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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
2章

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反省

 クオンやアヴィスがそれぞれ二体目の邪竜を倒そうとしていた頃、シュウは邪竜相手に鎌の殺傷力を確かめていた。

 今回は鎌の練習が目的のため邪竜との戦いが長くなる。

 そう考えてシュウは地上で戦っているクオンやアヴィス、及び隊員たちの邪魔にならないように邪竜の翼は斬り落とさずに空中戦を行っていた。


 そしてシュウの実験台に使われていた邪竜がシュウ目掛けて火炎を放った。

 それを鎌による『空間切断』で防いだシュウは、邪竜の火炎放射が止むと同時に『飛燕』で加速して邪竜の頭部に近づいた。


 すでに多くの傷がある邪竜の頭部に近づくと、シュウは手のひらを軸に軽やかに回転させながら鎌を振り下ろした。

 この鎌による攻撃では普段シュウが刀で斬り裂く程の傷はつかなかったが、それを見たシュウは残念がる様子も見せずに感想を口にした。


「うーん、Aランクの邪竜でこれだと今の攻撃あいつらにしたら死人が出るな。思ったより威力たけぇな、これ。……武器間違ったか?」


 先程から鎌に回転をつけての斬りつけや柄を長く持っての振り降ろしを試しているのだが、遠心力により思った以上に深い傷を邪竜につけてしまいシュウは悩んでいた。

 かといってこれ以上攻撃力を下げると今の『フェンリル』相手では手の抜き過ぎになってしまう。

 邪竜の抵抗を適当にあしらいながら悩んだシュウだったが、結局このまま『フェンリル』の訓練に鎌を使うことにした。


「ま、Aランクの邪竜の攻撃まともに防げる奴なんてうちの隊にも何人もいないし、よけるの前提の攻撃ばっかでも訓練にはなるだろ。金ももったいねぇし」


 この鎌にはシュウが普段使っている刀四本分の費用がかかっているので、今さら使わないなどと言うとリンシャの反応が怖かった。


「後十回ぐらい斬ればいい感じに手加減できるようになると思うから、悪いけどもう少し付き合ってくれ」


 そうシュウが言った直後、邪竜は翼で風を起こしてシュウを吹き飛ばそうとした。

 それ自体は『纏刃』で難無く防いだシュウだったが、邪竜はその後すぐに尾を横に振るいシュウに攻撃を仕掛けてきた。


「おっ、邪竜にしては考えたな」


 単純なものとはいえ邪竜が攻撃の仕方に工夫をしてきたことに驚きつつも、シュウは無造作に振り下ろした鎌で迫り来る邪竜の尾を斬り落とした。


「……あれ?今のやばくね?」


 自分があっさりしのげたのでシュウもすぐには気づかなかったが、先程の風を起こして相手の動きを止めた直後の邪竜の尾による攻撃は迎え撃つか防ぐかしか対処方法が無い。

 もちろん最初の風による牽制を回避すれば続く攻撃も回避できるが、隊長が回避主体の戦闘スタイルを取ると隊員たちの被害が甚大なものになってしまう。


 またAランクの邪竜の尾はそう簡単に破壊や防御できるものではなく、先程の攻撃を受けたら入れている能力次第ではクオンは対処できないかも知れなかった。

 先程からシュウは何度かクオンやアヴィス、そして二人が率いている隊の様子を見ていたのだが、彼らが戦っている邪竜の動きもいつもと違う様に見えた。


「もしかしてそういう時期か?」


 もちろんシュウは話や文献でしか知らないが、二百年以上前に邪竜たちが文明を滅ぼした後に今の様な形で人間と邪竜が戦うようになった際、邪竜はBランクとCランクしか現れなかったらしい。

 その後ある時期にAランクとSランクの邪竜がそれぞれ追加されたらしく、今回邪竜が小細工を使うようになったのもそれと同じ様なものなのだろうとシュウは考えた。


 AランクとSランクの邪竜が現れるようになった直後は討伐局の被害が大きくなったとシュウは以前シンラから聞いた。

 邪竜が野生の生物ではなく創造主とやらが作っている存在なら邪竜が徐々に改良されていくのは避けられないので、受け身に回るしかない人間側は自分たちの能力を上げるしかない。

 邪竜がどう変わろうが結局することはこれまでと変わらないとシュウが考えていると、シュウと戦っていた邪竜がクオンとアヴィスが戦っていた邪竜同様攻撃の対象を地上の隊員たちに切り替えた。


