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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
2章

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新人研修

 六月二日(火)

 シュウは眠そうな顔をしながら朝早くにミアを伴い『レギオン』に割り当てられた訓練室に向かっていた。


「ふー、緊張するわ」

「は?お前いつからそんな繊細になったんだ?」

「え、だってレイナ隊長って同性愛者なんでしょ?正直怖いわ」


 予想もしていなかったミアの発言を聞き、しばらく考え込んだ後でシュウは口を開いた。


「じゃあお前、俺と二人っきりになる度に襲われるかもって思ってるわけか?」

「いや、そういうわけじゃないけど…」

「じゃあレイナも心配する必要無いだろ?そもそもあいつ彼女いるし」

「…知ってるわよ」


 レイナは同居しているリマとの関係を別に隠していないので、レイナとリマの関係はアイギスでは広く知れ渡っている。

 そのためミアもリマのことは知っていたし、シュウの先程の発言で自分の抱いている気持ちがただの偏見であることには気づいていた。

 しかしレイナについてほとんど何も知らないミアは、漠然とした不安を抱いていた。

 そんなミアにシュウは安心するように伝えた。


「安心しろ。レイナそこまでお前に興味持ってないから。そもそも別にレイナと仲良くする必要も無いんだから、訓練が終わったら即行で帰ればいいだけだろ」

「まあ、そうね」

「訓練の心配自体はしてないなんて大した自信だな」


 小馬鹿にした様なシュウの表情を見て軽い怒りを覚えたミアだったが、ちょうどその時レイナの姿が目に入ったため結局何も言わなかった。


「よ、わざわざ来てやったぞ」

「まさかあんたが来るとは思ってなかったわ」


 皮肉でも何でもなくレイナはリンシャがミアを連れて来ると思っていた。

 そのためレイナはシュウが姿を現したことに驚いたのだが、そんなレイナにシュウが事情を説明した。


「いや、たまたま早く目が覚めて、食堂に飯食いに行ったらリンシャとばったり会って。それでちょうどいいからって仕事押し付けられた」

「あっそ」


 ここで押し付けるも何も元々これはシュウの仕事だなどと言う程レイナも暇ではない。

 さっさと話を終わらせることにした。


「この子がフウカ。その辺りの隊員よりは強いと思うから鍛えてあげて」

「確か幻術使いだったか?」


 レイナの紹介を聞いたシュウに視線を向けられ、フウカが緊張した様子でシュウに自己紹介をした。


「『レギオン』所属のフウカです!おっしゃる通り能力は幻術、使用武器は突撃槍ランスです!どうかよろしくお願いします!」


 緊張した様子のフウカを前にシュウは正直に自分の考えを告げた。


「そんなに気負わなくてもいいぞ。俺多分今日以外お前の面倒見ないし」


 シュウはこの後研修を受けに来るはずのアヴィスと戦った後、ついでに『フェンリル』への指導も行う予定だった。

 シュウの『フェンリル』相手の週一回の指導は、不定期で行われている。


 隊に緊張感を持たせるためというのが表向きの理由だったが、実のところはシュウが予定を決めて動くのが嫌なだけだった。

 今日のアヴィスの研修のために呼び出されただけでもシュウとしては面倒だったのだが、せっかくのなので面倒なことは一度に済ませようとシュウなりに前向きになっていた。


「でもそれだとシュウ隊長が大変なのでは?確かアヴィス隊長の研修も今日でしたよね?」


 新しく隊長になったアヴィスは、今討伐局の局員たちの間では頻繁に話題になっていた。

 そのためフウカも特に秘密というわけでもないアヴィスの今週の予定は知っており、シュウの働き過ぎを心配した。

