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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
4章

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結果報告

 三人揃ってアイギス郊外に転移した直後、ミア程ではないがシュウも自分の体に起きた異変に戸惑いしばらく放心状態だった。

 しかしいつまでもこうしてはいられないのでシュウはガドナーに無線を繋いだ。


「今帰った。孫娘と地味子も一緒だ」

「……ミアさん、ですよね?」


 シュウの報告を受けたガドナーは普段とはかけ離れた口調で無事帰還したことを報告してきたミアに驚いている様子だった。

 そんなガドナーの反応を受けてシュウは面倒そうにため息をつき、その後口調を変えてガドナーとの話を続けた。


「とりあえずシュウ隊長も私たち二人も無事です。詳しい話はシンラ局長たちに報告してから直接します」

「はい。分かりました」


 とりあえずは納得した様子のガドナーとの会話を終えてシュウがミアとサヤに視線を向けるとミアは今も固い表情をしており、自分の顔で情けない表情をされたくなかったのでシュウはミアに話しかけた。


「おい、俺の顔でそんな情けない顔するな。一週間後に邪竜倒せば元に戻るんだ。そんな落ち込むことないだろ」

「いや、だって……」


 自分の発言を受けてもなお態度を改めようとしないミアを前にシュウはため息をついたが、これ以上他の隊長たちに不要な心配をかけるのは申し訳ないと考えてとりあえず機構本部へと向かった。

 サヤに他の『フェンリル』の隊員たちと合流するように指示を出した後、シュウはミアを連れて他の隊長たちが待つ会議室へと向かった。

 あらかじめ簡単な報告は入れていたとはいえ、実際にシュウが隊長たちの前に姿を見せた瞬間ほとんどの隊長たちが安堵の表情を浮かべ、そんな中アヤネが口を開いた。


「無事でよかったわ。あんたが消えた時はほんと焦ったもの。ところでどうしてミアちゃんまで連れて来たの?」


 シュウの無事を喜んだアヤネが視線を向けた相手は当然シュウの姿をしたミアで、他の隊長たちもどうしてミアがシュウを引き連れる形で会議室に来たのか疑問に思っている様子だった。

 そんな同僚たちの態度に苦笑しながらシュウは自分たちに起こったことを伝えた。


「……体を入れ替えられた、ですか?」


 ミアとサヤが邪竜を倒した後の出来事をシュウが話し終えると、それを聞いた隊長たちは一様に言葉を失っていた。

 特にシンラは孫娘のミアの体に予想外の異変が起きていると聞き動揺したが、それでも何とかミアの姿をしたシュウの説明に反応した。

 そんなシンラの反応を見たシュウはシンラの反応は無理も無いと同情しながら話を続けた。


「まあ、あんま気にするな。一週間後に送り込まれる邪竜倒せば元に戻れるらしいから」


 勝ち目ゼロの邪竜相手に戦わされることに比べたら、ミアの体を使ってSランクの邪竜を倒すぐらい造作も無いことだ。

 シュウはこう考えていたのだが、アヴィスが根本的な質問をしてきた。


「そもそもシュウさんとミアさんが入れ替わったという話がまず受け入れがたいのですが。まだ『妖精女王』の様な能力を持った邪竜に認識をいじられているという方が納得できます」

「お前が納得できるかどうかなんて知らねぇよ。でも確かに証拠無しでこれ信じろってのも無理ねぇか」


 アヴィスの疑いの眼差しを受けて面倒そうにしながらもシュウは自分たちが入れ替わっていることを証明する方法を考え始め、そこにクオンが話しかけてきた。


「シュウ、当ててみて」

「ん?ああ、……二十一」

「あ、本当だ」


 シュウはクオンが一から百の間で思い浮かべた数字を勘だけで当ててみせた。

 これはシュウがクオン相手にこれまで何度か見せた芸の様なものだったので、これを受けてクオンは目の前のミアの中身がシュウであることを信じた。


 しかし他の隊長たちはそうもいかず、コウガなどはシュウとクオンが二人だけに通じるやり取りをしているのを見て不機嫌そうにしていた。

 そんなコウガの様子を見て笑みを浮かべたシュウは簡単に自分たちの入れ替わりを証明する方法があることに気がつき、自分が間違いなくシュウであることを証明するためにシュウは『魔装』を発動した。


