表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/495

エクストラステージ

 クオンの部屋から戻ってすぐにシュウはミアたち三人と対峙した。


「さっきも言ったが今日は少し趣向を変えてみた。死なないように気をつけろ」


 そう言った直後、シュウは先程クオンに入れてもらった能力、火炎操作能力を発動して手にした鎌に炎を纏わせた。

 それを見た三人が驚く中、シュウは三人の内中央にいたギオルに斬りかかった。

 鎌が振るわれる度に飛び散る炎に顔をしかめながらもギオルはミアに話しかけた。


「私とサヤさんはともかくミアさんは隊長の武器と何度も武器をぶつけると武器が熱を持ってしまいます!気をつけて下さい!」


 血で武器を創っているサヤと武器を能力で冷やせるギオルは炎を纏ったシュウの鎌と何度武器を交えても問題無い。

 しかしミアは武器を創り直すことも冷やすこともできないので、今のシュウと武器を交わしての攻防を繰り返すことは避けなくてはならない。

 そう考えてのギオルのミアへの助言だったが、それを聞いたシュウは不敵な笑みを浮かべた。


「俺と戦いながら後輩に助言とはずいぶん余裕だな」


 この発言の直後シュウは鎌の刃でギオルの後退を封じる形で鎌を振るい、それと同時に左手にも炎を纏わせてギオルに攻撃を仕掛けてきた。

 どちらの攻撃もギオル自身を凍らせれば防ぐことはできるが、この方法で攻撃を防ぐとギオルは動けなくなるのでどのみちシュウにやられるだろう。


 そう考えたギオルはシュウの攻撃のどちらも防がず、刀でシュウに斬りかかった。

 当然このままではギオルはやられてしまうが、今回ギオルは一人で戦っているわけではない。

 シュウの左右からミアとサヤがそれぞれ襲い掛かり、それを受けてシュウは鎌を持ち替えて鎌の柄でギオルの刀を、鎌の刃でサヤの鎌を防いだ。


 それと同時にシュウは左腕でミアの振り下ろしてきた斧を弾き、その後シュウは鎌を回転させて直径二メートル程の炎の壁を作り出した。

 この壁によりギオルとミアにはシュウの姿が見えなくなり、ギオルはシュウの作り出した炎の壁を見てその大きさに驚いた。


 しかしどれだけ巨大な炎の壁が作られようがシュウはこの炎の壁のすぐ向こうにいるのだから攻撃を仕掛けるべきだ。

 そう考えてミアは炎の壁ごと斬り裂くつもりで斧を横に振るい、ギオルは槍状の氷塊を炎の壁に向けて放った。

 その結果ギオルの放った氷の槍は見事に炎の壁を突破し、その後誰もいない空間を素通りして床に落ちた。


「ギオルさん、ミアさん気をつけて下さい!シュウ隊長が体を炎に、」


 三人の中で唯一シュウがしたことを見ていたサヤが慌てて二人に注意を促したが、すでに手遅れだった。

 ギオルの放った氷塊同様ミアの振るった斧もシュウには当たらず、つい先程までシュウがいた空間に唯一残された鎌に当たっただけだった。


 それだけならまだよかったのだがミアの斧とぶつかった鎌がギオルのもとへと飛んで行き、それ回避したことによりギオルに隙ができてしまった。

 それでもギオルは前方への注意は怠っていなかったのだが、炎の壁が発生した際に床に飛び散った炎にまでは注意を向けていなかった。


 そしてギオルが飛んで来た鎌を刀で弾いたのに合わせ、床に飛び散った炎がギオルに襲い掛かった。

 それ程大きくなかった炎が急に勢いを増したかと思うと自分に襲い掛かったのを見て、ギオルは慌てながらも炎を回避しようとした。


 しかし床から跳び上がる様にギオルに襲い掛かった炎はギオルの動きに合わせて形を変え、その直後のどに熱を感じたギオルは死を覚悟した。

 しかし自分ののどに伝わる熱がそれ程熱くないことに気づき、ギオルはすぐに安堵した。

 そんなギオルの目の前で炎は瞬く間に人の形になり、次の瞬間にはギオルの前には不敵な笑みを浮かべながらギオルののどをつかんでいるシュウの姿があった。


「驚きました。クオン隊長から借りたばかりの能力をそこまで使いこなすなんて」

「俺を誰だと思ってるんだ?これぐらいで驚かれちゃ困るぜ」


 そう言うとシュウはギオルから手を放し、床に落ちていた鎌を拾ってからギオルと距離を取った。


「今のは不意打ちだったし、そもそも今日のはエクストラステージみたいなもんだからな。一回は見逃してやる。さあ遠慮無く攻撃してこい」


 そう言ってシュウはミアたち全員から離れた場所で棒立ちになった。

 ギオルはシュウがクオンに火炎操作の能力を入れてもらったと聞いても正直それ程警戒していなかった。


 いくらシュウでも先程入れたばかりの能力を自分たちが苦戦する程使いこなせるはずがないとギオルは考えたからだ。

 シュウが能力を遠くに飛ばせない体質なことを知っていたこともあり、ギオルはシュウが火炎操作でできることは体か武器の炎を纏わせる程度だと考えていた。


 しかしシュウは並の火炎操作の能力者と比べても遜色ない量の炎を生み出し、その上自身の身体を炎に変えてすらみせた。

 シュウを侮るなんて今さらながら馬鹿なことをしてしまったと自嘲しつつ、ギオルはミアとサヤに声をかけた。


「また接近戦を挑んでもあの壁で隙を作られるだけです!遠距離攻撃を!」


 このギオルの発言を聞いてもシュウは微動だにしなかった。

 完全にギオルたちの攻撃を受けて立つつもりらしいシュウを見て、ギオルたち三人は多少の怒りを覚えながらもそれぞれ攻撃の準備をした。


 ギオルは一度跳躍すると訓練室の中で創れる限界の大きさの氷塊を創り出し、それをシュウ目掛けて投げつけた。

 大きさを制限したといっても今回ギオルの創り出した氷塊は場所によっては五メートルを超える代物で、それを見たガドナーは頭を抱えたくなった。


「あれシュウ隊長が防がなかったらまずいことになるんじゃ……」


 訓練室の壁と床は訓練中の能力者の攻撃に耐えられるように頑丈に作られてはいるが、それでもあれだけの質量の物が床に激突したら同じ階はもちろん下手をしたら機構本部全体に振動が伝わってしまうだろう。

