表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

114/495

合宿開始

 クオンの部屋を去ってから数時間後、シュウは予定通り機構本部裏の森でギオル、ミア、サヤと会っていた。


「今でも信じられませんよ。シュウ隊長とミアさんの体が入れ替わっているだなんて」


 今のシュウとミアの状態は既にギオルにも伝わっていたが、当然ながらギオルは半信半疑の様子でそんなギオルの反応を予想していたシュウは特に慌てることもなく話を進めた。


「まあ、普通はそうですよね。でもこれを見れば信じてもらえると思います」


 そう言ってシュウは今朝の模擬戦の内容を記録したデジタルカメラを取り出すとギオルに渡した。


「今日は初日なので軽く体を動かすだけにするつもりですけど不意打ちになってもつまらないので、これを見て今の私の強さをちゃんと理解して下さい。あなたもどうぞ」


 シュウはサヤにも視線を向けながらデジタルカメラをギオルに渡し、二人が記録された映像を見ている間にミアに指示を出した。


「今朝も言いましたけどとりあえずあなたは『飛燕』を完璧に使えるようになって下さい。……正直な話この合宿はあなたにとってかなり退屈なものになると思います。でも私という最高のお手本を見れることを考えるとトータルでは大きくプラスだと思うので我慢して下さい」

「……しかたないですね。この一週間は大人しくしておきます」


 ライバルだと考えているギオルとサヤが数日に渡りシュウに鍛えられている横で黙々と『飛燕』の練習をするという状況はミアにとって大変もどかしいものだった。

 しかし今朝試しにシュウの体を使い全力で能力を使用したところ、ミアは『万物切断』どころか普通の能力者並の威力の攻撃すら行うことができなかった。


 ミアは生まれ持った能力以外の能力を使う訓練などしたことがないのだからこれは当然の結果で、ミアが意地を張って当日戦おうとしても足手まといになるだけなのは目に見えていた。

 そのためミアはシュウの指示に素直に従い、その後しばらくシュウが重力操作や『飛燕』を使う際のコツをミアに教えていると映像を見終わったギオルとサヤが話しかけてきた。


「すごいですね。確かにこれを見せられると嫌でも今のミアさんの中身はシュウ隊長なんだと信じるしかないですね」

「正直本気を出していいか悩んでたんですけどこれなら本気で戦ってよさそうですね」


 模擬戦の映像を見終えて思い思いの感想を口にするギオルとサヤを前にシュウは不敵な笑みを浮かべた。


「今しか戦えない最強の重力使いに訓練をつけてもらえることを光栄に思いながら精々ぼこぼこにされて下さい。さて始めましょうか」


 そう言ってシュウが移動を始めると三人もそれに続き、適度に開けた場所に着いた時サヤがシュウに話しかけた。


「殺すつもりでやっていいですか?」


 表情一つ変えずにシュウにこう尋ねたサヤだったが、このサヤの発言を聞いてミアは思わずサヤに視線を向けた。

 いくらシュウがミアの能力をミア以上に使いこなせるといっても実際に攻撃を受けるのはミアの体だ。

 そのため自分の体を使われているミアはサヤの遠慮の無い発言に驚いたのだが、続くシュウの発言を聞き更に驚かされた。


「もちろん構いませんよ。さっき見てもらった通り今の私は隊長数人より強いですからあなたたち二人がどんなにがんばっても殺すことはできません。いつも私と戦うみたいに遠慮無く戦ってもらって構いません」

「ちょっと!それ私の体なんだからあんまり好き勝手言わないでよ!サヤさんもできれば少しは加減をして下さい!」


 シュウのあまりに酷い発言を聞き思わず普段の口調に戻ってしまったミアの発言を受け、シュウは呆れた様な表情を浮かべた。


「心配いりませんよ。私ぐらい強くなると能力が変わってもできることが変わるだけで強さ自体は変わりませんから。あなたも間違っても手加減なんてしないで下さいね」


 シュウにこう言われてギオルは申し訳無さそうな表情を浮かべた。


「はい。ミアさんには悪いですけど殺す気はともかく手を抜く気は無いんで安心して下さい」


 三人揃って他人ひとの体を何だと思っているんだと愕然とした気持ちを抱くミアの前でシュウとギオル、サヤの戦いが始まろうとしていた。


「能力での攻撃はともかく武器での攻撃はあなたたちでも防げる程度に抑えます。……せっかくの機会ですからあっさり負けないように気をつけて下さいね」


 シュウがそう言うと同時にシュウの左右の地面から一辺が二メートル程の立方体状の土の塊が二つ浮かび上がり、二つの土の塊はそれぞれ高速でギオルとサヤ目掛けて飛び出した。


