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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
2章

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前哨戦

 シュウたちが邪竜討伐に出発してから数時間が経ち邪竜出現予定時間の朝九時まで十分を切った頃、アイギスの北と南へそれぞれ八キロ進んだ地点にも討伐局の各隊の姿があった。

 今回アイギスに残った隊長及び隊の布陣は、北にシンラ、リンドウと『ナイツ』、『レギオン』、コウガと『シールズ』、南にクオンと『プロメテウス』、アヤネと『パニッシュメント』、アヴィスと『オーダー』、セツナとなっていた。


 ここに入っていないリクとヴェーダ及び『リブラ』は、北と南の戦線で邪竜を討ち漏らした場合に備えてアイギスの北と南で二手に分かれて待機していた。

 北と南のいずれかでシュウの言うおもしろいことが起こった場合、リクとヴェーダは状況次第ではどちらかのいる場所に転移して合流し、そのまま戦力が不足している場所に駆け付ける手はずとなっていた。


 そんな中北を担当していた三人の隊長の内コウガは、自分が率いている『シールズ』とすら距離を取り、一人だけ離れた場所にいた。

 今回は出現が予想されている邪竜が全てCランクの邪竜なので、北に関してはコウガが『雷帝の鞭』で半数近く倒す予定だった。


『雷帝の鞭』は予備動作が大きいため使用時にコウガの近くに他者がいるとその人間にまで攻撃が当たってしまう。

 そのための単独行動だった。


 コウガがその気になればCランク千体を倒すだけならコウガ一人でも可能だ。

 しかしシュウの会議での発言により邪竜側の増援を警戒しなくてはならなくなり、魔力の温存のためにコウガは邪竜の群れの半分だけ倒したら後は待機することになっていた。


「先月の件といい邪竜風情が面倒なことを…。まさか創造主とやらが本当にいるとはな」


 先月の時間差をつけての邪竜の出現だけでもうっとうしいと思っていたところに今回の同時に三ヶ所での邪竜の出現だ。

 邪竜と戦わされているだけでも腹立たしいコウガとしては、先月までただの言い伝えだと考えていた創造主らしき存在の小細工に神経を使わされているのが我慢ならなかった。


 また単純に今回の戦いについても不安があった。

 仮に今回Cランクの邪竜の群れを全滅させた後で新たに邪竜が現れ、その邪竜がSランクだった場合今北にいる隊長だけでは勝てない可能性があった。


 今北にいる隊長はシンラ、リンドウ、コウガで、正直な話リンドウは戦力としては微妙なのでSランクと戦う際はあまり当てにできない。

 そのためいざとなったらコウガはシンラと二人でSランクと戦わなくてはならない。


 邪竜の能力次第では苦戦は免れないだろうと思いながらコウガは左手に装備した『グングニル』に視線を向けた。

『グングニル』を作ったクオンは今頃南で不満気な表情をしながらアヤネあたりに愚痴を言っているだろう。


 今回はクオンが隊長としての仕事が免除されている朝八時以降に移動しては間に合わないため、シンラがクオンに頼んで朝七時から出撃の準備をさせた。

 クオンもどうせ戦うなら忙しい思いをするよりはとシンラの頼みを聞いたが、内心は不満でいっぱいのはずだった。


 そんなクオンの心情を想像しつつ、コウガはクオンと共に南の戦線に出向いたセツナについて考えていた。

 セツナがその気になれば南の戦線にいる隊長と隊員など五分もかからず皆殺しにできる。


 セツナの出撃はセツナがシュウとコウガを警戒してそのような暴挙には出ないだろうという根拠の無い判断に基づいてのものなので、コウガとしてはその様な危険人物とクオンが一緒にいるというだけで落ち着かない気持ちになった。


 何としてもクオンが隊長になるのは止めるべきだったというここ数年で何度抱いたか分からない後悔を胸に抱きながらコウガはため息をついた。

 いざとなったらコウガは『グングニル』を使ってこちらをすぐに片づけて南に駆け付けるつもりだったが、邪竜はともかくセツナが暴れた場合はコウガがいくら急いでも間に合わないだろう。


 討伐局で五指に入る強さを持っていると言っても幼馴染一人ろくに守れないという現状にコウガはいら立ちを覚えながら今日何度目になるか分からないため息をついた。

 こうしてコウガがもやもやした気持ちを抱いていると、コウガの前方に邪竜出現の前兆の渦が出現してコウガの耳に遠くにいる隊員たちのざわめきが届いた。


 そして渦が消えてCランクの邪竜の群れが待ち構えていた討伐局の隊員たちに狙いを定める中、コウガは先手を打って『雷帝の鞭』を発動した。

 一度『雷帝の鞭』を振るうだけでCランクの邪竜百体以上が消滅し、コウガが『雷帝の鞭』を左右に三往復するだけで六百体以上の邪竜が消滅した。


『雷帝の鞭』で倒し切れずに地面でもがいている邪竜が十数体いたがやがて消滅する可能性が高く、そうでなくてもこの後行われる集団戦の後でとどめを刺せばいい。

 もっともあの様子では放置しても一分とかからずに消滅するだろうが。

 その結果を見届けたコウガは、すぐにシンラに連絡を取った。


「私は予定通り局長たちの後ろで待機しますので後はお願いします」

「はい。後は任せて下さい」


 コウガからの通信に短く返事をするとシンラはリンドウ及び各隊と共に邪竜の群れへと向かった。

 本隊から離れていたコウガに代わり『シールズ』の指揮を取っていたシンラは、邪竜の群れに絶え間なく重力球の雨を降らしながら隊員たちに指示を出していた。


「相手はCランクです!恐れることはありません!横に逃がさないようにだけ気をつけて、目の前の邪竜を確実に倒して下さい!」


 シンラのブラックホールは効果範囲があまり広くなく、今回の様に横に広がった邪竜の群れ相手に使っても消費魔力に見合った効果を得られない可能性があった。

 そのためシンラは隊員たちの上空に浮かび戦場を俯瞰しながら隊員たちに指示を出していたのだが、リンドウ率いる『ナイツ』はもちろん三銃士率いる『レギオン』も順調に邪竜を倒していた。


