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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
4章

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解決策

「これからどこに行くつもり?」

「ガドナーさんたちに事情説明して、その後はいつも通り森に行って訓練して寝るつもりです」

「お風呂は?」


 今日一番の気迫が込められた表情でのミアの質問を受けてシュウはミアの心配に気づき、それと同時に会議室の空気も変わった。

 そんな中シュウは言い聞かせる様にミアに話しかけた。


「一日や二日ならともかく一週間ですよ?……お互い色々諦めるしかないんじゃないですか?」

「……最悪」

「こっちのセリフですよ」


 自分の顔と声で情けない表情を浮かべながら発言するミアを前にシュウは深いため息をついた。


「とりあえずそういうことで失礼しますね。その体で家に帰れないってことなら私の部屋好きに使って下さい。ほとんど使ってませんから」


 ミアに気遣いつつもできるだけ普段通りの生活を送ろうとしているシュウにミアはある提案をした。


「ねぇ、ガドナーさんたちに事情説明したら明日からについて色々話し合いましょう」

「それは構いませんけど私あなたとずっと一緒にいる気無いですよ?私結構忙しいですから」

「……まあ、その辺りのことも含めて後で話し合いましょう」


 一週間後の戦いよりもこれから一週間の生活の方が今は大切だ。

 そう考えたミアはこれから一週間の生活で絶対にシュウに守らせることを脳内で挙げながらシュウと共に『フェンリル』の会議室へと向かった。


 一方シュウとミアが去った後、会議室に残った隊長たちは今回のシュウとミアに起こった異変について思い思いの感想を口にしていた。


「あんたも大変ね。ミアちゃんが消えたと思ったらあんな状態で帰って来るなんて」

「最悪の場合も考えていたのでとりあえず生きていただけでもよかったです。ミアさんとサヤさんが偶然巻き込まれなかったらシュウさんが殺されていたわけですし」

「絶対に勝てない相手と戦わせるなんてまじでうざいことしてくれるわよね」


 どこか冗談めかした表情でシンラに話しかけたアヤネだったが、シンラの発言を受けて急に不快そうな表情を浮かべた。

 そんなアヤネにクオンが声をかけた。


「そう怒る必要は無いと思う。確かに今回の邪竜の能力はずるいと思うけど『創造主』は同じことはもうしないって言ったんだから。シュウが嘘だと思わなかったってことはこの『創造主』の言葉は本当だと思うから、今回の邪竜を偶然倒せてむしろラッキーだった」