 しかし当のシュウは余裕の笑みを浮かべるだけだった。


「お前と新入りの面倒見るぐらい余裕だろ。実際に俺と戦えば、どうして俺がこの性格でくびにならないのか理解できるさ」

「…分かりました。お手柔らかにお願いします」


 フウカとしては深い意味も無く常套句を言っただけだったのだが、シュウはそれを笑って否定した。


「あいにくだがそれは聞けないな。今日午後の予定が入ってたらあきらめな」


『フェンリル』の訓練について聞いた話を思い出し、フウカは無言でシュウにうなずいた。


「こいつの件はガドナーたちに任せるとして、お前、こいつに何か教えられるのか?」


 ミアがレイナのもとで研修を受けたとしても、正直ミアに得るものがあるとはシュウには思えなかった。

 ミアがレイナの戦闘スタイルを真似るのは不可能だからだ。

 そう考えてのシュウの発言を聞き、レイナが口を開いた。


「あんたの言いたいことは分かるわ。私も昨日シンラ局長に似た様なこと言ったもの。戦闘というより隊長としての気構えみたいなことを教えて欲しいみたいだったわ」

「ふーん。まあ、死なない限りは来年には隊長になってるだろうし、そういうのも大事か?じゃあ、隊長様に聞いときたいんだけど、隊長として座右の銘みたいなのあるか?」


 からかう様に質問してきたシュウを前に真面目に答えるか悩んだレイナだったが、ミアもいたため真面目に答えることにした。


「敵を知り己を知らば百戦危うからずよ」

「…いつも言ってるけど俺と話す時は偏差値下げてくれ」

「敵と自分のことちゃんと把握してれば何回戦っても負けないってことよ」


 レイナの説明を聞いても要領を得ていない様子のミアを横目にシュウは呆れた様子だった。


「そんなんの当たり前じゃねぇか。もっと名言っぽいのくれよ」

「戦う時の心構えなんだから当たり前のこと言うに決まってるじゃない。奇抜な策なんて隊員の命預かってる隊長が取るべきじゃないわ」

「ふーん。まあ、ごもっともで」


 反対する気は無いがつまらないと考えていることをみじんも隠そうとしないシュウを見て、レイナは小さくため息をついてから口を開いた。


「あんただって強くなるために何が必要かって聞かれたら才能って答えるでしょ?」


 シュウがこの質問を即答で肯定すると思っていたレイナだったが、シュウの答えはレイナの予想とは違うものだった。


「もちろん才能は大事だ。リンドウのおっさんがこれから先どれだけ修行しても、俺やコウガ並に強くなることはあり得ないからな。でも一番大事なこと挙げろって言われたら、そりゃ運だろ」

「運?」


 一度の失敗が死につながる戦場で運などに頼っていては命がいくつあっても足りない。

 そのため自分の強さと部下との連携という違いこそあれ、それぞれの武器を磨いて戦いでの不確定要素を極力少なくするという点ではシュウと自分は似ているとレイナは考えていた。

 そのためシュウの口から運という言葉が出てきたことにレイナは困惑した。

 そんなレイナをよそにシュウの発言は続いた。


「これ別に強さに限った話じゃねぇけど、生まれ持った才能をちゃんと発揮するためにはまず運が大前提だろ。俺とクオンの生まれが逆だったら、クオンは才能発揮するひまも無くすぐ死んで俺はそこそこ強い程度だっただろ?可能性の話すりゃ、俺やコウガ瞬殺できる才能持ってる奴が自分の才能に気づかないでどっかの事務所で電卓カタカタやってるかも知れねぇわけだし」

「それはそうね。『妖精女王ティターニア』みたいなのもいるわけだし」


 セツナと並び称される女犯罪者の名を挙げ、レイナは才能がどう開花するかは運次第というシュウの発言を肯定した。


「そもそも俺が目ぇつけなければ、リクとヴェーダ今もお前の隊でモブとして戦ってただろうしな。あいつらは俺という先輩に恵まれたから隊長になれたわけで、結局最後は運よ」


