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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
2章

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駄目出し

 左右からシュウに攻撃を仕掛けてきたミアとサヤに対し、シュウはそれぞれ鎌と左腕で攻撃を防いだ。

 このままどちらかを吹き飛ばしたいところだったが、二人の攻撃の直後にギオルが正面からシュウに斬りかかってきた。


 それを見たシュウはミアの斧を受け止めるのを止め、そのまま鎌をギオルに突き出した。

 それに対してギオルは床から氷柱を生やして鎌の動きを止め、そのまま氷柱を跳び越えてシュウに斬りかかろうとした。


 もちろんその間ミアも止まってはおらず、隙のできたシュウの右側から攻撃を仕掛けようとした。

 斧ではなく重力球をシュウに叩き込もうとしたミアを見て、シュウは『纏刃』を発動した。

 その後氷柱に捕らわれた鎌の柄を軸にシュウは自分の両足を鞭の様に振るい、ミアとギオルをまとめて吹き飛ばそうとした。


 それを見たミアはとっさに直径二メートル程の円形の重力の障壁を創りシュウの攻撃を防ごうとしたが、『魔装』は触れればAランクの邪竜の体すら破壊する技だ。

 今のミアの能力で防げるはずもなく、ミアは次の瞬間には床に叩きつけられていた。


「あっぶねー。さすがにそろそろ厳しいな」


 シュウがAランクの邪竜の戦闘力を再現して戦っているといっても当然限界はある。

 邪竜の思考などシュウには知る術が無く、何より邪竜の大きさや重さまでは再現できないからだ。

 そのため先程のミアの攻撃の様に邪竜の体の一部を吹き飛ばせる攻撃をされた場合、シュウは手加減を止めて攻撃を防ぐしかない。

 さすがに訓練で手足を失うわけにもいかないからだ。


 ミアの防御を突破後すぐにシュウは『纏刃』を解除したため、ミアはそれ程の傷は負わなかった。しかしミアはすぐには動けず、シュウは氷柱から鎌を引き抜き容赦無くミアを踏みつけようとした。

 しかしまだ床に着地していないシュウにサヤの鎌による攻撃が当たり、さすがに空中で攻撃を受けてはシュウも吹き飛ばされるしかなかった。


 そのままシュウに追撃を仕掛けたサヤだったが、床に着地したシュウはすぐにサヤに鎌を突き出してきた。半分以上刃が失われているとはいえ、高速で突き出される金属の棒で胴体を突かれたら無傷ではすまない。


 しかしサヤは体に触れた武器を飲み込める上に傷の再生も行える。

 そのため隊員のほとんどがサヤの心配をせず、サヤがシュウの攻撃を防いだ瞬間を狙って攻撃を仕掛けるつもりだった。

 しかしサヤはシュウの攻撃を鎌で受け、そのまま大きく後ろに吹き飛ばされた。


 シュウとサヤ以外の誰もがこの結果を予想していなかったので、他の隊員たちへのサヤの支援が遅れた。

 結局その遅れが原因となり、サヤは隊員たちの攻撃をものともせずにサヤに近づいたシュウに踏みつけられた。


「はい、アウト」

 サヤから足をどかしたシュウは、その後近くにいたギオルに視線を向けた。


「こいつがどうして俺の武器壊さなかったのかは後で説明してやる。とりあえず戦いを続けようぜ」


 そう言うとシュウは壊れた鎌を手にギオルに攻撃をしかけた。

 その後予定通り三十分の訓練が行われ、ギオルとミアを含む二十人程の隊員だけが自分の足で立っている中シュウは今日の訓練の総括に入った。


「氷使いと孫娘に関しては特に問題無い。強くなってるし周りへの気配りもしっかりできてた。今後もその調子でがんばってくれ」

「ありがとうございます」


 シュウにほめられたギオルが礼を言った後、ミアがシュウに不満をぶつけてきた。


「私たちとの訓練で『魔装』使うのずるくない?それ使われたら私たち勝てるわけないじゃない」


 手加減をしてもらえなかったことに文句を言うのはミアとしても情けなかったが、訓練中に隊員たちが対処できない技を使われても困るというのはミアを含む『フェンリル』の隊員全員の本音だった。