「それはそうね。たまたま巻き込まれた隊員二人だけでSランクの邪竜倒すなんて他の隊じゃまず無理だし」


 クオンの言う通り、シュウが確認した以上今回の『創造主』の発言は全て本当だろう。

 そうなると今後送り込まれてくる邪竜は全て力押しでどうにかなる相手で、今回の邪竜を倒せた時点でシュウが負けることはないとアヤネは考えていた。

 そのためアヤネは一週間後の戦いについてもそれ程心配はしておらず、すぐに話題を明日の模擬戦に移した。


「午前中に模擬戦ってことは治安維持局の仕事は午後からになるわね。シュウもさすがに一日動けなくなるような怪我はさせないでしょうし」

「そうですね。『リブラ』のみんなには後で連絡しておきます」


 自分たちが負けること前提で明日の予定を話すアヤネにリクは何も言わず、それを見てアヴィスが他の隊長たち全員に疑問を呈した。


「明日の模擬戦はさすがにどうなるか分からないのでは?シュウさんもいつもの能力を使えないわけですし」

「そりゃ、多少は弱くなってるでしょうけど極端な話あいつは魔力で体強化して殴りかかるだけで強いんだもの。能力が変わったぐらいじゃ私たちに勝ち目無いわよ」


 アヴィスの発言を受けてもアヤネは自分の予想を撤回せず、そんな二人のやり取りを聞いたクオンは不敵に笑った。


「アヴィスもそうだけどアヤネも甘い」

「どういうこと?」


 自分の発言は客観的な事実だと思っていたのでクオンに甘いと言われてアヤネは不思議そうな表情を浮かべ、そんなアヤネにクオンは自分の考えを伝えた。


「どうせ勝てないっていうのは合ってるけどミアさんの体だからシュウが弱くなってると思ってるなら大間違い。明日戦えばシュウの本当のやばさが分かるはず」

「どういうことだ?」


 心底楽しそうにシュウをほめるクオンを見てコウガはまたも不快そうにしていたが、クオンはコウガの質問には答えなかった。


「ネタバレになるから言わない。悪いけど明日の計測の準備、模擬戦の分まで入れると今から急いでしないといけないからもう行く。明日は四人共がんばって」

「あんたとシュウはいつも楽しそうでうらやましいわ」


 シュウとミアの入れ替わりというトラブルの中、ミアの体を手にしたシュウの計測の機会を得てそわそわした様子で会議室を出て行くクオンをアヤネは呆れとも皮肉とも取れる発言をしながら見送った。


「最後に予想外の事態になりましたが、とりあえず現れた邪竜は全て倒すことができました。リンドウさん、アヤネさん、リクさん、ヴェーダさんは明日大変だとは思いますががんばって下さい」


 シンラのこの激励に四人それぞれが返事をし、その後隊長たちが会議室を後にする中シンラがアヤネを呼び止めた。


「何の用?」


 このタイミングで自分だけ呼ばれる心当たりが無かったためシンラに呼ばれたことをアヤネは不思議に思い、そんなアヤネにシンラは単刀直入に用件を伝えた。


「どうしてシュウさんがアヤネさんを名前で呼ばないか心当たりはありますか?」

「ああ、それ……」


 シュウが隊長の中でアヤネだけを名前で呼ばないことについては触れないというのがシュウが隊長に就任して以来の隊長たちの中での暗黙の了解だった。

 とんでもない地雷が飛び出しても困るからだ。


 これまで目に見えてシュウとアヤネの仲が悪いということもなかったのでシンラもこの件には触れずにきたが、自分の引退までに機構における不安要素は消しておきたいと考えて今日シンラはアヤネにこの件について尋ねた。

 自分の質問を受けて考え込んだアヤネを見てシンラは質問を変えた。


「別にシュウさんがアヤネさんを嫌っているというわけではないですよね?」

「仲良くしてるつもりだけどあいつがどう思ってるかまでは分からないわ。単純に弱いから名前で呼んでもらえないだけなんじゃないの?」

「そんなことはないと思いますが……」


 強さが原因でアヤネがシュウに認められていないとしたらシュウの基準ではリンドウも失格になってしまう。

 しかし決して仲がいいとは言えないがシュウはリンドウのことを名前で呼んでいる。

 そのためシンラはアヤネの考えに同意できず、そんなシンラを見てアヤネはため息をつきながら口を開いた。


「これここだけの話にしてよ?私外周部にいた時暗殺でご飯食べてたの。で、それ止めて外周部から逃げて来たきっかけがシュウ。その時色々あったから今でも名前で呼んでもらえないのかも知れないわね」

「……なるほど」


 これ程正面から金銭目的で人を殺したことがあると言われてシンラは困ったが、付き合いも長いのでアヤネが隊長になる前に犯罪の一つや二つに手を染めていることは察していた。

