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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
2章

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指導

『フェンリル』の隊員相手への訓練が終わり、シュウは訓練の総括のために隊員たちを集めた。

 その隊員たちの横にはガドナーもいた。

 ガドナーが先程の訓練に参加していなかった理由は、シュウが『フェンリル』の隊員たちに行っている訓練の目的が隊員たちの強化だからだ。

 ガドナーの支援は便利過ぎるため、ガドナーはシュウが隊員たち相手に訓練を行う際は見学だけすることが決まっていた。


 また一人だけ強さが段違いのガドナーが訓練に参加するとシュウが加減をしにくいということも理由の一つだった。

 今も起き上がれずにいる隊員数名を除き、全員がシュウの前に集まるのを待ってからシュウは口を開いた。


「さてとまずは氷使い、お前は全体的によかった。ただあのでかい氷での攻撃、あれは超減点だ。多分俺がよけるか食らうかすると思ってやったんだろうし、実際いつもならそうしただろうな。でもこれ邪竜がしっぽで迎撃したらどうするつもりかと思ったんで、今日は能力使ってみた。結果はひどいもんだったけどな」


 シュウの呆れた表情を見て、ギオルは顔をしかめた。


「お前守るのにあいつが障壁使ったせいで、それからの戦いが大変になっちまったじゃねぇか。あれ多分お前の切り札なんだろうけど、使った後動けなくなるような技ほいほい使うな。ターン制のゲームやってるんじゃねぇんだから、相手からしたらいい的だぞ」


 シュウは読み書きをゲームや漫画で覚えたため、会話でそれらの関連用語を多用する。

 付き合いの長い『フェンリル』の隊員たちは、さすがに全部ではないがシュウの口にする用語はある程度は理解することができた。


「……すみませんでした」


 シュウの指摘を受けて頭を下げたギオルを見て、しばらく考えてからシュウは自分の考えを伝えた。


「お前が調子に乗る気持ちは分かる。うちの隊員の強さの平均が五、リンドウのおっさんが百だとしたら、お前二十五ぐらいはあるからな。でも俺がお前にやって欲しいのは隊のエースで、別に俺たち隊長みたいに一人で無双して欲しいわけじゃねぇんだよ。この前の戦いの記録見たぜ?」


 シュウがわざわざ自分の戦いの映像を見ていたことに驚いたギオルを前にシュウは発言を続けた。


「自分氷漬けにして邪竜の炎防いだ判断といい、お前は十分強い。多分死力尽くせばAランク一体ぐらいなら一人で倒せるだろう。でも毎回毎回死力尽くしてたら、命がいくつあっても足りないだろ?身の程をわきまえて行動しろ。お前のあのでかい氷の塊だって、他の奴らとの連携次第ならAランク相手でも有効だと思うしな。お前にはかなり期待してる。俺はつまらないお世辞なんて言わない。精々頑張れ」

「はい!ありがとうございます!」


 シュウに褒められて嬉しそうにするギオルから視線を外し、シュウは先程転移能力を使い二人での連携を行っていた隊員たちに声をかけた。


「お前ら二人の連携自体は悪くなかった。でも気づいてたか?周りの連中、超やりにくそうにしてたぞ?」


 シュウに指摘された二人が周囲の隊員たちに視線を向けると、他の隊員たちはばつが悪そうに顔をそむけた。実際二人がパートナーとの連携にばかり意識を向けていたことが原因で他の隊員たちとの連携がうまくいかず、先程シュウに踏まれた隊員への周囲の隊員の支援が遅れた。