 そしてシュウにそれを否定する気は無かった。


「ああ、お前が文句言うのも分かる。俺も使う気無かったし。でも今のお前の障壁じゃ、どっちみちAランクには通用しないと思うぞ?邪竜は魔力の操作は雑でも単純にでかくて重いからな」

「……じゃあ、Bランク相手なら?」


 ミアのこの質問を受け、シュウはしばらく考えた後右手で拳を握った。


「今から俺が三回殴るから障壁創ってみろ」


 シュウに促されたミアが重力の障壁を創ると、シュウはミアの障壁に拳を叩き込んだ。

 一発目の拳は防げたミアだったが、二発目の攻撃でシュウの拳がミアの重力の障壁を貫通してしまった。

 ミアはシュウが自分たちに訓練をつけている際に手加減をしていると頭では理解しているつもりだった。


 しかし実際にシュウが『魔装』を使わずに自分の防御を難無く突破するのを見て自分とシュウとの力の差を感じ、自分で思っていた以上の衝撃を受けた。

 そんなミアの気持ちに気づかずにシュウは実験の感想を口にした。


「今の感じだとBランクの火炎放射ぐらいならぎり防げるかな。障壁今よりでかくできるか?」

「二倍ぐらいまでなら大きくできるけど、それすると他の事してる余裕なくなるから飛びながらだと無理。後今の私だと斧無しじゃ障壁創れないんだけど、これ以上障壁に力入れると斧すぐに壊しちゃいそうで……」

「なるほど、ま、方向性としちゃ間違ってねぇからそのまま練習は続けろ。俺だっていきなり何でも斬れたわけじゃねぇし、練習すれば技のできはよくなるだろ。小技を増やすのもいいがそういうシンプルに強い技はどんな時でも役に立つからな。お前が前線に出て攻撃と他の奴への防御どっちもできるようになったら、相当うざいことになると思うからそのままがんばってくれ」

「わ、分かったわ」


 言い方のせいで分かりにくかったがシュウにここまでほめられるとはミアは思っておらず、返事が一瞬遅れてしまった。

 そんなミアをよそにシュウは他の隊員たちにもそれぞれ助言をし、最後の一人、サヤに視線を向けた。


「さてと、新入り連中は邪魔にならない程度には動けてたし、お前もまあまあ動けてた。でも俺に踏まれたってことは実戦だった死んでるってことだ。何が駄目だったか分かるか?」

「……私が弱かったのがいけないんじゃないんですか?」

「馬鹿言え。言っとくけどお前、ガドナーは別としてうちの隊で言うと氷使いと孫娘の次ぐらいには強いからな?」


 シュウのこの発言を聞き、シュウとサヤ以外の『フェンリル』の隊員全員が驚いた。

 サヤがここ最近毎日シュウ相手に個人的に指導を受けていることは『フェンリル』の隊員全員が知っていたが、討伐局に入って半月も経っていないサヤをシュウがこれ程高く評価しているとは思っていなかったからだ。

 しかし周囲のどよめきを意にも介さずサヤはシュウに質問をした。


「だったら何が駄目だったんですか?」

「多分そうだろうとは思ってたけど、お前俺以外の奴とまともに話してないだろ?」

「……はい」


 シュウの質問の意味が分からなかったため若干答えるのが遅れたものの、サヤはいつも通り短くシュウの質問を肯定した。

 そんなサヤを見てシュウはため息をついた。


「さっきの武器を飲み込む技、何て名前だ?」


 シュウのこの質問にもサヤは即答できなかったが、しばらく考えた後で自分の考えを素直に口にした。


「名前は特に決めてません。技に名前なんていらないと思いますし」

 このサヤの意見にはミアを含む多くの隊員たちも内心同意していたが、サヤの発言を聞きシュウは呆れた表情をした。


「名前がいらないってじゃあ他の連中がお前にその技使って欲しい時何て言えばいいんだよ?」

「どういう意味ですか?」


 本気でシュウの発言の意味が分かっていない様子のサヤにシュウは説明を続けた。


「別に戦闘中に技名叫べって言ってるわけじゃねぇぞ。でもお前の技に名前が無かったら他の奴と連携取る時不便だろ。わざわざ毎回『武器での攻撃を体に受けた時に相手の武器を飲み込む技』使って下さいとでも言わせる気か?」


