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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
3章

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クリア報酬

 そして数分後シュウたちが邪竜を倒し終えるとシュウたちの前に『創造主』が姿を現した。

『創造主』は満足気な表情で隊長たちに視線を送った。


「見事だったぞ。あんな隠し玉を持っているとは思っていなかった。そこの女とあの少女の会話を聞いていたが、あの子は遺伝子操作とやらで作った生物兵器か?」


 そう言って『創造主』がクオンに視線を向けると、まさか『創造主』が自分に興味を持つと思っていなかったためクオンは返答に困った。

 そんなクオンの前に紫色に光る蝶の群れが現れ、やがて蝶の群れは『妖精女王』へと姿を変えた。


「僕のこと物みたいに言うの止めて。僕はちゃんと母親から生まれた。そもそも遺伝子操作とかクローンはアイギスでは禁止されてる」

「何だ、そうなのか。本当にこの街はのんびりとしているな」


 強ければ子供でも戦いに駆り出される街、強い能力者のクローン製造や能力者同士での結婚の奨励など戦力確保のためなら手段を選ばない街、能力者が非能力者を完全に管理している街など様々な街を見てきた『創造主』から見て、今のアイギスは相当牧歌的だった。


 そのため『創造主』は『妖精女王』とクオンの繭の中での会話を聞き、アイギスも戦力確保のためにこの程度のことは行っているのだなと安心した。

 しかし当の『妖精女王』にそれを否定され、『創造主』は少なからず失望してしまった。


 自分の送り込んでいる邪竜との戦いにおいて人間たちには最善を尽くして欲しいと『創造主』は考えていたからだ。

 そんな『創造主』の失望など知る由も無い『妖精女王』は、『創造主』にあることを確認した。


「そもそもあなたは『創造主』っていうぐらいだから全知全能じゃないの?それなら僕がどういう存在かなんて一目で分かるはず」


 この質問の直後『創造主』の一挙手一投足も見逃すまいと『創造主』をにらみつける『妖精女王』の後ろでクオンが不安気な表情をしていたが他の隊長たちは気づかなかった。

 一方『妖精女王』の質問を受けて『創造主』は自分に課している制限について『妖精女王』に伝えた。


「確かに私は全能といっていい存在だ。でもこの世界を観察する時は自分の能力を制限している。戦う前から結果が分かっていてはつまらないだろう?お前たちの表現で言うなら本や映画を最後から見てもしかたがない。そういうことだ」

「……読者気取りならこっちに干渉してくるの止めて。邪竜だけでも迷惑してるんだから」

「お前の命令に従う義理は無いが、今回の試練を乗り越えた褒美にお前の望みを一つ叶えてやろう。大抵のことは叶えてやれるぞ?」


『創造主』の身勝手な発言に怒りを覚えていたところに予想外の提案をされ、『妖精女王』はすぐに返事ができなかった。

 しかし『妖精女王』は何を望むかは自分一人で考えることではないと考え、後ろの隊長たちに意見を求めようとした。

 しかしそんな『妖精女王』に『創造主』が声をかけた。


「望みの内容はお前が決めろ。私が創った竜を倒したのはお前なのだから」


『創造主』にこう言われて『妖精女王』は不快気な表情をしたが、これまでのやり取りから『創造主』相手にまともな会話が成立するとは思えなかったので一人で『創造主』に頼む望みの内容を考えた。