 しみじみとうなずくシュウを見て、若干呆れた顔をしながらレイナが口を開いた。


「思ったよりまともな話が聞けて嬉しかったわ。運次第で隊長クラスが見つかるなら、シンラ局長と進めてる外周部での人材探し、積極的に進める意味あるかもね」

「へぇ、そんなことしてたのか?でもそれなら急いだ方がいいぜ?俺今日外周部の知り合いに呼ばれてるんだけど、多分何人か死人が出ると思うし」


 死人が出るとシュウが発言した途端、ミアとフウカの表情がこわばったが、レイナはシュウの発言に臆することなく話を進めた。


「あんたの個人的なルールは知ってるけど、せめて後一回ぐらい説得する努力してみてくれない?強い能力者はいくらいても困らないから。それにあんたの理屈なら、運次第ではその人たちも何らかの才能発揮するかも知れないんでしょ?」

「りょーかい。馬鹿共相手の説得の時、気持ち頑張ってやるよ。でもあんま期待するなよ?俺と戦う奴って最初から死ぬ気で来る奴が多いから」


 同僚に変な期待を持たせないようにという配慮でシュウはこう言ったのだが、それに対するレイナの返事はそっけないものだった。


「駄目元で言ってみただけだからそれならそれで構わないわ。そもそもあんたと戦って大人しくならないようじゃ、どの道社会復帰は無理でしょ」

「はっ、違いねぇ」


 レイナの言う通り暴力の世界に身を置いておきながら、シュウの強さに屈服できない程学習能力が無い人間はもはや矯正不可能だろう。

 とはいえそれなら後は好きにしろと言ってしまう辺りにレイナの性格が表れており、それを聞いたシュウは面白そうに笑った。


「さてと俺はそろそろ行くぜ。こいつと新入り、それにうちの連中の相手までしないといけないからな」


 そう言うとシュウはフウカの返事も聞かずにその場を離れ、そんなシュウをフウカは慌てて追いかけた。


 そしてシュウとフウカが『フェンリル』に割り当てられた訓練室に着いてから三十分程経った頃、訓練室に『フェンリル』のメンバー、そしてアヴィスがそろった。

 アヴィスが『フェンリル』の隊員たちに簡単な挨拶をした後、シュウとアヴィスが隊員たちの前で戦うというのが当初の予定だったのだが、ここで問題が起きた。

 シュウがアヴィスとの戦いに興味を示さなかったのだ。


「何か実際会うと、まじで覇気ねぇな。これ俺が訓練つける必要無くね?」


 シュウもアヴィス本人を見るまではリンシャがうるさいので仕事と割り切ってアヴィスと戦うつもりだったが、実際にアヴィスを見てシュウが抱いた感想はむかつく優等生だった。

 特にシュウとの戦いを前にうまくこなしてみせるといった顔をしている辺りが癇に障り、その上アヴィスがガドナーより弱そうなこともありシュウのアヴィスに対する興味は急激に薄れた。

 そんなシュウの態度を見たアヴィスは、慌てた様子で口を開いた。


「私の態度が不愉快だったのなら謝ります。どうか一手ご指導をお願いします」

「ああ、そういうのいいから」


 アヴィスの言動の節々から嘘の気配を感じていたシュウは、アヴィスとの戦いを飛ばして次に予定されていたフウカとの戦いを始めようとしていた。

 そこにリンシャが口を挟んできた。


「シュウ隊長、仮にアヴィス隊長が弱かったとしても、隊長に選ばれた以上一定以上の力はあるはずです。後輩の指導も仕事の内ですよ。シュウ隊長の性格は分かっているはずのシンラ隊長があえて指導役にシュウ隊長を選んだ意味を考えて下さい。後、いっつも言ってますけど空気読んでくれませんか?」

「空気読めってまた難しいこと言うな。…まあ、しかたねぇか。世の中やる気と能力ある奴が損するようにできてるんだしな」


 リンシャに説得されたシュウは、面倒そうにしながらもアヴィスとの戦いを行うことにした。

 リンシャと長々と話すよりはアヴィスを瞬殺した方が早いと考えたからだ。


「隊の運営とかその辺りの話はガドナーやリンシャに聞いてくれ。シンラのじいさんも俺にその辺りは期待してないと思うから、俺のお前への指導は今からお前をぼこぼこにしてそれで終わりだ。前に出な」