 そのことを指摘した自分の発言で室内の空気が気まずくなったことを気にせずにシュウは話を続けた。


「これに関してはお前らも言えよ。まさかあのレベルの連携今日いきなりしてきたわけじゃねぇだろ?」


 こう言ったシュウが周囲の隊員たちに視線を向けると、他の隊員たちは再びばつが悪そうな表情をした。

 そんな隊員たちをよそにシュウはガドナーに話しかけた。


「そもそもこれはガドナーが気づかないと駄目だろ。気づかなかったのか?」

「すみません。隊全体がぎこちないとは思っていたのですが原因までは…」


 他の隊と比べて隊員数が少ないとはいえ、それでも『フェンリル』の隊員数はミアを除いても六十八人だ。

 それだけの隊員を同時に相手取り、それと同時に隊員一人一人に目を配るなどガドナーでも無理だった。


「…そうか。ある程度強い奴ならできることだと思ってたんだけど、お前ができないとなると大抵の奴はできないと考えた方がいいな」


 ガドナーの発言を聞き、しばらく考え込んだ後でシュウは隊員たちに自分のアイデアを伝えた。


「無理にとは言わねぇが、一度隊で集まって訓練の様子記録した映像見てみたらどうだ?さっき氷使いにも言ったけど、お前ら一人一人でできることなんてたかが知れてるわけだし。あ、そうだ。言うの忘れてた。お前ら二人、連携そのものは悪くなかったし、方向性も間違ってはいない。とりあえず連携しながら周囲に気を配れるようになるまではできるだけ外側で戦うようにしろ。それだけで大分違うだろ。さっきのお前らはかなりうざかったから、その調子でがんばってくれ。それはそれとして罰は受けてもらうけどな」


 シュウのこの発言を受け、先程床に倒れているところをシュウに踏まれた隊員は無言でうなずいた。

 シュウとの訓練中に床に倒れた『フェンリル』の隊員がシュウに踏まれた場合、その隊員は『死亡』扱いとなりある罰を受けることになっていた。

 訓練室に用意された隊員たちの間で『安置所』と呼ばれている場所で二十四時間過ごすのだ。


 トイレ以外での外出は認められず、次の日の同僚たちの訓練の様子も黙って見ているしかない。

 他の隊員からの差し入れも禁止されているので刑務所と大差無い環境となっていた。

 シュウの的確な手加減によりこの罰を受ける隊員は多くても月に二人程のため、この『安置所』送りは『フェンリル』の隊員たちの気を程よく引き締める役割を果たしていた。

 その後もシュウは訓練に参加した全ての隊員にそれぞれに応じた指摘をし、その後今日の訓練についての総括を口にした。


「今日はお前ら全体的にうざかった。あ、これ褒めてるんだからな。前から考えてたんだけどそろそろもう一段階訓練の内容上げてもいいかもな。……本当はいきなりしたいところだがあらかじめ教えといてやる。今使ってる鎖以外に二種類武器を使って、それでお前らの訓練をするつもりだ。どんな武器かは当日のお楽しみってことで。よし、じゃあ解散」


 シュウがそう告げると隊員たちは退室を始め、ガドナーは見学していた二十名と何やら話していた。

 そんな中アヴィスがシュウに近づいてきた。


「お疲れ様でした。各隊員への的確なアドバイス。さすがですね」

「最低限の仕事はしないとリンシャがうるせぇからな。それに部下の能力が高けりゃその分楽できるし」

「なるほど。部下の指導で何か気をつけていることはありますか?」


 シュウの発言の後半部分には触れずに会話を続けたアヴィスの質問を受け、シュウはしばらく考え込んでから口を開いた。


「指導っていうか戦いに関しては、俺大体フィーリングでやってるから言葉でうまく言えないんだよな。何ていうか、できないこと練習させてもしかたねぇからできること伸ばす、みたいな?俺やコウガみたいな全パラメータA以上のキャラそうほいほいいねぇから、特化型ユニットそろえてたくさんパーティ組ませるしかねぇし」

「なるほど。ありがとうございました」


 アヤネがからかい半分で伝えた『シュウは古代の資料に触れる機会が多いので専門用語を多用する』という発言をアヴィスは真に受けていた。

 そのためアヴィスはシュウの発言の理解できなかったところは流し、参考になりそうなところだけ聞き入れることにした。


「後はガドナーと話していいようにしてくれ。じゃ」


 アヴィスに別れを告げて訓練室を後にしたシュウだったが、訓練室を出てすぐに出入口で待っていたリンシャに捕まった。


「あれ?狙撃手になりたい連中の指導で忙しいんじゃなかったのか?」


 元々リンシャは『フェンリル』の部隊訓練には参加せず、午前中は本来シュウがするべき書類仕事を行っている。

 今日訓練に顔を出したのはアヴィスとフウカ相手にシュウが問題を起こさないかと不安だったからだ。


 しかもここ数日のリンシャは、各隊から集まった狙撃手志望の隊員の指導を行っているとシュウは聞いていた。

 そのため忙しい中こんなところで何をしているのかと不思議に思っていたシュウの前でリンシャがため息をついた。


「彼らの指導に関してはもう終わりました。正直言って見込み薄ですけど」


 現在狙撃手として戦闘に参加している討伐局局員は、リンシャ一人しかいない。

 そのため狙撃手志望の討伐局局員たちへの指導を行おうと思ったらリンシャがするしかなかった。

 あまり大勢は指導できないのでとりあえず十人で始めようという話になったのだが、定員を遥かに超える百人以上の希望者が出た。


 これが前線で戦いたくないという討伐局局員の気持ちの表れなことは明白だったが、数が多いので中止というわけにもいかなかったのでとりあえず抽選で十人を選び指導を始めた。

