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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
2章

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双頭の竜

 南の戦線で発生した紫色の球体がアイギスの東に向かって飛び出した少し前、北の戦線でも同様の事態が起こっていた。

 討伐局の隊長や隊員たちによって倒された邪竜たちが積み重なっていた場所から突然雷撃が湧き上がったのだ。


 この雷は近くにいた隊員数名を負傷させた後、そのまま南で発生した球体同様アイギスの西へ向かおうとした。

 しかし数メートルも動かない内に雷撃は動きを止め、雷撃の動きを止めた隊長、コウガはシンラに通信を繋いだ。


「この雷をこのまま逃がしたら面倒なことになる気がします!私が動きを封じている内に重力球で攻撃して下さい!」

 コウガは他の能力者が発生させた雷撃なら簡単に支配できるのだが、今回地面から湧き上がった雷撃はまるで意思を持っているかのようにコウガの支配に逆らった。


 突然のことだったこともありコウガの正体不明の雷撃への支配は傍から見ている程うまくはいっていなかった。

 こうした事情まではシンラは把握していなかったが、コウガの慌てた声を聞きコウガにそれ程余裕が無いことだけは察した。


「まずは私が攻撃して様子を見ます。何が起こるか分からないので隊長以外はそのままさがってて下さい」


 シンラの指示を聞き隊員たちが後退する中、シンラは今もコウガの束縛から逃れようとしている雷撃に重力球を一発放った。

 この時点でシンラは南の戦線でセツナの毒に似た気体が地面から湧き上がりアイギスの西に向けて飛び出したという報告を受けていた。


 そのため自分が攻撃したら自分の能力まで雷撃に反映されてしまうのではとシンラは警戒していた。

 しかし重力球を受けた雷撃は特に見た目を変えることもなく無抵抗で重力球の攻撃を受け、シンラが見た限りでは雷撃は重力球に削られた分だけその量を減らしているように見えた。

 これなら追加で重力球を撃ちこんでも大丈夫だろうとシンラは考え、その後三十発近い重力球を雷撃に撃ち込んだ。


 シンラの重力球を受けた雷撃はまるで生き物の様にもがき、このままいけば雷撃を消滅させられるかも知れないとシンラは考えた。

 しかしちょうどその時コウガが限界を迎え、雷撃は全体の量の二割程を削り取られたものの何とか自由の身となりアイギスの西へと飛んで行った。


「すみません!私のせいで……」

「今はそんなことを言っている場合ではありません!すぐにあれを追わなくては!」


 自分の失敗で雷撃を逃がしてしまったことを謝罪したコウガだったが、今は一刻を争う事態だったためシンラはコウガを叱責も慰めもせずに逃げた雷撃を追おうとした。

 そんなシンラを見てコウガも現状を認識し、とりあえず今は飛んで行った雷撃の追跡とその先でおそらく戦うことになる邪竜を倒すのが先だと考え直した。


「アヤネさんからの報告によると南でもセツナさんの毒によく似た気体が発生して、その気体はアイギスをまっすぐ目指すのではなく西に少し離れたところを目指しているようです!おそらくあの雷撃も同じでしょう!」

「また二本角ということですか?」

「おそらく」


 うんざりした様なコウガの質問に答えながらシンラは今後の布陣を考え、その後手早くその場の隊長・隊員たちに指示を出した。


「私とコウガさんはこのままあの雷撃を追います。すでにリクさんとヴェーダさんが先行していて、アヤネさんとセツナさんも向かっているそうなので邪竜が現れたとしても戦力は十分です。リンドウさんはこの場の隊員たちと共にアイギスの西に向かい、クオンさんとアヴィスさんと合流して万が一の時のために備えて下さい」

「……分かりました」


 リンドウは今の隊長の中で自分が一番弱いことは自覚しているので、今回のシンラの指示に思うところが無いわけではなかった。

 しかし自分が今感じている無力感や情けなさを口にしてもしかたがないことは分かっていたので、急いでこの場を離れたシンラとコウガを見送った後リンドウはシンラの指示に従い隊員たちを取りまとめて西へと向かった。


 北と南の戦線でCランクとの戦いが終わって二十分程経った頃、アイギスから西に三十キロ離れた場所ではセツナの毒とコウガの雷撃が融合して一体の邪竜となっていた。

 その邪竜はこれまでアイギスに現れたSランク、Aランクの邪竜と体長はそれ程変わらなかった。


 しかし今回現れた邪竜は二本の首を持っており、左側の頭部に黄色い角を右側の頭部に紫の角を生やしていた。

 黄色い方の角が若干小さく見栄えが悪かったが、それでもこの邪竜を前にしてそれを笑える者はそうはいないだろう。


 それ程の威圧感をこの邪竜は放っていた。

 体が安定するのを待った後、すぐにアイギスへと向けて飛び立った邪竜だったが、五分も飛ばない内に左の翼を斬り落とされてしまった。

 その後地上に落下して叫び声をあげた邪竜を前にしてヴェーダは周囲を見回し、自分が一番乗りであることを確認した。


 その後ヴェーダは立ち上がったばかりの邪竜に近づくと右手に魔力を集中して邪竜の左後脚を思い切り殴りつけた。

 ヴェーダの拳を受けて邪竜の脚は大きく曲がり、それを確認したヴェーダこれ以上一人で戦うのはリスクが大きいと判断してリクとの感覚をつないだ。


(お兄ちゃん、私が一番先に着いた。不意打ちで翼斬り落としたら運良く脚が一本折れたみたい。このままならアヤネさんたちが来るまでの時間稼ぎぐらいは何とかなりそう)

(分かった。とりあえずそっちに行くよ)


 移動中は気が散るのを避けるためにリクとヴェーダはほとんど能力を使用していなかった。

 そのためリクはヴェーダから連絡があり安堵した。

 リクとヴェーダの能力はどちらか一人が繋がるのを拒否したら繋がらず、道中は何度か取れていた連絡がここ数分間取れなくなっていたことにリクは不安を覚えていたからだ。


 ヴェーダとのテレパシーによる会話を終えてすぐにリクはヴェーダのもとに転移し、その後二人はすぐに邪竜へ攻撃を仕掛けようとした。

 自分たち二人でSランクの邪竜、しかも二本角を倒せるとはリクも思っていなかったが、最低でも他の隊長たちがここに来るまで邪竜の足止めをしなくてはならない。


 まだ邪竜の脚は三本も残っているのだから。

 おそらくコウガとセツナの能力をコピーしている今回の邪竜を警戒し、リクはいざという時にすぐに逃げられるようにヴェーダには後ろで待機しているように頼んだ。


 この指示にはヴェーダに伝えた通りの狙いももちろんあったが、同じ『飛燕』で移動していたにも関わらず妹のヴェーダが先に着いていた上に邪竜にかなりのダメージを与えていたことに驚いたリクの自分も少しは戦果を挙げないと兄としての立場が無いという思惑も含まれていた。


 リクのこの思惑にはヴェーダは気づいておらず、二人そろった以上どちらがやっても結果は同じなのだからと考えて特に反論もしなかった。

 その後薙刀で邪竜の左の頭部に斬りかかったリクだったが、邪竜の角から放たれた雷撃を前に転移による逃走を余儀なくされた。

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