「周りのこと気にする必要が無いですからね!遠慮無くやらせてもらいますよ!」


 土の塊に続く形でシュウが動き出したのを受けて左右に分かれて土の塊をよけたギオルとサヤもそれぞれ行動を開始し、ギオルは迫り来る土の塊を氷の槍で迎撃した。

 この土の塊はシュウが能力で飛ばしただけで魔力による強化はほとんど行われていなかった。

 そのため土の塊はギオルの創り出した氷の槍にたやすく貫かれ、それを見たギオルは顔をしかめた。


 この程度の攻撃なら生身で受けても問題無く、氷の槍を創ったせいで一瞬とはいえシュウを見失ったことを考えるとギオルの行動は明らかに失敗だったからだ。

 この失敗を見逃す程シュウは甘くなく、ギオルが慌てて後退しようとした時には既にシュウはギオルを間合いに捉えていた。


「今の私にスピードで勝つのは難しいと思いますよ?」


 ギオルがシュウのこの発言を聞いた次の瞬間にはギオルの顔面にシュウの拳が叩き込まれ、その痛みに顔を歪めながらもギオルは自分の前方を力の限り氷漬けにした。

 このギオルの防御を受けてシュウは後退したが、先程シュウが言った通り重力操作を使える今のシュウの機動力は普段のシュウの比ではない。


 ギオルの創り出した氷の波を回避した二秒後にはシュウは再びギオルを間合いに捉えていた。

 しかしギオルの時間稼ぎは決して無駄ではなく、シュウがギオルに二度目の攻撃を行おうとした時にはサヤも二人の近くまで来ていた。


「ギオルさん!すぐに横に跳んで下さい!」


 サヤのこの発言を聞いたギオルはすぐに横に跳び、その次の瞬間にはギオルのいた空間をシュウが投げた斧が通過した。


「やっぱコントロール重視するとスピードが落ちますね。不意打ちには向かないか」


 ギオルを逃がした時に備えて上空を経由して投げていた斧を右手で掴みながらシュウは重力操作で操った斧の移動の遅さを嘆いた。

 とはいえこの不意打ちでギオルを倒せてもそれはそれでつまらなかったので、シュウはすぐに気持ちを切り替えて合流したギオルとサヤに視線を向けた。


「直接触らなくても物を操れるんですね」


 先程のシュウが飛ばした土の塊は強度こそ大したことなかったが、シュウが何の予備動作も無く足下の地面を飛ばしてきたことにギオルは驚いていた。

 しかしギオルのこの発言を聞きシュウの方が不思議そうにしていた。


「え?足で触ってるじゃないですか?」

「……そうですね」


 シュウに真顔でこう聞き返されてギオルは呆れ、そんなギオルにサヤが話しかけてきた。


「中途半端な技を使っても勝ち目はありません。『ハングリー氷槍スカーレット』を使いましょう」

「そうですね。私に通じるとしたらその技しかありませんよ。さあ、どうぞ」


 シュウの前で堂々と次の手を口にしたサヤに苦笑しながらシュウは仁王立ちになり、シュウに自分たちの邪魔をする気が無いことを察したギオルはサヤの提案通り『貪る氷槍』を使うことにした。

 さすがにシュウもそう何度も待ってはくれないだろうからシュウの足止め要員がいない今回の模擬戦ではこれがシュウに『貪る氷槍』を当てる最後のチャンスだろう。


 そう考えたギオルは一応シュウに警戒を向けながらサヤと共に『貪る氷槍』を発動し、それによりギオルとサヤはもちろんシュウの視界も紅い氷に埋め尽くされた。

 しかし質量と威力を兼ね備えた『貪る氷槍』の標的となってもシュウは慌てた様子は見せず、それどころか嬉しそうに笑みさえ浮かべていた。


「おっ、前より発動早くなってますね。これ気を遣う必要無かったですね」


 そう言いながらシュウは何も無い自分の前方の空間に重力の壁を創り出して『反射リフレクトウォール』を発動した。


「……斧も使わないであんなに簡単に」


 自分が開発中の技をシュウがあっさり発動するのを目の当たりにしてミアは呆然とし、ミアの見ている中シュウの『反射壁』と『貪る氷槍』が激突した。

 自分たちの作った氷の槍のせいでギオルとサヤはシュウがどうやって『貪る氷槍』を防いでいるかを見ることはできなかったが、シュウのいる場所から激しい衝突音が聞こえてきたのでシュウが回避ではなく迎撃か防御を選んだことだけは分かった。


