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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
2章

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それぞれの成長

 その道中シュウにフウカが話しかけてきた。


「シュウ隊長」

「あ?何だ?」

「今日の『フェンリル』の戦いすごかったです」

「Aランク一体ぐらいは倒してもらわないとな。最終的にはガドナーとリンシャ入れてAランク五体ぐらいは相手できるようになってもらうつもりだし」


 この発言を近くで聞いていたガドナーとリンシャが顔をしかめる中、フウカは本題を切り出した。


「『フェンリル』も強かったですけど、シュウ隊長もAランク六体をあっと言う間に倒して本当に強かったです。だからこそ気になったんですけど、今の序列に満足してるんですか?」

「満足?俺の強さ考えたら序列一位で当然なのにってことか?」

「はい。もちろんシンラ隊長やリンドウ隊長は長年隊長をしていますから単純には比べられませんけど、自分が推薦したリク隊長やヴェーダ隊長どころかセツナ隊長よりも下で嫌じゃないのかなと思って……」


 フウカの疑問を聞いたシュウは即答した。


「そうだな、地位や名声に興味が無いなんて悟った様なこと言う気はねぇぞ。ほめられるのって超気持ちいいし、命令できる奴がいるのも便利だしな。でも序列の高さはそこまでどうでもいいかな。俺が序列最下位の時点で序列の価値なんてたかが知れてるし、上げるために猫被るのもコスパ悪いし」

「コスパですか?」

「ああ、序列上がると特典あるって言うなら考えるけど、序列が下で困ったこと特に無いからな。馬鹿共に愛想振りまく程のメリットは感じない。まあ、序列ゼロ位とか用意するって言われるとちょっと悩むけど」


 シュウがわけの分からない単語を使ってきたら聞き流すようにレイナに言われていたので、フウカはシュウの発言の最後の部分は聞き流して話を続けた。


「でももう少し態度を改めたら街の人たちの目も変わると思いますけど」

「別にモブにどう思われても構わねぇよ。お前だって別に街の人間みんなと仲いいわけじゃねぇだろ?」

「それはまあそうですけど」


 シュウの発言を聞き、反論できないが納得したわけでもないという顔をしたフウカにシュウは自身の言動の大前提を伝えた。


「俺は敵は徹底的に潰すし味方には優しくしてるつもりだ。でも世の中の大半の奴ってほとんどは絡むことない他人なんだぞ?能力も時間も無限じゃないんだから、使う相手は選ばないとな」


 シュウの発言を受けてしばらく黙り込んだフウカだったが、やがて口を開いた。


「話には聞いてましたけど、本当にシュウ隊長ってオブラートに包まないんですね」

「薬は苦ければ苦い程普段から健康に気を遣うだろ?ガキ相手ならともかく、大人相手にオブラートなんて使うかよ」


 自分の発言をまるで意にも介さないシュウを前に口を開けなかったフウカを見かねたのか、今までシュウとフウカの会話を黙って聞いていたリンシャが話しかけてきた。


「フウカさん、シュウ隊長には何を言っても無駄ですよ。こっちが何言っても屁理屈しか言いませんから」

「他の隊の奴の相談に乗ってる働き者捕まえてひでぇ言い様だな。まあ、いいや。とにかくそういうわけで、俺は別に周りに気を遣う気はねぇ。そのために最強やってるんだからな」


 ここで話は途切れ、これはレイナがシュウについての愚痴ばかり言うわけだとフウカは納得した。


 六月十日(水)

 この日の朝、『フェンリル』はミアを含む全隊員での初めてのシュウとの訓練を行っていた。


「ほーら、ほらどうした!逃げてばっかじゃ俺は倒せねぇぞ!せめて一発ぐらい当てて見せろ!」


 そう言ってシュウが振るった鎌で隊員二人が吹き飛ばされた。

 鎌の刃先は潰してありシュウが鎌に行っている魔力による武器の強化も『万物切断』には程遠いものだったが、それでもシュウの鎌による攻撃を受けた隊員たちは傷口から血をまき散らしながら吹き飛ばされた。

