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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
2章

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雑談

 クオンを抱えたまま機構本部四階のクオンの部屋の前まで来たシュウは、クオンを起こすことにした。


「おい、部屋に着いたぞ。いい加減起きろ」


 体を揺らされて目を開いたクオンだったが、緩慢な動きで首だけ動かすとそのまま部屋の中まで自分を運ぶようにシュウに頼んだ。


「ごめん。足に力が入らない。ソファーまで運んで」

「めんどくせぇな」


 シュウは文句を言いつつもクオンを抱えたまま各隊長室の扉に備え付けられた指紋認証システムに指をかざしてクオンの部屋に入った。

 この指紋認証システムにはそれぞれの部屋の持ち主が自由に指紋を登録でき、クオンは自分の他は両親とシュウ、そしてコウガの指紋を登録している。


 クオンの部屋に入ったシュウは、部屋に入ってすぐのところにあるソファーにクオンを放り込むとそのままテレビの前へと向かった。

 シュウが座り込んだ場所の周りにはゲームソフトや漫画が散乱し、シュウとクオンが座るスペース以外は足の踏み場が無かった。

 手慣れた様子で冷蔵庫からカフェオレと焼き菓子を取り出し、ここ最近二人で進めているゲームを始めたシュウにクオンが話しかけてきた。


「コウガが隊員が辞めたがって大変って言ってたけど、他の隊ってどんな感じなの?」

「ああ、そういやリクとヴェーダも大変そうにしてたな。俺のところは誰も死んでないし、辞めたいって言う奴もいないから特に何も困ってない。そう言うお前のとこはどうなんだよ?」

「私は隊のことはローグさんに任せてるから。ただ二十人ぐらい退職希望者がいるって言ってた」


 アイギスの防衛を担う討伐局局員にあまり気軽に辞められても困るので、それを防ぐために一月の契約更新以外の時期に討伐局を辞めた場合、辞めた隊員はその年の給料を全て返還するように義務付けられている。