 ほとんど回避不可の翼による風起こしでシュウの動きを止め、その後邪竜は地上に向かおうとした。しかし『飛燕』を装備しているシュウをAランクの邪竜ごときが振り払えるわけもなく、面倒なことになる前にと考えたシュウに邪竜はあっさりと倒された。


「ったく、もう少し付き合ってくれてもいいだろ」


 そう言うとシュウは今回が実戦での初めての使用となる鎌の状態を確かめ、特に異常が無いことを確認した。

 今回のAランクの邪竜は戦闘技術こそ多少上がっていたが、速度や力が上がっていたわけではない。


 そのためAランクの邪竜一体相手にする程度で死人が出るようなら『フェンリル』相手の訓練をもっと厳しくしなくてはならない。

 そう考えていたシュウが邪竜と戦っている『フェンリル』に視線を向けると、『フェンリル』と邪竜の戦いは終わりを迎えようとしていた。


「俺が頭を潰す!横からの攻撃を続けといてくれ!セラ、俺が跳んだ後で障壁頼む!」


 同僚にそう頼んだギオルは両方の翼を潰された邪竜に正面から突っ込んだ。

 そんなギオルに向けて邪竜は火炎を放ったが、ギオルは自分の前に氷塊を創り邪竜の攻撃を防いだ。

 その後大きく跳躍したギオルは、空中でセラの創った障壁を足場にして邪竜の頭上に跳んだ。


「死ねっ!」


 大きな叫び声と共にギオルは自分が創り出せる最大の氷の槍を邪竜の頭部に突き立てた。

 しかしギオルの創った氷の槍は邪竜の頭部に刺さりこそしたものの致命傷とまではいかず、邪竜は再び口を開き火炎を放とうとした。


「まじか」


 今の自分の攻撃がとどめになると思っていたため、ギオルはなおも動いている邪竜を見て驚いた。

 それなら氷の槍をもっと深く打ち込んでやると意気込んだギオルだったが、ちょうどその時ギオルの横を一人の隊員が通り過ぎた。


 コピー能力持ちの隊員、オーフルは別の隊員からコピーした怪力で思い切りギオルの創り出した氷を叩きつけ、それにより氷の槍は邪竜の頭に深々と突き刺さった。

 これにより邪竜の動きが止まり、程無くして邪竜は消滅した。


「悪いな、いいとこもらっちまって」

「ちっ、最初の一撃で仕留められなかった俺が悪いんだからしかたないか。むしろ助かった。自分氷で包んで攻撃受けるの心臓に悪いからあんまりしたくないからな」


 オーフルが邪竜にとどめを刺さなかったら、ギオルは確実に邪竜の攻撃を受けていた。

 セラの障壁はAランクの邪竜が相手だと三回目以降はあまり当てにならないため、ギオルが邪竜の攻撃を受けたら自分を氷で覆う形での防御をするしかなかった。


 そのためギオルは悔しくはあったがオーフルに文句を言えずにいた。

 その後二人そろって他の隊員たちと合流しようとしたギオルとオーフルにガドナーから通信が入った。


「お疲れ様でした。さっきのは少しヒヤッとしましたけど、何とか私たち抜きで勝てましたね。これなら見学していた新人のみなさんも参考になったでしょう」


 今回の戦いでガドナーとリンシャは極力手を出さないようにシュウから指示を受けていた。

 Aランクの邪竜一体程度ならガドナーとリンシャ抜きでも今の『フェンリル』なら倒せるというシュウの判断に基づいた指示で、訓練時の手加減した状態とはいえ打倒シュウを目指している『フェンリル』の隊員たちからすればシュウのこの指示は望む所だった。


 実際『フェンリル』の隊員たちの中にシュウが来るまでの時間稼ぎなどという気持ちで邪竜と戦っている者は一人もおらず、ほとんどの隊員が邪竜に負けて殺されるかではなく自分たちが少し劣勢になったぐらいでガドナーとリンシャが手を出さないかを心配していた。


 またすでにいる隊員たちの邪魔になっても困るので、新人たちには初陣となる今回だけは後方で見学するように伝えてあった。そのためサヤを含む新人たちは、そのほとんどが目の前で行われた各隊の戦闘を見て表情をこわばらせていた。


 そんな彼らとは別に『フェンリル』と共に戦っていたフウカも『フェンリル』の戦い振りに驚いていた。今日の戦いでフウカは能力を使わず、『フェンリル』の隊員たちの邪魔をしないことを意識した立ち回りをしていた。