「……その望みっていうのはあやふやな内容でも大丈夫?」

「ああ、お前もさっき言っていたが私は万能だからな。邪竜を送り込むなという願い以外なら何でも叶えてやろう」


『創造主』にそう言われた『妖精女王』は自分の望みを伝えた。


「アイギスに無い金属、レアメタルだったっけ?を二百キロ欲しい」

「なるほどお前たちの街に無い希少な金属か。それぐらいなら構わないが金属は何でもいいのか?希望が無いならこちらで適当に決めるぞ?」


『創造主』にこう聞かれて『妖精女王』は困った。

 具体的にどのレアメタルが今のアイギスに必要かなど『妖精女王』には分からなかったからだ。


「後ろの人と相談していい?」

「ああ、構わない。ゆっくり相談してくれ」


 そう言う『創造主』に背を向けて『妖精女王』はクオンに欲しいレアメタルの種類を尋ねたのだが、当のクオンは困惑気味だった。


「いいの?せっかくのチャンスなのに私のために使って」


『創造主』に願いを叶えてもらう機会などこれで最後かも知れない。

 そう考えると『妖精女王』の申し出自体は嬉しかったが、クオンも自分の望みをすんなりとは口にできなかった。

 そんなクオンに『妖精女王』は自分の考えを伝えた。


「もう一つ能力をもらおうとも思ったけど、『妖精女王』はあまり表に出したくない。それなら討伐局の装備を充実させた方がいい。装備の重要性は知ってるでしょ?」

「分かった。絶対にすごいの作ってみせるから期待してて」

「その代わりと言っては何だけど一つ頼みがある」

「何?」


 今まで文献でしか知らなかった金属が手に入るのだから大抵の頼みは実現しよう。

 そう考えていたクオンに『妖精女王』が伝えた頼みはとても簡単かつ意外なものだった。


「僕専用の『飛燕』を作って。できればもう戦いたくないけどいざっていう時のために準備はしておきたい」

「は?もう作る必要無いじゃん」


 既にある『飛燕』を使うのは外聞がよくないという『妖精女王』の心配はクオンも分かったが、他者からの視線など幻術を使えばどうにでもなるはずだ。

 そう考えて不思議そうにしているクオンに『妖精女王』は専用の『飛燕』が必要な理由を伝えた。


「大人用の『飛燕』だと僕の腕だとぶかぶかになる。だから専用のを作って欲しい」

「は?だって……」


 そう言ってクオンが『妖精女王』の頭上で腕を振ると、クオンの腕は何にも当たらずに空を切った。


「えっ、これも幻術?」


 自分の腕に何の手応えも無かったことに驚くクオンを前に『妖精女王』はとりあえず話を終わらせることにした。


「子供の背が低いのがそんなに不思議?まあとにかく、明日僕の『魔装』調べるんでしょ?その時に腕のサイズも測って『飛燕』作って」

「うん。……分かった」


 クオンは何やら釈然としない様子だったが、『妖精女王』に促されて『創造主』に欲しい金属の名前を告げた。

 それを聞いた『創造主』は『妖精女王』に視線を向けた。


「たった二百キロでいいのか?別に一トンでも構わないぞ?」

「そんなに車に積めないからしかたがない」


『妖精女王』の望みの内容が控え目だった理由を聞き、『創造主』は苦笑した。


「その程度はサービスしておこう。お前たちの街の西にその女が言った金属を一トン用意しておく。好きに使ってくれ」

「そこまで気前がいいと気持ち悪い」


『創造主』の用意した金属を使うことに抵抗が無いと言えば嘘になるが、『創造主』の与えた物を信じられないと言い出したら能力者は誰も戦えなくなってしまう。

 そう考えて『妖精女王』は今回『創造主』が用意した金属自体は受け取るつもりだった。


 しかしここまで至れり尽くせりだとさすが『創造主』の言動に不信感を覚えてしまい、『妖精女王』は『創造主』に鋭い視線を向けた。

 そんな『妖精女王』の視線にも動じず『創造主』は話を続けた。


「私はお前たち人間の進化を促しているだけだ。そのためなら助力は惜しまない」


『創造主』のこの発言を聞き、今まで『妖精女王』たちのやりとりを黙って聞いていたシュウが『創造主』に話しかけた。


「そうかよ。じゃあ、その礼にその内お前を殺してやるから楽しみにしといてくれ」

「ああ、お前たちがその域にまでたどり着くと最高だな。その時を楽しみにしているぞ」


 そう言って『創造主』はこの場から姿を消し、『創造主』が消えたことでようやく隊長たちは警戒を解くことができた。


「やれやれ、何とか今回もしのいだわね」

「もうこんなの最後にして欲しい」


 ため息をつきながら肩の力を抜くアヤネの発言に続く形でクオンが今回の戦いへの文句を言い、それに続く形でレイナが『妖精女王』に礼を述べた。


「さっきヴェーダも言ってたけど今回は本当に助かったわ。本当にありがとう」

「別に構わない。さっさと帰ろう。さすがに疲れた」


 そう言って歩き出した『妖精女王』に続く形で一同が車に向かう中、アヤネは『妖精女王』に話しかけた。

 なおアヤネは車に積んである予備の隊服を着ることになっており、この時はシュウから借りた上着を子供の姿になって着ていた。


「さっきの光線どうやって撃ったの?あれも幻術ってことはないわよね?撃った後すごい汗流してたけど」


 まだアイギスに帰っておらず『創造主』が自分たちの話を聞いている状況でこの質問をしてきたアヤネに『妖精女王』は少し呆れたが、疲労でうまく頭が回らなかったこともあり素直にアヤネの質問に答えた。