 隊長・隊員を問わず給料は一月に一年分まとめて払われるため、もし今辞めたら五ヶ月間ただ働きしたのと同じ結果になってしまう。

 それでも辞めたいと思う程、先月の邪竜戦での被害が多くの隊員たちにとって衝撃的だったのだろう。


「ったく、どうせいざとなったら自分たちも戦わないといけないんだから、辞めても一緒だと思うけどな」

「でも今のところここ数年はアイギス自体は襲われてないから、討伐局を辞めさえすればって考えるのも分かる」

「ふーん。そんなもんか」


 シュウの言う通りアイギスが邪竜に襲われたら、討伐局の隊員かどうかなど関係無く嫌でも戦わなくてはならない。

 それなら人任せにせずに最初から自分で戦った方が気が楽だというのがシュウの考えだった。


 これは別にシュウだけの考えというわけではなく、コウガとガドナーもシュウ程戦いに積極的ではないが同様の考えを持っていた。

 しかしこの考えが少数派であることも事実だった。


「私もできれば辞めたいとはいつも思ってる。でもそうすると給料がもらえなくなるのが悩みどころ」


 クオンは隊長としての給料のほとんどを研究費に使っている。

 そのためクオンとしては隊長という立場は複雑なものだった。

 ちなみに個人的な資産を研究局のために使うことは、書類さえ書けば問題無かった。


 実際他の隊長たちもさすがに全部ではないが、年に数百万は自分の隊の装備費に使っていた。

 これは滅私奉公というよりは、高額の給料を使い切れないという側面と隊員たちの士気の高揚という目的があった。


「リンドウのおっさんのとこの天気操れるやつそこそこ強いんだったよな?何ならそいつ鍛えて、お前が辞められるようにしてやろうか?」

「…超悩むけど遠慮しとく。三千万は捨て難い」


 こういったクオンだったが、自分が隊長を辞めるために新しい隊長を育てるという考えもしなかったシュウの案に心惹かれたのも事実だった。

 その証拠にクオンはしばらく考え込んでいたが、シュウとしてはそこまで重要な話ではなかったのでこの話題を切り上げた。


「あっそ。ま、気が変わったらいつでも言ってくれ。確かあいつは隊長になろうとして失敗してたはずだから、俺が声かければいつでも乗ってくると思うし」

「分かった。よし、そろそろ私も参加する。今週中にCGコンプしよう」


 何とか動けるようになったクオンがシュウの隣に座り、何やら走り書きがされているメモを手に取った。


「おう。でも八ページ目の最後まじで条件分からねぇよな」

「考えたんだけど敗北条件にダレットの死亡が入ってないから、一回ダレット見捨ててみない?」

「その発想は無かった。……鬼か、お前は」

「使い捨てのモンスターたくさん用意すれば大丈夫でしょ。それより明日私忙しいんだけど、神獣の涙集め任せていい?」


 イベント発生のためにゲームのキャラを見捨てたことをシュウに批判されたクオンだったが、どこ吹く風でシュウにゲーム内の材料集めを頼んだ。


「ん?明日何かあるのか?」

「毎月やってる会見」


 機構は毎月二日に報道機関の人間や抽選で選ばれた市民を呼び、局長四人による会見を開いていた。クオンは研究局局長としてその会見に出席しなくてはならず、明日は朝からその準備で忙しかった。

 そのためクオンはシュウにこの様な頼みをしたのだが、明日はシュウにも予定があった。


「わりぃ。明日は俺も新入りの相手した後で知り合いに呼ばれてるから、顔出せねぇ」

「新入り?」

「お前が推薦した奴だよ」

「ああ、明日だったっけ?」


『フェンリル』の新しい隊員の話かと思ったクオンだったが、シュウにこう言われて自分が推薦した新しい隊長がシュウを含む三人の隊長の指導を受けることになっているという話を思い出した。

 しかし推薦したといってもあちらから推薦して欲しいと言われて推薦したため、クオンとしては元部下であるその隊長にそこまで興味が無かった。

 そのためクオンとしてはシュウの明日の予定に興味があった。


「また透明になる能力入れる?」


 シュウはかなり頻繁にクオンに透明化能力をいれてもらい外出している。

 言う間でも無く規則違反だったが、シュウもクオンもそんなことを気にする程繊細ではなかった。

 外出したシュウが何をしているのかはクオンも知らず、クオンが以前透明になって何をしているのか聞いたところ透明になってすることなんて悪事に決まってるとシュウは笑みを浮かべた。


 それを見たクオンはシュウにまともに説明する気が無いと判断し、それ以降シュウの外出についての詮索はしていない。

 そもそもシュウのことを信じていなければ最初から透明化能力を入れての外出の手助けなどしていないからだ。

 透明化能力自体は研究局の局員から抜き取ってものなので、シュウが望めばすぐにでも貸し出せた。しかし今回は必要無かった。


「今日はいらねぇ。外周部のまとめ役のばばあに呼ばれてて、多分馬鹿共相手に暴れることになるだろうから隠れる必要もねぇ」

「ふーん」


 荒事をするつもりなら透明になった方がいいのではとクオンは考えたが、犯罪者相手の立ち回り方となるとシュウの方が何枚も上手なのでクオンは口を出さなかった。


「明日は外周部での用事が終わったらそのまま自分の訓練するつもりだから、多分顔出せない」

「分かった。こっちでぼちぼち進めとく」


 研究局での仕事があるクオンはもちろんシュウもそれなりに忙しいため、二人の予定がそろわないことは珍しくなかった。

 そのためクオンはシュウに予定が入っていたことにはそれ程驚かず、むしろ二人に予定が入っている日が重なってよかったと思っていた。

 その後も二人はゲームを続け、午後の合同葬の一時間前まで二人はゲームや漫画を手にだらだらと過ごした。


 そして午後になり、機構本部一階の多目的ルームで毎月一日に行われている合同葬が行われた。隊長はシュウとセツナ以外全員が出席し、他にも殉職した隊員の親族や友人が参列して合同葬は三時間程で終了した。

