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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
2章

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解決

「早くどけ!このガキを殺すぞ!」


 治安維持局局員たちは泣き叫ぶ少女を盾にして逃げようとする『メリクリウス』の構成員数人を前にして手を出せずにいた。


「動くんじゃねぇ!そっから一歩でも動いたこのガキを殺すぞ!」


 治安維持局局員の一人が一歩足を進めただけで少女の首に刃物を突き付ける相手を治安維持局局員たちは黙って見ていることしかできなかった。

 そんな彼らの様子を見ながら『メリクリウス』の構成員たちは全く警戒を緩めることなくその場を離れようとした。


 数人で死角を消しながら移動しているため、彼らが不意を突かれる心配は無かった。

 こうなった以上『メリクリウス』は終わりだが、組織と運命を共にする気は彼らには無かった。何とかこの場を切り抜けてほとぼりが冷めるまで身を隠そう。

 この場の『メリクリウス』の構成員全員がそう考えていた中、彼らに声をかける者がいた。


「よお、ずいぶん楽しそうじゃねぇか。俺も仲間に入れてくれよ」


 声がした方に治安維持局・『メリクリウス』双方の者が視線を向け、それぞれ驚きの表情を浮かべた。

 そんな彼らの視線を一身に受けながらシュウは足を進め、『メリクリウス』の構成員たちのもとに向かった。


「ち、違う。ほら、ガキは返すから許してくれ」


 子供を捕えていた男は、シュウが近づくなり人質の少女を盾にするどころか自発的に解放した。

それを見たシュウは苦笑しながら男に話しかけた。


「オーケー、少しでもふざけたこと言ったらアウトだったけど、ガキ離すのが早かったから今回はノーカンにしてやるよ」


 シュウのこの発言を聞き、男たちは明らかに安堵した様子を見せた。

 並の治安維持局局員より犯罪の場に遭遇することが多いシュウは、犯罪者に人質を取られることも数多くあった。


 そういった場合のシュウの対応は一貫しており、人質を取った相手との交渉は一切せずに相手を破壊することにしていた。

 腕や脚、目や耳といった壊しても死なない箇所全てを破壊し、その後生きたまま解放するのだ。


 シュウのこの対応はシュウが相手と初対面かどうかは関係無いので、シュウの前で人質を取ろうとする犯罪者は今のアイギスにはいなかった。

 ちなみにシュウは、シュウのこの対応が知られるまでの間に三人の人間を見殺しにしていた。


「お前ら初めて見る顔だが、どうする?戦うか?」


 まるで気負った様子を見せずにこう尋ねたシュウを見て、『メリクリウス』の構成員たちは大人しく投降した。

 その後解放された少女と共にシュウがミザーナのところに行くと、少女がミザーナの後ろにいた少女を見て駆け出した。


「お姉ちゃん!」


 そう言って駆け出した少女は、姉らしき少女と再会を喜びながら手を取り合っていた。

 先程投降した男たちが全員捕縛された様子を見たシュウは、自分の仕事は終わったと判断してミザーナに声をかけた。


「じゃあ、俺もう行くから、後はいいようにしといてくれ」

「はい。今日は本当にありがとうございました。今局長が向かってるそうですけど……」


 会見を終えたばかりのアヤネは、今大急ぎでこちらに向かっているところだった。

 しかしシュウにそれを待つ義理は無かった。


「別に用もねぇし、俺帰るぞ。あ、でも部下の指導はちゃんとしとけって言っとけ。幹部相手ならまだしも、そこらの雑魚にガキ奪われやがって」

「すいません。今日は本当にご迷惑ばかりおかけして……」

「まったくだ。あの連中がやけ起こしてたらあのガキ死んでたぞ。まあ、いいや。報告書そっち書いてくれりゃ文句はねぇよ。じゃあな」


 そう言って立ち去ろうとしたシュウに先程再会した姉妹の姉が声をかけてきた。


「あ、あの……」

「あ?何か用か?」


 少女に声をかけられるとは思っていなかったシュウが少女に視線を向けると、少女はわずかに怯えた表情を見せたがそのままシュウに話しかけた。


「今日は助けてくれてありがとうございました」

「……ああ、気にするな。知り合いのばあさんにいいように使われただけで、別にお前らのためにやったわけじゃねぇから」


 少女の礼に対してぞんざいな返事をしたシュウだったが、なおも少女はシュウに話しかけた。


「名前を教えてもらってもいいですか?今日のことは私も妹もずっと覚えてると思います。だから……」


 少女に名前を聞かれたシュウはしばらく考え込んだ。

 今回シュウが『メリクリウス』と戦ったのが少女たちのためではないというのは別に照れ隠しでも何でもない。

そのためシュウとしては今後目の前の少女たちと関わる気は無く、名乗る必要性も感じなかった。


 しかし仮にシュウが名乗らなくてもミザーナが教えるだろうし、少女が変にシュウに興味を持っても困る。

 そう考えたシュウは少女に自分の名前を伝えた。


「序列九位、じゃなかった十位の隊長、シュウだ。でももう会うことも無いだろうし覚えなくていいぞ」


 シュウの少女に対するあまりにぞんざいな態度にミザーナが口を開こうとしたが、シュウの話はまだ終わっていなかった。


「お前が少しでも俺に感謝してるなら、もう俺に関わらなくてすむような平和な人生を送ってくれ。そうじゃないと助けた意味が無いからな。……多分お前は自分が不幸だと思ってるんだろうし、実際今のお前の状況は下から数えた方が早い」


