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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
2章

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戦後処理

 邪竜との戦いが終わり機構本部に帰った後、隊を率いていない分他の隊長たちより早く就寝できたシンラは、数時間仮眠を取った後で他の隊長より早く起きて仕事を行っていた。

 といっても今回の戦いでは死者が誰も出ていないので書類仕事はそれ程多くなかったのだが、今回は邪竜が毒を使ってきたため別の問題が発生していた。


 今回最終的に邪竜を倒した場所がアイギスとアイギスが水を引いている川の間に位置していたため、戦闘による川への影響が心配されたのだ。

 川の水質調査はもちろん機構の仕事ではないが、また突然邪竜が現れても困るので明日の早朝に行う調査の際に隊を一つ派遣するように行政府から要望がきたのでシンラたちはどの隊を派遣するか考えなくてはいけなくなった。


 これに関しては隊員全員が長時間歩き詰めだった『フェンリル』と隊長の他に局長を務めている隊長が率いている隊が除外され、序列三位以上の隊長で話し合った結果リンドウと『ナイツ』が向かうことになった。

 その後リンドウとレイナとの話を終えたシンラが帰宅する前に買い物をしようと一階の売店に向かうと、そこで資料室から出て来たシュウと会った。


「何度見てもやべぇな、これ」


 他の隊長たち同様いつもより遅めの就寝となったシュウは、起きてすぐに資料室に向かいクオンが得意気に自慢してきた『グングニル』が実際に使用された時の映像を見ていた。

 かなり離れた場所から撮影された映像でも『グングニル』の威力は十分に伝わり、これが自分に向けられた時のことを考えてシュウは恐怖を感じた。


「『纏刃てんじん』でも多分無理だよな。……これ使わせない以外の攻略方法思いつかねぇな」


 あらかじめ警戒していれば話は別だが、二メートル以内の距離でいきなり『グングニル』を使われたらシュウでも跡形も無く消滅するだろう。

 一日でも早く『纏刃』のさらに先の技を、いやクオンの開発技術を考えるとさらに強力な技を考えないと安心はできない。


 アイギス最強はシュウでなくてはならないからだ。

 すでに日も暮れているが今すぐに訓練に向かおうと考えてシュウが資料室を出ると、資料室を出てすぐにシンラと会った。


「よお、今帰りか?」

「はい。家に帰る前に買い物に。シュウさんは、『グングニル』を見に来たんですか?」


 隊長が他の隊長や隊の戦闘記録を見に来ることは珍しいことではなく、シュウは隊長たちの中では資料室の使用数は多い部類に入る。

 そして今日に限ってはシュウが見たい記録など一つしか無く、シンラでなくてもシュウの目的は察することができただろう。

 実際シュウも自分の目的を当てられたことには驚かず、『グングニル』による攻撃を見た感想を口にした。


「クオンがどや顔で自慢してたんでどんなものかと思って見てみたんだけど、あれまじでやべぇな。今の俺だと百パー防げねぇわ」

「『瞬刃』なら対抗できるのでは?」

「『瞬刃』使ってもよくて相打ちだろ。最初から引き分け目指してどうするんだよ。何とか『グングニル』を防げる技を開発してみせる」

「その言い方だと魔装、『纏刃てんじん』でしたか、でも無理なんですよね?」


 実際に『グングニル』を見たシンラとしてはいくらシュウでもあの雷撃を正面から受けるのは無理だろうというのが本音だった。

 そのためシンラは現在のシュウの最大の防御技、『纏刃』でも『グングニル』は防げないだろうとシュウに確認し、シンラの意見自体はシュウも肯定した。


「ああ、今の俺じゃ無理だ。『纏刃』使っても体の一部が残るかどうかってところだろうな」

「そこまで『グングニル』を気にする必要は無いのでは?セツナさんならともかくコウガさんがシュウさんに危害を加えることはないですから」


 シュウが強くなること自体を止める気はシンラにも無かったが、『グングニル』対策はシュウが最優先で行うことではないとシンラは考えた。

 今さらシュウに書類仕事をするように言う気はシンラには無かったが、孫のミアを任せているシンラとしてはそちらに力を注いで欲しいものだった。

 そんなシンラの気持ちをよそにシュウは笑顔でシンラの発言を否定した。


「俺も別にコウガが俺を殺そうとするなんて考えちゃいねぇよ。でも単純に俺が防げない技があるっていうのがむかつく」

「……そうですか」


 子供の様なことを言うシュウを前にシンラは力無く返事をし、そんなシンラを見たシュウは多少は反省したのかまじめな表情で話を続けた。


「それにまじめな話、コウガの能力がパクられたんだから『グングニル』レベルの攻撃バカスカ撃ってくる邪竜が出るかも知れないだろ。だから準備はしとかねぇとな」

「あれを連発ですか。今までの傾向だといきなりそこまで邪竜が強くなるのは考えにくいですけど、でも確かに準備するに越したことはないですね。がんばって下さい」


 仮に『グングニル』レベルの攻撃を連発できる邪竜が現れた場合、今の隊長でまがりなりにも対抗できるのはコウガだけだ。

 それ以外では隊長の中でもシュウ以外は可能性すら無いため、シュウの言うことも一理あるとシンラは気を引き締めた。


 シンラ個人でシュウやコウガの域に到達することは残念ながらできないが、それでもできることはある。

 早速明日にでもレイナとクオンに相談して『グングニル』数個を常備できないか話し合ってみようとシンラは考えた。

 ここで『グングニル』についての話題は一段落し、二人の話題は今日のシュウや『フェンリル』の戦いについてになった。


「ミアさんがBランクと一対一で戦ったと聞いた時は驚きましたよ」


 Bランクの邪竜との戦い自体はミアはすでに先月経験済みだったのだが、シンラの口振りからミアがこのことをシンラに伝えていないことを察してシュウは何も言わなかった。


「ああ、あれな。孫娘たちの方から言ってきたんで、孫娘と氷使いなら大丈夫だろうと思って戦わせた。戦力的にも大分余裕があったし」


 ミアの強さを把握しているシュウはシンラが何に驚いているのかが分からなかった。

 人材育成は人手に余裕がある時にするように最近読んだ本に書いてあったので、シンラの反応を意外に思いながらもシュウは話を進めた。


「俺が育ててるんだから当然と言えば当然だが、あいつまじで成長速度早いな。下手すると今年中に隊長になるのも夢じゃないぞ」

「そうですか、そうなってくれれば嬉しいですね」


 さすがにシンラもミアがこうも早くBランクの邪竜に勝てるとは思っていなかった。

 そのため結果論ではあるがミアがBランクの邪竜に勝利した上にシュウのお墨付きをもらい、シンラはミアの想像以上の成長に思わず頬を緩めた。


「これからもミアさんをよろしくお願いします」

「ああ、任せとけ。じいさんより強くなっても恨まないでくれよ」


 このシュウの発言を聞きシンラは苦笑し、その後シュウはシンラと別れて機構本部裏の森へと向かった。

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