 そうガドナーが心配する中、サヤも訓練室の壁や床のことなどまるで気にせずに大技を発動しようとしていた。


 血で創り出した鎌を消した後、サヤは両腕から血を流して『ウロボロス』を発動した。

 今回サヤが『ウロボロス』で創り出した血の竜は普段の五倍程の太さで、今回サヤは血の竜を飛ばした後の細かな操作を完全に諦めることで血の竜の巨大化を実現していた。


 サヤが体内に貯蔵している血液全体の四割近くを使ったこの技がもし当たれば、訓練室の壁などひとたまりもないだろう。

 話に聞いていただけでガドナーは『ウロボロス』を見るは初めてだった。


 ガドナーはサヤが創り出した巨大な血の竜を見て、これ程の規模の攻撃は自分でも防ぐのは簡単ではないと戦慄を覚えた。

 そのため不得手な遠距離攻撃を行うために何とか重力球一発を撃ち出したミアを見て、ミアには悪いがガドナーは安心してしまった。


 こうして三者三様の遠距離攻撃を行ったミア達たちに対し、シュウはそれら全てを回避することなく防いだ。

 ミアの放った重力球を手のひらに発生させた火球で相殺しつつ、シュウはギオルの放った氷塊とサヤの創り出した血の竜にそれぞれ火炎でできた竜をぶつけた。


 もちろん火炎の形を竜に変える必要など全く無かったが、せっかくクオンに能力を入れてもらったのだからとシュウなりに演出を加えてみた。

 シュウが今回ギオルとサヤの攻撃にぶつけた火炎の竜の威力はAランクの邪竜が放つ火炎相当の威力まで抑えられていた。


 それでもシュウの放った火炎はギオルの氷塊を数秒で溶かし、ギオルは自分を氷漬けにしてシュウの放った火炎を防ぐはめになった。

 シュウはサヤの攻撃にもギオルの攻撃同様に火炎の竜で十分勝てると思っていた。


 もちろんサヤは火炎をまともに受けることになるが、火炎の勢い自体は『ウロボロス』とぶつかって弱まっているので『メリジューヌ』を使えば死にはしないだろう。

 シュウはそう考えていたのだが、今回サヤの発動した『ウロボロス』の威力はシュウの予想を上回っていた。


 厳密に言うと『ウロボロス』の威力自体はこれまでとそれ程変わらなかったのだが、今回サヤは通常時の五倍以上の血を『ウロボロス』発動のために消費していた。

 そのため『ウロボロス』の勢いがシュウの撃ち出した火炎の勢いをわずかながら上回り、その結果火炎とぶつかり気体に変わったサヤの血がシュウに襲い掛かった。


 いつものシュウなら鎌を振るって『空間切断』を使うなり跳んで回避するなりできただろうが、今のシュウは慣れない遠距離攻撃を行った直後で疲労していた。

 別の能力を入れたところで能力による遠距離攻撃が苦手というシュウの体質が変わるわけではないからだ。


 遠距離攻撃の代表例とさえいえる火炎操作の能力を入れれば勢いで遠距離攻撃ができるとシュウは考えていたのだが、さすがに考えが甘過ぎたようだ。

 無理矢理能力の効果範囲を伸ばして疲労したことで『ウロボロス』が効率の悪い技だということを再認識しつつ、シュウは『纏刃』を発動してサヤの血を防いだ。


 その後シュウの周囲を漂っていたサヤの血はやがて床に落ち、訓練室の床をところどころ腐食させた。

 気体状になったサヤの血がシュウの周囲に漂っているだけではなくシュウの火炎の竜とギオルの氷塊がぶつかって発生した水蒸気で視界が通らなくなったこともあり戦いは一時中断した。


 いつものシュウならこの水蒸気に乗じて攻撃を仕掛けていただろうが今回シュウは『纏刃』を使わされた時点で自分の敗北を認めていた。

 そのため水蒸気が収まるまでは何もせず、視界が通るようになってからシュウは口を開いた。