 そのためシンラはアヤネの告白はスルーして話を進めた。


「お二人の過去をどうこう言うつもりはありません。勝手な言い方になりますが機構に影響さえなければ正直興味もありませんので。踏み込んだことを聞いてすみませんでした」

「いいわよ。あんたも引退前にして大変ね。今さら私とシュウの間にトラブルは起こらないからそこは安心していいわよ」


 そう言ってアヤネは会議室を去り、巡回のために外周部に向かう道中シュウが自分を名前で呼ばない理由について考えていた。

 アヤネはシュウが自分を名前で呼ばない理由をきちんと把握していた。


 しかしその理由が個人的かつあまり話題にしたくないことだったのでアヤネはシンラにそのことを話さなかった。

 しかし自分とシュウが比較的仲がいいというのは嘘ではないのでシンラの心配している様な事態にはならないだろうとアヤネは考えていた。


 正直絶望的だと考えていたシュウが無事とは言えないまでもアイギスに帰って来たことでアヤネの機嫌はかなりよかった。

 そのためアヤネは昔の不快な出来事などすぐに頭の片隅に追いやり外周部の巡回を始めた。


 一方会議室から去ったとシュウとミアは『フェンリル』の隊員たちへの説明を行った。

 現在のシュウとミアの状態についてはあまり広めないようにするということが先程の会議で決まったので、二人はガドナーとリンシャにだけ事情を説明して他の『フェンリル』の隊員たちにはシュウを狙った邪竜の転移能力にミアとサヤが巻き込まれたが無事に邪竜を倒せたとだけ伝えた。


 今週のシュウによる『フェンリル』への訓練は行われないこととなり、ミアは今週は訓練に参加しないことも決まった。

 そして『フェンリル』の隊員たちへの説明の後、二人はシュウの部屋で今後のことについて話し合っていたのだが話し合いは難航していた。


「私を見張りたいということなら別に構いませんが、一週間ずっと付きっ切りで過ごすことになるわけですから勘違いされても知りませんよ?」

「んー、それはそれで困るわね」


 今回は事情が特殊だったので完全に巻き込まれた側のミアの要望をシュウはできるだけ聞き入れるつもりだった。

 しかしシュウがミアの体にいかがわしいことをするのではとミアが疑っているのにはシュウも困り、何度そんなことはしないと言っても疑いの眼差しを止めないミアにシュウはうんざりし始めていた。


 ミアの提案通りにした場合、傍から見たら若い男女が四六時中二人きりで過ごすことになるわけで、それを見て周囲の人間がどんな想像をするかは容易に想像できた。

 そのためシュウはミアのずっとシュウを見張っていたいという要望だけは無理だと何度も伝えていたのだが、ミアは理屈では分かっていても感情が邪魔をして納得できない様子だった。


 先程から結論が堂々巡りをしている話し合いにシュウは嫌気が差し始めており、ミアを殴って気絶させてベッドに縛りつけるという案も現実味を帯び始めていた。

 そんな中部屋の扉が叩かれてシュウが扉を開くとサヤの姿があった。


「何の用ですか?今忙しいんですけど」


 自分たちの事情を知っているはずのサヤがこのタイミングで現れたことにシュウは戸惑い、そんなシュウにサヤは用件を伝えた。


「結構時間が経ってますけどまだ話し合いが終わってないってことはいい考えが出てないってことですよね?だったら私に考えがあります」

「へぇ、言うだけ言ってみて下さい」


 突然現れたサヤの思わぬ発言を聞きシュウはそれ程期待せずにサヤに発言を促し、それを受けてサヤは自分の考えをシュウとその後ろにいるミアに伝えた。


「私とギオルさんを入れて四人で森でキャンプをしませんか?もちろん訓練を兼ねたものでこれなら妙な噂も立たないと思います」

「ふーん。悪くないですね」


 自分たち二人以外の人間を交えての共同生活という案はシュウも一度考え、リクとヴェーダに頼むことも考えた。

 しかし各局長を兼任している隊長程ではないにしても日々忙しそうにしているリクとヴェーダにそんな面倒なことを頼むのはさすがのシュウも気が引けて断念した。


 しかしサヤの案ならサヤとギオルが構わないなら問題は無い様に見え、シュウが普段とは違う能力でサヤたちを指導できるという点も魅力的だった。

 そのためシュウはギオルさえよければと前置きをしながらもサヤの意見に同意し、その後シュウとサヤは二人揃ってミアに視線を向けた。


 二人の視線を受けたミアは他にいい案も思い浮かばなかったためサヤの案に同意した。

 その後三人はギオルに連絡を入れ、ギオルが泊まり込みの訓練に同意したためシュウたち四人による一週間の合宿が決定した。

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