 こうなれば後は純粋に力比べなのでギオルとサヤは細かいことは考えずに『貪る氷槍』の発動に意識と魔力を注いだ。

『反射壁』と『貪る氷槍』の衝突は二十秒程続いたが、サヤが体内に貯蔵していた血液の八割以上を使った辺りでサヤは力押しではシュウに勝てないことを悟った。


「『貪る氷槍』ならいけると思ったんですけどこのままじゃ無理そうです。今のシュウ隊長は能力を二つ入れているわけではないので前の時より余裕があるのかも知れません」

「じゃあ、後は勝てないまでも接近戦で粘りましょう」


 以前シュウが火炎操作能力を入れて『フェンリル』相手に訓練をしていた時のことを思い出して悔しそうにしているサヤとは対照的にギオルはそれ程悔しそうにはしていなかった。

 何とかシュウに勝とうとしているサヤと違いギオルはあくまで自分やサヤたちの訓練のためにシュウと戦っており、そのため『貪る氷槍』の発動速度や威力が上がったことを実感できた時点でギオルは今日の戦いに満足していた。

 しかしサヤは最後まで勝負を諦める気は無く、ギオルにシュウ相手の足止めを頼んだ。


「今から残ってる血を全部使って最後の攻撃をします。少し時間がかかるので時間稼ぎをお願いしていいですか?」

「……十秒持ちませんよ?」


 シュウ相手に一人で時間稼ぎをしろという無茶振りをされ、ギオルは正直に自分の限界をサヤに伝えた。


「できるだけ急ぎます」


 それだけ言うとサヤは『貪る氷槍』の発動を止めたのだが、ここでサヤにとって予想外のことが起こった。

 シュウが今回発動した『反射壁』は不完全なミアのものとは違い防いだ攻撃を反射できる代物だった。


 そんな技と衝突していた時に『貪る氷槍』の発動を止めた結果、シュウの『反射壁』に押された『貪る氷槍』の残骸は無数のつぶてとなってギオルとサヤに降り注いだ。

 シュウが何をしたのかはギオルもサヤも分からなかったが、それでも自分たちに降り注ぐ無数の氷の礫に二人は即座に対応した。


 サヤは元々の予定通り『メリジューヌ』を発動してダメージを軽減し、ギオルは自分を氷漬けにすることで氷の礫を防いだ。

 二人の後ろに生えている木々が次々に氷の礫に撃ち抜かれていく中、シュウは攻撃の手を緩めることなく二人に近づき、まずは動けなくなっているギオルから倒そうとした。


 しかしサヤが突然魔力を高め始めたためシュウは意識をサヤに向け、そんなシュウの前でサヤの体が爆散した。

 突然の出来事にシュウとミアが驚く中、シュウとギオルの周囲に霧状になったサヤの血液が散布され、直径五メートル程の半球状の深紅の空間が創り出された。


 酸の様な性質を持つサヤの血液が空間を埋め尽くしたためシュウはとっさに『魔装』を発動したがすぐに異変に気づいた。

 足元の草がサヤの血液に触れても侵食されておらず、ギオルを包む氷にも何の変化も無かったからだ。


「……『メリジューヌ』を薄く広げた技って感じですかね。ずいぶんと小賢しい技を。少しは成長したようですね」


 シュウの想像通り今シュウとギオルを包み込んでいる空間はサヤが血液に変えた体を霧状にして広げたもので、空間を埋め尽くしている血液に攻撃力こそ無いもののこの空間内ならサヤはどこにでも瞬時に自分を創り出すことができた。


 この状態でのサヤの移動速度は通常の『メリジューヌ』を発動している時よりも更に遅く、シュウが走って脱出を試みれば簡単にサヤの中から逃げ出すことができただろう。

 今のサヤの技術でこれだけの範囲への能力の展開と移動速度を両立できるわけがないので、このことをシュウはすぐに察した。


 シュウなら逃げないだろうという甘えとも言える予想を前提にして使ったのはいただけなかったが、攻撃一辺倒だったサヤがこういった搦め手の技を開発したこと自体は評価できるとシュウは考えた。

 サヤがこの空間内で不意打ちを仕掛けてくるとしたシュウがギオルと戦っている時だろうと考え、シュウはサヤの望み通り隙を作るためにギオルに近づいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