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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
2章

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質問

「さっき街の連中を軟弱って言ってたけど、俺からすればお前らも街のモブ共もどっちも雑魚だ。お前らが暴れた場合取り押さえる力持ってない街の連中と街で働く伝手が無いお前らをどっちも持ってる俺たちが助けてやろうって言ってるんだ。お前らが何が不満なのかが分からない」


 本当に不思議そうな表情をするシュウを見て、チャルチィは気圧されそうになる自分を必死に鼓舞した。


「……もう無理よ。あんたを殺そうとして死んでいった部下が何人もいる。私だけ生き延びるなんてありえないわ」


 そう言うとチャルチィは後ろの二つの巨大な容器に用意していた水で竜を創り、攻撃態勢を取った。

 今まで何度も見てきた『自分は信念を貫いたから悔いは無い』という表情をするチャルチィを見て、シュウはこれ以上話しても無駄だと悟った。

 殺す側のことなど一切考えていないその身勝手な表情を見たシュウは、チャルチィのお望み通りこの場を終わらせることにした。


「あっそ、じゃあ、もういいや。……無様に死ね」


 そう言うとシュウはまだ名前すらない魔力の鎧を発動した。


「な!…それはコウガの」


 シュウが『雷帝の鎧』の様な技を使ったことでチャルチィを含む『メリクリウス』の面々に隙ができた。

アヴィスとの戦いで『鎧』を使った時は体中に傷を作ったシュウだが、『鎧』発動中に姿勢を変えなければ体が傷つくことはない。


 今回シュウが『鎧』を発動した目的はチャルチィの水球の束縛から逃れるためだったので、特に体を動かす必要は無かった。

シュウの足を捕えていたチャルチィの水球は、シュウの魔力が流し込まれたことでわずか数秒で形を保てなくなった。


 難無く自由の身となったシュウは一瞬『鎧』を解除し、一気にチャルチィ目掛けて踏み込むと再び『鎧』を発動した。

 その後姿勢を保ったままシュウは弾丸の様にチャルチィ目掛けて突撃した。


 チャルチィは戦闘中は常に自分の周囲に水蒸気の結界を張っており、この水蒸気の結界でアヤネの『時間加速』による不意打ちすら何度も防いできた。

 しかし『鎧』発動中のシュウにとってはチャルチィの水蒸気の結界など無いも同然で、シュウが踏み込んだ次の瞬間にはシュウの腕はチャルチィの胸を貫いていた。


 驚きの表情と共に絶命したチャルチィの死体から手を抜いたシュウは、そのままチャルチィの足首をつかみ持ち上げると能力を発動した。

 シュウが能力を発動しながらチャルチィの死体を振るうと、チャルチィの死体はすぐに原形を失い男たちに降り注いだ。


「ひっ……」


 自分たちにとって圧倒的強者だったチャルチィがあっけなく殺された上にその死体が自分たちに降り注いだ結果、残された男たちの心は完全に折れた。

 そもそもアヤネやリク、ヴェーダと互角に渡り合う程度の力しか持っていない者がシュウと戦えばこうなるのは当然で、シュウとしては毎度のことながら自殺に巻き込まれていい迷惑だった。

 その後シュウは用意されていた水で血まみれになった右腕を洗い、以前見逃した覚えがある二人を殺してから残った男たちに声をかけた。


「どうする?お前らが買ったガキ閉じ込めてる場所教えるなら、見逃してやるぜ?それともさっきの女みたいに仲間に義理立てして俺に殺されるか?さっきも言ったけど俺は他に二ヶ所お前らの拠点を知ってる。お前らの情報はあれば便利ぐらいの意味しか無いぞ」