 シュウの発言を聞き少女の表情がこわばったが、シュウは構わずに話を続けた。


「でも死ぬ前に助けられただけお前らはまだ恵まれた方だ。今が最低な分、後は人並みにがんばるだけでましになっていくから、妹のためにも精々がんばりな。そこのねぇちゃんたちもいいようにしてくれると思うからよ」

「はい!」


 シュウの話が終わると少女が元気よく返事をしたが、シュウはそれには答えずにその場を離れた。

 自分が暴れた結果、どこかの誰かが助かる。

 子供の頃から何度も経験したことだったので、今日のチャルチィやロンとの戦いも少女からの感謝もシュウにとっては何ら特別なものではなかった。

 すでに本部に帰ってからの予定を考えていたシュウの背中を一人の少女が見ていたが、シュウはそれに気づくことなくその場を離れた。


 シュウが『メリクリウス』との戦いを終えて現場を離れた頃、会見を終えた局長たちの内、アヤネを除いた三人はシンラの部屋に集まり今日の会見の感想を話していた。


「毎度のことですけどロイヤルアイギスの記者は、今回も面倒でしたね」

「ですが質問の内容自体はどれも予想通りでしたし、今回はそれ程問題は起こらないと思います」


 疲れた表情で先程の会見の感想を口にしたレイナをシンラがなぐさめた。

 ロイヤルアイギスというのはアイギスに三つある大手新聞社の一つで、その名の通り王族寄りの新聞だ。


 紙面に空きさえあれば機構への批判を行っており、ロイヤルアイギスの新聞は機構の関係者からは日付け以外は信用ならない上に値段だけは高いというカレンダー以下の評価を受けていた。

 今回も先月の邪竜との戦いで大きく被害が出たことを指摘し、何度もシンラに判断ミスを認めさせようとしてきた。


「あの銃の開発はどうなっていますか?」


 シンラは先程の会見の様子を思い出しながらクオンにとある装備の開発状況を尋ねた。

 この武器はもちろん邪竜退治用の武器ではあったが、それ以上にロイヤルアイギスを始めとする機構に批判的な報道機関を黙らせるためという側面を持った武器だった。

 邪竜との戦いの前提を変えるその武器だったが、頼んだシンラですら無理だろうと思った武器だけに開発は難航していた。


「とりあえずシュウで実験してますけど、まだ実戦で使うには不安な点が多いですね。とりあえず発表だけするっていうのはどうですか?どうせ志願者なんて出ないと思いますし」

「いえ、実際に志願者が出た場合、面倒なことになるので止めておきましょう。……かなりの無理を言っているのは分かっていますが、私が引退する前に少しでも機構への批判を少なくしておきたいのです。私のわがままに付き合わせてしまいすみません」

「局長が辞めたら誰がやるにしろ次の序列一位は苦労すると思うので、今の内に準備しておくのは当然だと思います。だからわがままだなんて思ってません。それに私はもちろん部下たちも今までと違うコンセプトの武器の開発には燃えてますから」

「そう言ってもらえると助かります」


 シンラ以外の隊長は次の年長者が三十四歳のリンドウで、その他は二十歳前後の者しかいない。

 そのためシンラ引退後の対外的なやり取りに関してはほとんどの隊長が不安を持っており、特に子供どころか自分の孫と同世代の同僚たちを残して辞めることになるシンラはその思いが強かった。


「ミアさんを序列一位にして局長が院政を企んでるなんて的外れなこと言っている内はまだ笑い話ですむんですけど、さすがに邪竜との戦いで隊員に被害が出たことまで批判されると不快ですしね」


 レイナも機構に入って六年になるので、さすがに他の隊で犠牲が出る度に心を痛めるということはない。

しかし他の隊長たちが各自がんばっているのを知っているレイナとしては、隊員たちの犠牲を批判の道具としか考えていない連中には怒りを覚えた。


「失礼なことはあちらも分かっているでしょう。ロイヤルアイギスに対する批判も最近はよく聞きますし。相手が失礼な質問ばかりしてくるのは相手が困っている証拠です。ロイヤルアイギスが何を言ってきても私たちが負けることはないのですから、我慢しましょう」


 自殺志願者でもない限り、どれだけ機構を批判しようが機構の不要論まで口にする者はいない。

邪竜退治だけでなく警察の手には負えない犯罪者の逮捕まで行っている機構の立場はかなり強い。

 実際に犯罪者へのあまりに過激な対応が原因でシュウが退職に追いやられた時も、結局は二ヶ月もかからずに復職できた。

 しかし邪竜の相手だけで手一杯なので、人間の相手までしていられないというのがシンラを始めとするほとんどの隊長たちの考えだった。


「今日のシュウさんの件で多分明日から大変だと思いますけど、がんばって下さい」

「……まあ、アヤネと一緒にがんばります。今回の件では『メリクリウス』から子供を買っていた人間のリストも手に入ったらしいので、機構ばかりに批判が来るということもないと思いますし」


 シンラから励ましの言葉を受けたレイナは、先程治安維持局から伝えられた情報をシンラに伝えて心配しないように告げた。

 その後話題は『レギオン』に預けられたミアについてとなり、その後三人はしばらく話を続けた。

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