 そう言って丸腰で部屋の中央に向かおうとするシュウにアヴィスが声をかけた。


「待って下さい。刀無しで私と戦うつもりですか?」


 アヴィスとしても他の隊長たちが口をそろえて強いと言うシュウとの戦い自体は望むところだった。しかしアヴィスも隊長に就任したばかりとはいえ、腕にはそれなりの自信がある。

 それにも関わらず丸腰で自分と戦おうとしているシュウを見て、先程のシュウの発言もありアヴィスは内心穏やかではなかった。

 そんなアヴィスの心情を知る由も無く、シュウは自分の考えを伝えた。


「だってお前、ここで戦うとなるとでかい邪竜召還するわけにもいかないだろ?お前だけハンデつけて戦おうとか調子乗るなよ」


 アヴィスは能力で邪竜に似た疑似生命体を創り出すことができ、数だけなら最大百二十体のCランクの邪竜もどきを、大きさだけならBランクの邪竜相当の疑似生命体を創り出すことができる。

 さすがに火までは吐けないが、短時間なら飛行も可能なこのBランクの邪竜もどきはアヴィスの切り札だった。


 しかしそんなものをここで創り出されたら訓練室の床が抜けてしまうため、この場ではアヴィスは全力を出すことができない。

 それを踏まえてのシュウの発言で、むしろ刀を使えと言われたシュウの方が不機嫌そうにしていた。


「安心しろ。俺は一番好きな武器が刀ってだけで何使っても強い。お前の相手ぐらいなら素手で十分だ」


 最初は『飛燕』を使おうともシュウは考えたのだが、典型的な中距離タイプのアヴィス相手にシュウが『飛燕』を使ったらあっという間に接近戦に持ち込めてしまう。

 そうなったら決着まで三十秒もかからないだろう。

 そう考えたシュウは素手で戦うことを決め、普段より相手との距離を取ってアヴィスと対峙した。


「五分耐えられたらお前の勝ちにしてやる。もちろん俺は全力は出さないから安心しろ。少しでも手ぇ抜いたら容赦しねぇからな」


 あまりに傲慢なシュウのこの発言を聞き、これまで困惑していたアヴィスも気持ちを切り替えたようだった。


「殺す気でやって構いませんか?」

「構うも何もそうしろって言ってる。もしかしてお前馬鹿なのか?」

「…始めましょう」


 これ以上シュウとの会話を続けたくなかったアヴィスは、武器の拳銃を両手に構えて戦いの始まりを待った。

 そして審判役のリンシャの合図で二人の戦いが始まった。

 一気にアヴィスとの距離を詰めようと駆け出したシュウだったが、戦いが始まったと同時にシュウとアヴィスの間に五十体程のCランクの邪竜もどきが現れた。


「おっ、話には聞いてたけどまじであっと言う間に創れるのな」


 突然目の前に現れた邪竜もどきを見てもシュウは動きを止めず、ただ楽しそうに笑いながら邪竜もどきの群れに殴り込んだ。

 目の前の邪竜もどきの耐久力はどんなものかと思いながらシュウが殴ると、邪竜もどきの顔面はあっけなく吹き飛んだ。


「ふーん。強さは本物と大差無いのか」


 その後数体邪竜もどきを打撃で倒したシュウは、すぐに自分を取り囲む邪竜もどきへの興味を失った。

 こうなったらアヴィス本人の強さに期待するしかないが、武器が拳銃の時点で望み薄だった。


 討伐局の局員が使う銃器は使用者の魔力を弾丸として撃ち出す仕様になっており、その威力は銃や大砲の大きさで決まる。

 局員の中には怪力や重力操作と併用して巨大な大砲を持ち歩く者もいるが、アヴィスの持つ銃はどう見ても一般の銃だった。


 この銃は込めた魔力の量で威力が上がるということはなく、隊長になるような能力者ならたとえ百発浴びても致命傷にはならない。

 そのためシュウからすればアヴィスは武器を何も持っていないのと同じで、これでよく丸腰のシュウを責めれたものだとシュウは呆れた。


 実際邪竜もどきと戦っているシュウの隙を突きアヴィスは何度かシュウに魔力の弾丸を叩き込んできたが、うっとうしい以上の効果はシュウには無かった。

