓練相手には向いていない。


 そのためギオルの方からサヤに声をかける理由も無いのでサヤの方からギオルに声をかけたのだろうが、コウガ並に社交性が欠如しているサヤがわざわざそんなことをするだろうか。

 ここまで考えてシュウはサヤの母親、チャルチィの能力を思い出し、ギオルとサヤが兄妹である可能性に思い至った。


 チャルチィとギオルの能力、そして前例の無い二人の能力者による合体技の使用を考えるとあり得ない話ではないと考えたのだ。

 しかしすぐにシュウは自分の考えを笑って否定した。


 チャルチィの境遇を考えるとサヤの他にチャルチィの子供がいて『メリクリウス』とは関係無い場所に逃がされていても不思議ではなかったが、生き別れの兄妹が偶然同じ職場で出会うなど漫画やアニメではないのだからあり得ないだろう。


 また仮にシュウの予想が当たっていたとしてもそうだとしたらサヤは能力でその事実に気づいているはずで、そう考えるとシュウがとやかく言うことではなかった。

 ギオルの両親は共に健在でサヤとギオルに血縁関係は無く、またチャルチィは子供をサヤしか産んでいない。


 そのためシュウの考えはシュウ自身も考えている通り完全に妄想で、サヤがギオルに訓練の相手を頼んだのも特定の相手とばかり訓練するのはよくないというシュウの助言に従った結果だった。

 我ながら馬鹿なことを考えてしまったと心の中で苦笑している自分を見てレイナが不思議そうにしているのに気づき、シュウは慌てて口を開いた。


「わりぃ、わりぃ。お前の言ってた隊員何人かでの連携で一つ思い出したことがあってな」


 そう言ってシュウは自分の妄想を誤魔化す意味も込めてレイナに『ハングリー氷槍スカーレット』について伝え、シュウの話を聞いたレイナはしばらく考え込んでいた。


「訓練中とはいえあんたにダメージを……。それ他の隊員にもできるかしら?」

「さあ?俺の技じゃねぇからそれについては何とも言えねぇけど、その時の映像自体はクオンに渡してるから詳しい説明聞きたければクオンのとこ行ってくれ」

「そうね。他の隊員にも使えないと意味無いけど、でも再現できたら便利そうね」


『貪る氷槍』の話を聞き興味深そうにしていたレイナにシュウは今日の話の自分なりの感想を伝えた。


「お前には悪いけど見込みもやる気も無い大勢の雑魚ちまちま育てるよりそこそこ強い奴何十人か育てた方がまだましだと俺は思ってる。だから隊を強化するっていうのは無駄とまでは言わねぇけどコスパが悪いと思うぜ?」


 レイナを試す様な表情でシュウがこう言った後、少し考え込んでからレイナは口を開いた。


「あんたの言う通りほとんどの隊員は邪竜をアイギスに行かせないためのおとりよ。でも私は彼らを使い捨てにする気は無いから、彼らが死なないようにしたいと思ってる。隊の強化って聞いてあんたは攻撃ばっかり考えてるみたいだけど、私としては防御とか回避も重視するつもりよ」

「ふーん。……分かってると思うけどめちゃくちゃめんどくせぇぞ?」


 少数の隊員を鍛えるのと比べて隊そのものの力の底上げというのは効果が見えにくく、仮に結果が出るとしてもそれはかなり先のことになるだろう。

 少し考えただけでシュウにも分かるのだからレイナにこのことが分かっていないはずはなく、シュウの指摘を受けてすぐにレイナは迷うことなく自分の考えをシュウに伝えた。


「何十人かの主力の育成と隊全体の強化、どっちも重要で私は他の能力者の指導なんてできないんだから隊の強化の方に力を入れるしかないでしょ。あんたでさえ仕事するって言うんだからなおさらよ」

「アイギス一の働き者捕まえてひでぇこと言うな」


 自分の指摘を受けても全く動じなかったレイナを見て、これ以上は言うだけ野暮だとシュウは判断した。

 そんなシュウにレイナはある指摘をした。


「後あんた一つ勘違いしてるみたいだから訂正しておくわ。コストパフォーマンスは確かに大事だけど、コストパフォーマンスを考える時はコストだけじゃなくてパフォーマンスの方も考えないと駄目よ。特に今回は大勢の隊員の命が懸かってるんだからどれだけ時間がかかってもコストにすらならないわ」

「……なるほど、そりゃそうだな。ありがとよ。一つ賢くなった。どっかで使わせてもらうぜ」


 無謀な計画を立てているレイナを挑発したつもりが正面から正論をぶつけられ、シュウはこう言って部屋を立ち去るのがやっとだった。

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