 といっても狙撃に関しては、リンシャもやってみたらできたという感じだったので説明らしいことはあまりできなかった。


 とりあえず前日に考えたもっともらしい説明だけを伝え、一ヶ月以内に二百メートル先から指定した範囲内に弾丸を安定して当てられるようにならなかったら不合格ということになった。

 シュウに質問されたため答えたリンシャだったが、リンシャの用件は別にあったためリンシャはさっそく用件を切り出した。


「隊の予算のことで相談があります」

「ああ、何だ?金が足りなくなったか?」


 シュウは隊の予算管理についてもリンシャに丸投げしており、実際事務局や研究局への大抵の申請はリンシャが行う。

 しかし武器の発注などはリンシャでは分からないこともあり、その場合はシュウに直接聞くしかなかった。


「はい。予算が今のペースだと十月ぐらいでなくなりそうです。これはシュウ隊長がさらに三百万うちに寄付するという前提での話です」

「うーん。ちょっと待てよ」


 リンシャの無茶な発言を気にもせずにシュウは金の算段を始めた。


「あれがああなるわけだから、……二百万はいけるか?……よし来月までに二百万は何とかする。そのつもりで計画考え直してくれ」

「私から聞いといて何ですけど、犯罪なんてしないで下さいね」

「信用ねぇな。金のために犯罪なんてするかよ。清く正しくが俺のモットーだぜ?」

「そうですか……」


 とても信用できない笑みを浮かべるシュウを見て、リンシャは深いため息をついたが結局は何も言わなかった。

 外周部で新聞沙汰を起こす度に大金を手に入れてくるシュウだが、後でアヤネやレイナから事情を聞けば倫理的にはともかく確かに法に触れることはしていなかったからだ。


 興行地区にあるカジノでの目撃情報もあったが、これも合法なのでシュウの金策に関してはとりあえず触れないというのがリンシャの方針だった。

 とりあえず今年中の予算も何とかなりそうだと安心したリンシャだったが、そこにシュウがある提案をしてきた。


「そういや俺もお前に用があるんだった。訓練用の武器を二つ作るつもりだ。その予算はこっちで何とかするから、書類だけ頼む」

「それは構いませんけど、武器って何作るつもりですか?」


 これまで何度かシュウから『フェンリル』相手の訓練の内容を変更するつもりだと聞いていたため、シュウの今回の提案自体はリンシャにとって想定内のものだった。

 しかし武器を変更するだけならシュウが自分の訓練用に機構本部裏の森に放置している多様な武器で事足りるはずだ。

 そのためリンシャはシュウにどんな武器を用意するつもりなのか尋ね、その後シュウの答えを聞いたリンシャはしばらく言葉を失った。


「ふざけてるんですか?それ武器でもなんでもないじゃないですか?」

「いやでも、ゲームの敵は割とこれ持ってる奴いるぞ?」

「へぇ、……まあ、刃物は刃物ですからね」


 シュウの説明を受けたリンシャは、半信半疑ながらも引き下がった。

 シュウの説明に完全に納得したわけではないリンシャだったが、訓練に関してはシュウはそれなりにまじめにやっているので口出しする必要は無いと考えたからだ。


「今日はこれから自分の訓練ですか?」


 用件が済んだリンシャが何気無くしたこの質問にシュウは面倒そうに口を開いた。


「あいにくだけど今日は知り合いに呼ばれててな。何をしたかは明日の新聞に載るだろうから、そっち読んでくれ」

「……程々にして下さいよ。今日レイナ隊長たち会見もあるんですから」

「さあ、それは相手次第だな。俺はいつも平和的に解決しようとしてるし」

「はー、レイナ隊長も気の毒に」


 どうしてよりにもよってこの日にと思いながらリンシャは、シュウの後始末に追われるだろうレイナに同情した。

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