 葬儀が終わり参列者たちが帰る中、一応最後まで残っていないといけない隊長たちは、思い思いに雑談をしていた。


「飛行用装備、今日が最終テストだったんでしょ?どんな感じ?」

「特に問題無かったから、来週には全部の隊に二つずつ用意する予定。でも飛ぶって言うより加速するって言った方が正確だから、慣れるまで着地は大変かも知れない」

「その辺は本人たちに練習してもらうしかないわね」


 すでに『飛燕』による新戦法を考え始めていたレイナがクオンに『飛燕』の出来栄えを聞いていると、そこにシンラが話しかけてきた。


「実験段階の映像は何度か見せてもらいましたが、あれを使えるようになるのはかなり大変なのでは?」


 シンラが見た映像では、被験者の隊員たちの多くが勢い余って壁や床に激突していた。

 実際に『飛燕』を使うのは屋外だから激突の心配は少ないが、それでも狙いと違ったところに行き、そこを邪竜に狙われる心配はある。

 シンラとしては『飛燕』の有効性に疑問を持っていたのだが、クオンはシンラの心配を否定した。


「大丈夫です。シンラさんが見たのは多分開発が始まったばかりの映像だと思いますけど、シュウにこれを普通の隊員に使わせるのは無理だと言われて出力はかなり抑えましたから。最初は地上での移動にだけ使って、慣れれば空中でも使えばいいとシュウが言っていました」

「そのシュウは今あんたの部屋?」


 呆れた様子で質問してきたアヤネに対し、クオンは少し考えてから答えた。


「私が部屋を出る時に後一時間ぐらいしたら訓練に行くって言ってたから、今はもういないと思う」

「…仕事をしているだけましか」


 クオンの発言を聞き、リンドウが吐き捨てるように言った。

 今のアイギスでは、ゲームや漫画は娯楽というより邪竜出現前の文明を知るための資料としての側面が大きい。


 そのため隊長たちのほとんどがシュウやクオンが邪竜出現前の技術や文明を知るためにゲームや漫画に触れていると考えていた。

 実際に二人がゲームや漫画から発想を得て新しい技や発明をすることが多いことがこの勘違いに拍車をかけており、シュウとクオンがゲームや漫画に触れている目的を正確に理解している隊長は本人たちを除けばアヤネとコウガだけだった。


「シュウさんは明日私の面倒を見てくれるでしょうか?ただでさえ交換研修で忙しいわけですし」


 他の隊長たちが話している中、今日の午前中に正式に隊長に就任したアヴィスが不安そうに口を開いた。


〈 アヴィス(十八) 討伐局隊長序列八位 能力:疑似生命体の創造 〉


 アヴィスはクオンの推薦で隊長になった男で、能力によりBランクの邪竜と同等の大きさと戦闘力を持つ疑似生命体を創り出すことができる。

 この能力のおかげで先月の戦いでの『プロメテウス』の被害は、他の隊に比べてかなり少なかった。


 武器は二丁の拳銃で自分が創った邪竜もどきの後ろから攻撃するのがアヴィスの主な戦闘スタイルだが、自分一人で戦っても十分強い。

 そのためアヴィスは決して隊長としてやっていくことに不安を覚えているわけではないのだが、それでもいきなり不穏な噂も多く聞くシュウのもとでの研修に不安があるようだった。

 そんなアヴィスにアヤネが声をかけた。


「大丈夫よ。ちゃんとした研修は私とリンドウでやるから、明日はシュウにぼこぼこにされてきなさい。隊員だった時ならともかく、隊長になったなら今一番強い隊長の力は知っといてもらわないと困るし。さすがに殺されはしないし、言っちゃ悪いけどあんたシュウに興味持たれる程強くないから一回戦ったらシュウの方から興味無くすと思うわ」

「そうですか…」


 アヤネの発言のどこにも安心できる部分が無かったのでますます不安になったアヴィスだったが、そこにシンラが声をかけた。


「正直な話、隊長としてシュウさんから学べることは無いと思います。研修というより胸を借りて戦うつもりでいて下さい」

「…はい。分かりました」


 決して不安がなくなったわけではなかったが、明日から同僚としてやっていく以上ずっと避けていくわけにもいかない。

 アヴィスは覚悟を決めると、その後他の隊長たちにシュウについての質問をいくつかした。


 

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