 そんな彼らにとどめを刺そうと走り出したシュウに横からミアが斬りかかってきた。


「調子乗ってんじゃないわよ!」


 そう言ってミアが振り下ろした斧をシュウは鎌の柄で防ぎ、そのままミアを押し返した。

 すぐに押し負けると判断して一度後退しようとしたミアだったが、次の瞬間には腰に鎌の刃が当たっておりミアはそのまま引き寄せられた。


 鎌を左手のみで持ったシュウは、そのままミアの胴体に掌底を食らわせようとした。

 この掌底でミアを倒すことはできないだろうが動きは止まるはずで、そこを鎌の柄で叩いてから踏みつけよう。


 そう考えていたシュウだったが、シュウの掌底はミアの斧に遮られた。

 防がれること自体は予想していたが、手のひらに伝わる感触に違和感を覚えたシュウはミアの持つ斧に視線を向けて笑みを浮かべた。


「へぇ、重力の障壁か。お前にしては上出来だ」


 普段のシュウならともかく訓練時のシュウの腕力ではミアの能力で創った重力の障壁を押し切ることはできなかった。

 しかしミアの持つ斧の方が長くは持たないと判断したシュウは、そのまま押し合いを続けた。


 しかし他の隊員たちもそれを黙って見てはおらず、サヤを含む隊員四人がシュウの後方から攻撃を仕掛けてきた。

 サヤ以外の三人の攻撃は反応する程ではなかったが、サヤの斬りつけは邪竜が反応するには十分な威力だったためシュウはミアへの攻撃を中断して振り向いた。


「ったく、いってぇな」


 自由の身となったミアが後退する中シュウは鎌を振るい、隊員二人を吹き飛ばした後でシュウの鎌はサヤが血で創った鎌により防がれた。

 数日前のシュウの戦いを見て以来、隊の訓練はもちろんシュウとの訓練でもサヤは身の丈以上ある鎌を武器として使っていた。


 隊の氷使い(シュウはギオルの名前を知らない)もシュウが隊長になってすぐに武器を剣から刀に変えたため、サヤが自分の武器を真似たことをシュウは特に気にしていなかった。

 しかしまだ討伐局に入って日が浅いサヤに対し、シュウは武器の訓練をするより応用が効きそうな能力の方を訓練した方がいいと伝えた。


 それにサヤははいと答えたのだが、それから一週間も経たない内に鎌の様な使いにくい武器を使い始めたサヤにシュウは呆れていた。

 隊員数人を吹き飛ばしながらサヤと数回鎌同士で斬り結んだ後、シュウはサヤの胴体目掛けて鎌を振るった。


 深々とサヤの左わき腹に刃が突き刺さり、明らかに致命傷のサヤの傷を見てシュウとサヤを除く『フェンリル』の隊員全員の表情が固まった。

 しかし当のサヤは刃が自分の体に刺さったことなど気にも留めずにシュウに鎌を振るった。


 それに対してシュウはサヤの攻撃を防ぐことなくまともに受けた。

 邪竜はほとんどの場合攻撃をよけたりしないため、訓練中のシュウは隊員たちの攻撃は基本的に受けることにしていた。また先程の攻撃もそうだったが、今のサヤが武器を使って攻撃してもAランクの邪竜には通用しない。


 そのためAランクの邪竜相当の硬さを再現している訓練中のシュウにとって、サヤの使う武器は刃物だろうが鈍器だろうがよける必要は無かった。

 シュウがサヤが刺さったままの状態で鎌を思い切り振るとサヤは勢いよく壁に叩きつけられ、そのまま床に落ちたサヤから床に血が広がっていった。


「隊長、いくら何でもやり過ぎです!」


 腹部への攻撃の時点で致命傷だったサヤを壁に叩きつけたシュウに対し、ガドナーは思わず声を荒げた。

 しかしそんなガドナーとは対照的にシュウに慌てた様子は無かった。


「あれ?もしかして知らないのか?よく見てみろ」


 シュウのこの発言にガドナーを含む隊員たちがサヤに視線を向けると、床に広がった血がまるで巻き戻しの様にサヤの体に戻って行った。

その後何事も無かったかのように立ち上がったサヤは服も含めて傷一つ無かった。


「こいつは殴られたりとか骨が折れたりとかは無理でも、血が流れてる傷なら能力ですぐに治せるんだ。俺はお前らの能力ちゃんと把握してるから死ぬような攻撃はしねぇよ。安心してぼこぼこにされてろ」

「すいません」


 ガドナーが謝罪したことで仕切り直しとなり、シュウは近くの隊員に襲い掛かろうとした。

 しかし鎌に違和感を覚えたシュウが鎌の先を見ると刃が半分以上消失しており、原因に一つしか心当たりが無かったシュウはサヤに視線を向けた。


「お前、武器飲み込むなんて昨日までできなかったよな?」

「家で毎日練習して昨日の夜できるようになりました」

「へぇ、熱心で何よりだ」


 シュウは能力というのは入り口が違うだけで、極めればどんな能力でも最終的には何でもありになると考えている。

 そのためサヤが金属を取り込めるようになったと聞いてもそこまでシュウは驚きはしなかったが、訓練を十回は行えるだろうと思っていた鎌が訓練初日に壊れたのは経済的には痛かった。


 しかしまさかシュウの武器を壊さないように戦えと言うわけにもいかず、シュウは小さくため息をついた。

 そんなシュウにミアが声をかけてきた。


「はっ、能力把握してるが聞いて呆れるわね!あんた超驚いてるじゃない!」

「うるせぇな。これぐらいは誤差だろ」


 ミアの振り下ろしてきた斧を鎌の柄で防いだシュウは、痛いところを突かれてばつが悪そうな顔をした。

 そのままミアに追撃を仕掛けようとしたシュウだったが、サヤがすぐに戦いに復帰してシュウに斬りかかってきたためシュウはサヤの相手をせざるを得なくなった。


 その機を逃さずにミアはシュウに迫り、シュウの視界の端ではギオルもこちらに向かっていた。

 この三人を同時に相手にするのは面倒だと思いながらも、それと同時にこれからの戦いを楽しみにしていることをシュウは自覚していた。

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