 元々Cランクの邪竜は能力者なら多少腕に覚えがある素人でも勝てる程度の強さしか持たないため、討伐局の隊員なら二体までは問題無く勝つことができる相手だ。

 相手の数が三体以上となると不意を突かれる可能性もあったが、コウガが邪竜の数を五百体以下にした時点でその心配もなくなった。

 特に今回は相手がCランクの邪竜ということもあり、シンラが担当していた中央よりもそれぞれ強力な隊員複数が所属している『ナイツ』と『レギオン』の方が大きな戦果を挙げていた。


 北の戦線の右側を担当していた『レギオン』の内、普段は遊撃を担当している一番中隊を指揮していたフウカは突撃槍を手に邪竜の群れに突撃を敢行した。

 防御を一切考えていないフウカの突撃でCランクの邪竜十体以上が吹き飛ばされ、あるいは消滅した。


「私とリマはこのまま突っ込むからここで戦線を維持して!」


 横に振るった突撃槍で邪竜三体を吹き飛ばしながらフウカは自分の後ろについてきていた隊員たちに指示を出した。

『レギオン』の副官はリマで他の三銃士のフウカとシューラは役職上はただの隊員だ。

 しかしレイナの私的なパートナーであるリマが戦場で隊員たちに指示を出すと、実際はどうであれ公私混同していると取る隊員が少数ながらいた。


 そういった隊員たちとリマの衝突を避けるためレイナがいない場合の『レギオン』の指揮はフウカかシューラが取ることが多かった。

 今頃シューラは遠距離攻撃担当の四番中隊、五番中隊を指揮して邪竜の群れを右から削っているはずだった。


「フウカ!左側の邪竜が何体か中央に流れそう!二番中隊が手こずってるみたいでそっちは私が行くからこっち任せていい?」

「了解!こっちが負けるわけない戦いなんだからあんまり無理はしないでね」

「分かってる!でもこっちのミスで『シールズ』に迷惑かけるとさすがに悪いわ!もう切るわね!」


 そう言うとリマは能力で手のひらに爆撃を生み出し、手の届く範囲に入った邪竜の頭を次々に吹き飛ばしていった。


「やれやれ、レイナ隊長に置いて行かれたこと相当気にしてるわね」


 去り行くリマの背中を見送りながらフウカは苦笑した。

 今回の戦いでレイナが一人で『フェンリル』について行くと決まり、さすがに表立って反対こそしなかったがリマは明らかに不満を持っていた。


 いつもならそういったリマの態度をフウカもたしなめただろうが、今回の敵はCランクの邪竜だ。

 三銃士はもちろん数年の戦闘経験を積んだ『レギオン』の隊員たちが遅れを取る心配は無く、リマの憤りもいざ戦いが始まるとそれ程目立ってはいなかった。


 そのため表に出せない怒りをぶつける様な乱暴な戦い方をしていたリマを見てもフウカは何も言わなかった。

 しかしフウカが倒れた邪竜の頭を踏み砕きながら周囲に視線を向けると隊員たちの並びがわずかに乱れており、これは見てフウカは顔をしかめた。


 相手がCランクの邪竜だからと連携が適当になってしまったのだろうが、レイナから隊を任されているフウカとしては『レギオン』の命綱である連携が乱れているのはどんな状況でも見逃せなかったからだ。


「そこの四人、前に出過ぎよ!いつも隊長に言われてるでしょう!個人プレーするような隊員は『レギオン』にはいらないわよ!どんな時でも自分の役割を果たしなさい!」


 このフウカの檄を聞き、独断での行動を指摘された隊員たちはもちろん周囲の油断していた隊員たちも気を引き締めた。

 結果としてその後の『レギオン』は隊列を全く乱すことなく邪竜との戦いを有利に進めた。


 三銃士としてはこのままCランクの邪竜を掃除して終わりとなって欲しいところだったが、三銃士たちはレイナから不測の事態が起こる可能性が高いことを告げられていた。

 その場合『レギオン』はアイギスまで後退して隊員を率いるリクと合流する手はずになっていた。

 本来なら予想外の敵が現れたからといって討伐局の隊員が逃げるなど許されないことだ。


 しかし自分のいない時に隊員たちが危険にさらされるのを嫌ったレイナがシンラと交渉し、アイギスの守りに戻るという名目で後退する許可を取った。

 とはいえ他の隊を残して後退するのは今後の他の隊との関係を考えるとできれば避けたいので、三銃士としては今回ばかりはシュウの勘が外れて欲しいところだった。

 しかし三銃士に今回の戦いについての指示を出した時のレイナの口振りから察するに自分たちの願いは叶わないだろうとフウカは考えていた。

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