 そうシュウに言われた後、しばらく互いに視線を向け合った男たちだったが、やがて一人の男が口を開いた。


「子供たちを閉じ込めている場所は幹部しか知らないんです。だからチャルチィ様が死んでしまったので……」


 そう言って目を伏せた男に対し、シュウは男の右脚の骨をへし折った。

 突然のシュウの攻撃に驚き、わめきながら自分の右脚に手を伸ばした男に目もくれずシュウは他の男たちに視線を向けた。


「幹部がわざわざ自分たちでガキの面倒見てるってのか?次に嘘ついたら首をへし折る。首は一本しかないから答えは慎重にな。信じるかどうかは勝手だけど、俺相手が嘘ついたら勘で分かるからな」


 シュウのこの発言を受け、男の一人が子供たちの居場所を口にした。

 この発言に嘘はないと判断したシュウは、男たち全員を気絶させてからその場を離れた。


 シュウが建物を出ると、そこにはアヤネの副官、ミザーナと『パニッシュメント』の隊員二十名の姿があった。


「あれ?大砲女、来るの早かったな。全部終わらせてから呼ぼうと思ってたんだけど」


 予想以上に早く治安維持局の人間が来たことに驚いたシュウにミザーナが事情を説明した。


「シュウ隊長が子供を預けた『リブラ』の隊員から連絡があって、それで急いで駆けつけました。会見が無ければアヤネ隊長が来たと思います」

「別にお前らも来なくてよかったけどな。俺が後三ヶ所潰すからそれまで大人しくしてろ」

「『メリクリウス』の拠点を四ヶ所も……。どうやって拠点の場所を知ったんですか?」


 シュウと違い治安維持局は組織で情報を集めている。そして大きな声では言えないが微罪を犯した者との裏取引などで犯罪者についての情報もそれなりに集めている。

 それにも関わらずシュウ個人に情報の面で上をいかれたため、ミザーナは疑問を抱かずにはいられなかった。

 そんなミザーナの質問にシュウは軽い口調で答えた。


「俺は地域密着型の隊長目指してるからな。色々噂も耳に入ってくるんだよ。お前ら、好感度が足りてないんじゃねぇの?」

「好感度ですか……。シュウ隊長の情報提供者を教えていただくわけにはいきませんか?」

「わりぃけど無理。内容が内容だからな。自分が話したってこと秘密にしてくれって奴がほとんどだし。俺じゃなくてお前らに相談しようって思われるように精々がんばりな」

「分かりました……」


 ミザーナはシュウの説明に完全に納得したわけではなかったが、それでも情報提供者の身元を気軽に口外できないというのは納得するしかなかったのでこの場は引き下がることにした。

 もっともシュウの情報収集の方法にはかなり特殊なものも含まれているので、仮にシュウが正直に話しても治安維持局にはまねできなかっただろう。


「これから残りの三ヶ所にも向かうのですか?」

「そう何度も呼ばれても困るしな。幹部後二人残ってるんだろ?そいつら二人があの水使いの女と互角だとしたら、お前らに任せたら死人が出るだろうし。リクとヴェーダに悪い事したな」


 今日リクとヴェーダは休暇をとって実家に帰っているので、夕方のニュースで今回の顛末を知り罪悪感を抱くだろう。

 これに関しては間の悪いタイミングでシュウを呼んだヘルガを恨んでもらうしかなかった。


「水使い、もしかしてチャルチィを倒したんですか?」

「ああ、さっき殺したばっかだ。ただし死体は残ってないけどな」

「……残りの構成員たちはどうしましたか?」


 チャルチィは自分たちの上司である隊長三人が幾度も取り逃がした相手だ。

 そのためやり過ぎだと思ったもののミザーナは何も言わなかったが、さすがにシュウなら余裕で無力化できるはずの構成員たちまで皆殺しにしたと言われるとミザーナとしても反応に困る。

 そんなミザーナの考えを知る由も無く、シュウは淡々と自分が先程まで暴れていた建物の中の状況を説明した。


「中には二十人ぐらいいたかな。殺したのは水使いの女入れて七人だ。後は生きてるからお前らでいいようにしといてくれ」

「……結構生きてるんですね」

「俺のこと何だと思ってるんだ。やり直す気が無い馬鹿はともかく、そうほいほい殺したりしねぇよ。それと死体片づける奴には謝っといてくれ。部屋の中、かなりスプラッタなことになってるから。刀持って来てりゃもっときれいに脅せたんだけどな」