「地味子、今のはよかったぞ。『纏刃』使わなかったら右腕は確実に溶かされてた。発動まで時間がかかるのが気になるが、威力考えればしかたねぇと思うし」

「……『纏刃』は突破できなかったんですね」


 ほめられたにも関わらず不満そうなサヤを見てシュウは苦笑した。


「『纏刃』、というか『魔装』は『魔装』使うか俺や孫娘みたいに生まれつき能力の威力が高くないと突破できないからな。突破できない奴は一生突破できないから気にするな」


 シュウにこう言われてもサヤは納得していない様子だったが、そんなサヤから視線を外してシュウはミアに声をかけた。


「さっきの攻撃はずいぶんとかわいらしかったが、まあさっきのはしかたない。お前典型的な接近戦タイプだからな」

「じゃあ、どうしろって言うのよ?」


 ふてくされた様にそう言うミアにシュウは助言した。


「無理してあいつらに合わせることないだろ。俺があいつらの攻撃を防いだ後の隙を突いて重力球撃てばよかったんだ」


 シュウにこう言われてミアは返す言葉も無かった。

 自分の遠距離攻撃の威力がギオルやサヤに及ばないことは自覚していたにも関わらず二人に張り合った結果、先程の攻防に全く貢献できなかった上に実現可能な案までシュウに提示されたからだ。

 シュウの発言を受けて落ち込むミアを見てシュウは助言を続けた。


「そう落ち込むな。訓練っていうのはミスするためにやるものだし、俺だってガキの頃はあり得ないミスしまくって何度も死にかけた。お前は順調に強くなってるし、このままいけば二年もかからずに俺の能力並の威力の攻撃ができるようになる。だからそう落ち込むな」


 サヤ同様ミアもシュウに励まされても表情は明るくならなかった。

 しかしここではい分かりましたと納得されてもつまらないので、シュウは内心ミアとサヤの反応を喜びながらギオルにも助言をした。

 そしてシュウがギオルへの助言を終えた直後、他の隊員たちと合流しようとした三人を見てシュウが不敵な笑みを浮かべた。


「おいおい、何もう終わったみたいな空気になってるんだ?」


 シュウのこの発言を聞きミアたち三人は即座に臨戦態勢になり、その直後シュウは下半身を火炎に変えた。

 シュウから発生した火炎は床を伝い三人に襲い掛かり、サヤはシュウの火炎をまともに食らってしまった。


 火炎に飲み込まれた直後にサヤは『メリジューヌ』を発動し、血液に変えた体を焼かれながらもシュウを中心に床の上を円状に広がる火炎から何とか逃げ出した。

 ガドナーを含む他の隊員たちもいたためシュウは火炎をそれ程広げてはいなかった。


 そのためサヤはすぐに火炎から脱出することができたが、脱出するまでにかなりの量の血を焼かれてしまったため息も絶え絶えといった様子だった。

 ギオルとミアはそれぞれ氷の障壁と『反射壁リフレクトウォール』で火炎を防ぎながら後退したため大した傷は負っていなかったが、それでも無傷とはいかなかった。


 しかしかなりの血と魔力を失ったサヤはもちろん、体のいたる所に火傷を負ったミアとギオルも全く戦意を失うことなく視線を前に向けていた。

 シュウは今も能力を発動していたからだ。


「さあ、どうした、どうした?炎が怖くて邪竜と戦えるか!俺に一発攻撃を当ててみろ!そうしたら今日の訓練は終わりだ!」


 自分の周囲数メートルを隙無く包む火炎の結界の中心で笑いながらシュウは三人にそう告げ、これを聞きミアとギオルはもちろんサヤも立ち上がり自分たちの前に立ちふさがる火炎をにらみつけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