 フウカは今日の戦いで一応邪竜に三回攻撃を加えたが、『フェンリル』の隊員たちが邪竜に与えたダメージからすると誤差の様なものだった。

 フウカが死んだらレイナに悪いので、今日は新人たちと一緒に見学していていいとフウカはシュウから言われていた。


 その提案自体は断ったフウカだったが、『フェンリル』の隊員たちの戦い振りを見てシュウがフウカに参戦しないでいいと言ったことに納得していた。

 規律が取れた動きをしているというわけではないのだが、的確に互いを助け合い『フェンリル』の隊員たちはAランクの邪竜を相手に互角以上に戦っていた。


 そして何より隊員全員が自分たちだけで邪竜を倒すということを当然のこととして受け入れていることにフウカは驚いた。

 レイナがシンラから『レギオン』と『フェンリル』を参考にした隊の育成ノウハウの作成を頼まれていると知っていたフウカは、百人足らずでこの強さならシンラが参考にしたがるはずだと納得しながらAランクの邪竜が隊員たちだけで倒される様を近くで見ていた。


 全ての邪竜が倒された後、隊長三人は今回の戦いについての意見を交換していた。


「今回の邪竜、何か動きが変じゃなかった?」

「そりゃお前、頼んでもいないのに能力と邪竜なんてもの送り込んでくる働き者の創造主様がいつまでも同じこと続けるわけねぇだろ」


 クオンの質問に皮肉気に返事をした後、シュウは自分の予想を告げた。


「今回の調子だと俺たち無視して隊員に向かうなんてまだいい方で、その内直ちょくでアイギス狙いかねないな」

「それをされるとアイギスの被害もですけど、マスコミからの批判も大きくなりそうですね」


 シュウの予想を聞き、アヴィスが表情を硬くした。


「あいつらの言うことは店内放送みたいなものだと思って聞き流しとけ。それより自分の隊の心配しろ。Aランク二体で三十人死なせてたら先月みたいな戦いになったらへたすると百人以上死ぬぞ」

「……はい。すみません」


 自分でも気にしていたことをシュウに指摘され、アヴィスは口ごもった。

 今回の戦いでの各隊の死亡者数は、『プロメテウス』が十七人、『オーダー』が三十二人、『フェンリル』がゼロだった。


 初陣の相手がAランクの邪竜二体と聞いて正直楽勝だと思っていたアヴィスにとって、この結果はかなり衝撃的だった。

 そんなアヴィスにシュウが声をかけた。


「まあ、初陣だってこと考えればしかたねぇが、前に戦った時も思ったんだけどお前のその武器何とかした方がいいぞ」

「武器をですか?」


 隊の指揮や能力の使い方について批判されると思っていたアヴィスは、シュウから思わぬ指摘を受けて戸惑った。


「ああ、今日見た感じだとお前の能力思ったより火力無いし、いきなり能力強くするのは無理だから手っ取り早く火力上げようと思ったら武器だろ」

「しかし私は召還した邪竜に指示を出すためにある程度後ろにいる必要があるので、飛び道具を使うしかありません。今の飛び道具で火力を上げようと思ったらかなり大型になってしまうので……」


 アヴィスの召還した邪竜もどきは自律行動が一切できないので、アヴィスが状況を判断して随時命令を出す必要があった。

 武器の重さは魔力で強化した腕力でどうにかなるが、武器の大きさに関しては戦闘中に激しく動くとなるとどうしても限界があった。


 かといってアヴィスの能力はレイナの様な戦闘スタイルが取れる類のものではない。

 どうしたものかと悩んだシュウだったが、クオンから聞いたある装備のことを思い出してそれをアヴィスに伝えた。


「確かレイナの障壁再現した装備があるんだよな?それ隊員たちに装備させたらどうだ?」


 こう言ってシュウがクオンに視線を向けると、クオンがシュウの説明を補足した。


「一応その装備は完成してるけど燃費がすごく悪い。能力者一人の魔力だと十秒しか持たない。電池の分足しても二十秒ぐらいだからあんまり意味無いと思う」

「いや、十分だろ。それを十個も持っていけば二分以上稼げるから、後はこいつがAランクどれだけ早く倒せるかって話になる。どうだ?このやり方ならAランクは無理でもBランクとの戦いなら隊員の被害それなりに減らせると思うぜ?まあ、費用に関しては相当自腹切ることになるだろうけどな」


 クオンの説明を引き継ぐ形でシュウがした提案を聞き、アヴィスは少し考えた後で口を開いた。


「はい。お二人の言う通り私自身も含めて隊の装備に関しては帰ったらさっそく考えてみようと思います」

「うん。第二班には話しとくから考えがまとまったらいつでも来て」

「ありがとうございます」


 こうして邪竜の動きの変化とアヴィスの今後の戦い方について話した三人は、その後それぞれの率いる隊と合流してアイギスに帰った。

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