 ミザーナの反応に苦笑しながら言い訳しつつ、シュウは今後の自分の予定を伝えた。


「とりあえず俺が残りの幹部二人始末するまでは大人しくしとけ。お前らも死にたくないだろ?」

「シュウ隊長が向かうつもりの拠点の場所だけ教えて下さい」


 シュウから襲撃予定の場所を聞いたミザーナは、地図を取り出してシュウにある提案をした。


「シュウ隊長が聞き出した子供たちが閉じ込められている場所、ここには今幹部の一人、ロンがいます。もう一人の幹部、トラースは比較的大人しい人物なので、このロンさえ捕まえることができれば後は私たちでもどうにかなると思います」

「別にやらなくていいって言うならそれでもいいけど、大人しいっていっても他の連中よりはましってだけだろ?そいつが暴れてから呼ばれるぐらいなら、最初から俺が出た方が楽なんだけど」


 シュウも別に積極的に『メリクリウス』に関わりたいわけではないので、ミザーナたちが後は引き受けるというのならできれば帰りたい。

 しかし先程戦ったチャルチィの強さを考えると、シュウとしてはチャルチィと同等の強さを持つ能力者の相手をミザーナたちに任せるわけにはいかなかった。


 先程シュウがチャルチィの胸を貫いた時、シュウの攻撃はわずかながら心臓から外れてしまった。間に合わないながらもチャルチィが回避行動を取ったためで、他の幹部たちもチャルチィ並の能力の練度と身のこなしを兼ね備えているとなるとミザーナたちには荷が重いとシュウは考えていた。

 しかしミザーナの次の発言を聞き、シュウもトラースと戦うのはあきらめるしかなかった。


「ここ一週間トラースの姿は確認されていないんです。だから今日中にトラースと戦うのは無理だと思いますよ?」


 今日まで生存が確認されていた『メリクリウス』の幹部三人、そして本人には伝えていないがシュウの所在把握は治安維持局において最重要事項だった。

妖精女王ティターニア』も要注意人物ではあるのだが、これまでに彼女を捕まえに行ったアヤネ、リク、ヴェーダの三人全てが逮捕に失敗したため治安維持局も彼女への対応は慎重にならざるを得なかった。


 もちろん治安維持局も留置所や民間人への襲撃など数々の犯罪を行ってきた『妖精女王』を放置していたわけではない。

 シュウに頼み捕まえてもらったのだが、三度シュウに捕まった『妖精女王』は三度とも施設から逃げ出した。

『妖精女王』の三回目の逃走を許した時点でシュウが付き合い切れないと言ってきたため、現在『妖精女王』に関しては放置というのが治安維持局の方針だった。


「ふーん。ま、その珍獣野郎が義理堅い奴なら俺が念動力使い捕まえれば、復讐に来るだろうからそこ捕まえりゃいいか」


『メリクリウス』の幹部は悪い意味とはいえ有名人だったので、シュウは幹部全員の能力を知っていた。

 おそらく機構や警察に所属していない市民にも彼らの能力を知っている者は大勢いるだろう。


「ガキ共が捕まってるところ以外はお前らに任せるってことでいいんだな?」

「はい。今五つの部隊を用意しているところなので、他の三ヶ所は彼らに任せます」

「ってことはお前ら俺についてくる気か?」


 わずかながら面倒そうにしながらシュウがした質問をミザーナは肯定し、それを見たシュウはしばらく考えてから口を開いた。


「あっそ、じゃあ、俺がロンとかいう奴と雑魚ども蹴散らすから、後は頼むな」

「はい!」


 ミザーナの返事を聞いたシュウは、そのまま子供たちが捕らわれている場所へと向かった。


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