「……僕は光を操って幻を創ってるからその応用で光線を撃っただけ。どっちも光を操る能力なんだから別にそこまで難しいことじゃない」

「いや、そんな簡単に言われても……」


 先程二本角を倒した技の仕組みを事も無げに説明した『妖精女王』を前にしてアヤネは何と言えばいいのか分からなかった。

『妖精女王』の言うことが本当なら幻術や透明になる能力を持っている能力者は全員が光線を撃てることになるが、そんな能力者をアヤネは今まで聞いたことがなかったからだ。

 そのため『妖精女王』の説明を聞き絶句していたアヤネにシュウが後ろから声をかけてきた。


「俺やこいつに能力の使い方聞いても無駄だぜ。結局は俺たちが天才だからで話終わりになるからな」

「はいはい。悪かったわね。凡人のあたしは黙って驚いとくわよ」


 そう言ってシュウと『妖精女王』から離れたアヤネと入れ替わる形でレイナがシュウに話しかけてきた。


「帰りの運転よろしくね。今回一番働いてないんだから」

「おいおい、馬鹿言うなよ。俺外でめっちゃ応援してたからお前ら多分全パラメータ十パーセントは上がってたと思うぜ?」


「そう、ありがとう。じゃあ、運転よろしくね」


 シュウの戯言たわごとをスルーしてレイナがそのまま車に向かおうとすると、そこにクオンが話しかけてきた。


「じゃあ、私が運転する。そんな強力なバフかけてもらってたなら運転ぐらいしないと悪いから」

「ふーん。まあ、クオンがいいなら私は構わないわ」


 シュウとクオンとの会話で聞き慣れない単語が飛び交うのは珍しくなかったので、レイナはそれ以上は何も言わずに車に乗った。

 その後シュウはクオンに話しかけた。


「しかし今回はお前もったいないことしたな」

「何が?」


 今回の戦いは危ないところもあったが武器の実験という意味では十分に満足できるものだったので、シュウのもったいないという発言の意味がクオンには分からなかった。

 そんなクオンにシュウは含みのある笑みを浮かべた。


「だって今回の件って典型的な『ここは俺に任せて先に行け』って状況だったじゃねぇか」

「ああ、そういうこと。さすがにそこまで考えてる余裕は無かった」


 繭の二階で最初に別れた時に『妖精女王』が何やら言いたそうにしていたのはクオンも気づいていたが、シュウに今言った通りあの時のクオンにそこまでの余裕は無かった。

 人生で一度は言ってみたいセリフの上位に入るセリフを言う機会をみすみす逃したクオンを見てシュウは呆れた様子だった。


「ほんともったいねぇ。『創造主』も毎回こんなダンジョンは創ってくれないと思うぜ?」

「確かに言ってみたいとは思うけどでも実際問題任されても困る。最悪の場合上に逃げるつもりだったし」


 自分の発言を聞き残念がりつつも情けない発言をしたクオンを見て、シュウは呆れた様な表情を浮かべた。


「そう考えると今回は結構ギリギリだったな。まあ、無理矢理縛りプレイさせられたんだからしかたねぇけど。それよりほんとにいいのか?別に車の運転ぐらいするぞ?」


 アイギスの周囲は信号機や標識はもちろん対向車も無いため、極端な話居眠り運転をしようが事故の起こしようが無い。

 そのため疲れているのは確かだったが、シュウは車の運転ぐらいはしても構わないと考えていた。

 そんなシュウに今度はクオンが含みのある笑顔で話しかけた。


「明日も『妖精女王』を捕まえて来てもらわないといけないし、たくさん計測もしないといけない。だから今日はゆっくりと休んで」

「ったく、ありがたくって涙が出てきそうだぜ。……人払いはちゃんとしとけよ」


 クオンのありがたみの欠片も無いねぎらいの言葉を聞き、シュウは呆れた表情を浮かべた。

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