 その後シュウが邪竜もどきを蹴散らし、アヴィスが位置を変えながらシュウに弾丸を打ち込むという光景が二分程繰り広げられた。


「おいおい、Bランクの邪竜もどき召還できないと、ここまで火力落ちるのかよ!この技の少なさ、Sランクと戦う時は致命的だぞ!」


 あえて防御に徹しているシュウに傷一つ負わせられないアヴィスのふがいなさにシュウは思わず声をあげてしまったが、それに対するアヴィスの返事はとげがあるものだった。


「そう言うシュウさんも私の邪竜の群れを突破できていないじゃないですか!そこまで言うなら刀無しでもその程度の群れ突破して欲しいものです!」


 アヴィスがそう言った途端、室内の空気が変わった。

 シュウとの付き合いが長い『フェンリル』の隊員たちは、シュウが挑発を受けて大人しくしている性格ではないことを理解していた。

 そのためアヴィスの挑発を受け、シュウが何かしでかすと確信したのだ。

 そして隊員たちの予感は見事に当たった。


「よーし分かった。一分間ここから動かないでいてやる。その間に俺をしとめてみろ。それができなければ、その後三十秒以内にお前をズタズタにしてやる。リンシャ、カウント頼む」


 そう言うとシュウは宣言通りにその場に棒立ちとなった。

 動かなくなったシュウを相手に邪竜もどきたちは噛みつき、引っかき、しっぽによる殴打など様々な攻撃を仕掛けたが、シュウには傷一つつかなかった。


 邪竜もどきたちに前線を任せていたアヴィスも遠くから魔力の弾丸をシュウに当てていたが、結局シュウにダメージを与えることはできなかった。

 しかしこれ自体はアヴィスも織り込み済みだった。


 元々アヴィスは戦闘のほとんどを邪竜もどきに任せるという戦闘スタイルをとっており、魔力の弾丸だけではBランクの邪竜を倒すのが精いっぱいだ。

 Aランクの邪竜もアヴィス単独で倒せなくはないが、一体倒すだけでもかなりの時間がかかるだろう。


 しかし実戦では能力抜きで戦わないといけない状況などほぼ無いため、能力抜きでの戦闘力の高さなど無意味な自慢に過ぎないとアヴィスは考えていた。

 そのため大した能力や技を使わずに得意気に邪竜もどきを蹴散らしているシュウをアヴィスは内心あざ笑ってすらおり、シュウが二度目の時間制限をした時は吹き出さないようにするのが大変だった。


 とはいえアヴィスもシュウに勝てると思う程思い上がってはいなかった。

 適当に戦って頃合いを見て負けるつもりだったのだが、シュウの方から時間制限を申し出てくれて助かった。

 アヴィスは戦闘スタイルの都合上戦闘中の時間稼ぎには自信があった。


 Bランクの邪竜もどきを召還できなくても、三十秒程度ならCランクの邪竜もどきの群れを壁にすれば簡単に稼げる。

 アヴィスはそう考えていた。


 一方のシュウはさすがにアヴィスの考えを事細かに読み取っていたわけではないが、アヴィスがシュウとの戦いを適当にこなそうとしていることだけは察していた。

 シュウも人の礼儀をどうこう言えるような素行ではないので、アヴィスがシュウになめた態度をとっていること自体は別に構わなかった。


 しかしこの程度の強さ、しかも隊長就任直後でこのやる気の無さは今後が心配になるのも事実だった。

 強くなるためには貪欲さは必要不可欠で、劣勢を覆すためには泥臭さも必要だ。


 しかし目の前の何でも器用にこなして見せますという顔をしている後輩からはそのどちらも感じなかった。

 そのためシュウは今後のことを考え、身の程知らずの後輩に切り札の一つを切ることにした。

 そしてリンシャが残り三十秒を宣言した瞬間、シュウは久々の使用となるある技を発動した。


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