 元々の性格に加えて自分が日に日に強くなっているという手応えがあったこともあり、サヤは戦闘の際に誰かと連携を取るという発想が無かった。

 そのためシュウの指摘はサヤにとって予想外のものだった。


「技に限った話じゃねぇ。名前をつけるってことはそれを使って他の奴らと一緒にやっていくってことだ。お前がまじで一人で生きていくなら二十七番って呼び方すらいらないわけだしな」


 シュウの指摘を受け、サヤはしばらく黙り込んでしまった。


「さっきだって今のお前じゃ武器の飲み込み連続でやるのは無理だって他の奴らが知ってたらちゃんとフォローしてもらえたはずだから、お前の敗因は単にコミュニケーション不足だ」


 シュウにここまで言われてもサヤは返事をできなかった。

 そんなサヤから視線を外してシュウは他の隊員たちに視線を向けた。


「お前らもお前らだ。今のこいつがあんなとんでも技連発できるわけねぇだろ。少しは考えて動け」


 急にシュウに批判された隊員たちはサヤ同様シュウに反論ができなかった。


「まあいいや。ガドナーたちから話は聞いてるだろ?お前はこれから二十四時間この部屋で待機だ。時間はたっぷりあるから精々いい感じの技名考えるんだな」

「あなたの命令だというなら従います。でも一つお願いがあります」


 サヤとしては本当はシュウに技名を考えて欲しかったが、ここ最近のやり取りを考えるとどうせ断られるだろうと考えて元々訓練後にシュウにするつもりだった頼み事を口にした。


「この前私に言っていた喫茶店の仕事を紹介して下さい」

「は?何で今さら?」


 訓練に関する何らかの頼みがあるのだろうと予想していたため、シュウはサヤの頼みを聞き困惑した。

 そんなシュウにサヤは説明を続けた。


「私専用の『飛燕』を二個注文したらお金がなくなったので働かないといけなくなりました」


 サヤのこの発言を聞き、シュウは呆れ顔を、他の者は驚いた顔をした。

 討伐局に所属している者の給料は隊長は三回に分けて支払われるが、隊員には一月に五百万が一括で支払われる。


 これは少しでも討伐局に入る人間を増やすための措置なのだが、一月以外に入った者に払われる給料は当然減額される。

 六月入隊のサヤには約三百万が支払われているが、討伐局所属の隊員が個人で『飛燕』を頼む場合の費用は百三十万となっているためそれを二個注文したとなるとサヤは残り四十万で半年間生活しないといけない。


 寮生活のため家賃は必要無いので無理ではないが、かなり切り詰めた生活を余儀無くされるだろう。

 しかもサヤは能力で常人をはるかに超える量の血を内蔵できるが、血を無から生み出すことはできない。


 そのため能力を十全に使おうと思ったら人より多く食事を取る必要があり、食費を稼ぐためにも討伐局の隊員とは別の働き口が必要だった。

 しかしサヤの能力についてそこまでは知らなかったシュウは、サヤの無計画な金遣いをたしなめた。


「食い扶持稼げって言われた途端にこれかよ。『飛燕』は一個でよかっただろ」


 いきなり財産のほとんどを武器につぎ込んだサヤに呆れたシュウだったが、それと同時にサヤが『飛燕』を使おうと思ったらサヤ専用の『飛燕』が必要なことも理解できた。

 回復能力を持っている能力者は装備が自分専用かどうかで戦闘中の選択肢が大きく変わるからだ。


 サヤが『飛燕』を二個同時に注文したのは一つ目は訓練で壊すことを前提にしているためで、シュウもそれは分かっていた。

 しかしそういったことは生活に支障が出ない範囲でする必要があり、シュウはサヤの計画性の無さに呆れてしまった。


 本音を言えばサヤの注文を取り消したいところだったが、研究局はすでに作業に取り掛かっているだろう。

 それにシュウがサヤに紹介しようとしていた喫茶店は店員の一人が近々辞めるので、サヤの頼み自体は渡りに船だった。


 そのためシュウはサヤの提案を受けることにした。

 しかし話が長くなりそうだったので、シュウは『フェンリル』の隊員たちに解散するように指示を出した。

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