 ミアの体で『魔装』を発動して漆黒の魔力を纏ったシュウを見て、ようやくクオン以外の隊長たちもシュウとミアの入れ替わりを信じた。

 なおミアの体を使い当たり前の様に『魔装』を発動したシュウを見て、シュウの後ろにいたミアも驚きの表情を浮かべていた。


 しかしシュウはミアの反応には気づかず、『魔装』のせいで会議室の床が壊れていることに気づき慌てて『魔装』を解除した。

 その後シュウは会議室の床を壊したことをレイナに謝ってからクオンに呆れた様な表情を向けた。


「『魔装』見るなり計測したがるのめろ」

「いや、だって『魔装』使える人間二人しかいないし」


 シュウに呆れた様な表情を向けられてもクオンは全く動じず、そんなクオンにシュウは前から考えていたことを伝えた。


「コウガに適当な能力入れて『魔装』使わせればいいだろ」


 クオンの研究に協力すること自体はシュウとしてもやぶさかではなかったが、『魔装』の計測は一時間程かかりその間はほとんど動けない。

 そのため三度目の『魔装』の計測などシュウはごめんだったのだが、シュウの提案を聞いたクオンは真顔でこう返事をした。


「もちろんコウガにも協力してもらってる。でもサンプルは多い方がいいから」


『魔装』を使える人間が二人しかいないため『魔装』の研究のためのサンプル不足はクオン、及び研究局にとって死活問題だった。

 そのため『魔装』が使える幼馴染などという好都合な存在をクオンが見逃すはずも無く、コウガはこれまでに五種類の能力を入れた状態で『魔装』の計測に付き合わされていた。


 この事実をシュウは今まで知らず、既にクオンの餌食になっていたコウガに同情した。

 その後クオンに嫌味の一つでも言ってやろうとシュウは考えたのだが、話が完全に逸れていたのでシュウとクオンの会話にシンラが口を挟んだ。


「すみません。その話は後でゆっくりして下さい。シュウさんとミアさんの体が入れ替わったということは分かりましたので、シュウさんが消えた後のことを聞かせてもらっていいですか?」


 シンラにこう言われてシュウは邪竜と共に転移した後のことを隊長たちに伝えた。

 シュウが先程戦った邪竜の特定の能力者の行動を無視できるという能力を聞き、ほとんどの隊長たちは言葉を失っていた。

 ミアとサヤに日常的に訓練を行っていなかったらシュウが殺されていたというシュウの説明に隊長たちのほとんどが言葉を発しない中、シンラがシュウの報告への感想を口にした。


「どうやらシュウさんは『創造主』に目をつけられているようですね」

「ああ、あんまり強い奴が多過ぎてもおもしろくないみたいなこと言ってた。でももう今日の邪竜は送り込まないって言ってたし、後は俺が一週間後に送り込まれてくる邪竜を倒して終わりだろ」


 シュウのこの発言を聞きシンラは不安そうな表情を浮かべた。


「いくらシュウさんでも慣れないミアさんの体でSランクの邪竜に勝てるのですか?」


 当日はシュウとミアの二人だけで挑まないと元に戻れない可能性があるというシュウの考えを受け、一週間後の戦いへの他の隊長たちの参加は見送られた。

 数日前にミアが『妖精女王』に襲われたかと思ったら今日はミアが機構本部からサヤと共に消えたとの報告を受け、無事にミアが帰って来たと思ったらシュウと体が入れ替わっていたのだ。


 立て続けにミアの身に異変が起きたことを受けて今のシンラは精神的にかなり疲弊していた。

 そのため他に選択肢が無いとはいえ不慣れな状態での戦いを強いられているシュウとミアだけでSランクの邪竜と戦わせることにシンラは不安を覚えていた。


 ミアが討伐局に入った時点でシンラはミアの殉職の覚悟はしていたつもりだったが、想定外のことが連続したことで自分の覚悟が足りなかったことに気づかされた。

 そんなシンラを見て、シュウは『妖精女王』を連れて来た時同様の模擬戦を行うことにした。


「俺と孫娘が行くことは決まってるわけだけど、お前らに余計な心配させるのもわりぃからな。明日俺がこの体でも戦えるってことを見せるために模擬戦しようぜ」

「……分かりました。では私が相手をします」


 シュウの言う通りシュウとミアの二人だけでの出撃は避けられないが、シュウが宣言通り普段と変わらない強さを見せてくれれば自分も少しは安心できるだろう。

 そう考えて明日のシュウとの模擬戦の相手を買って出たシンラだったが、それをシュウは断った。


「じいさんは俺の戦いをちゃんと見ててくれないと駄目だろ。明日の模擬戦、ぶっちゃけじいさんのためだけにやるんだぞ?」


 ここまで正直に模擬戦の意図を伝えられるとシンラとしても何も言えず、そんなシンラを前にシュウは明日の相手を選び始めた。


「この体で怪我するのはさすがにわりぃからコウガは止めといて、お前と後リク、ヴェーダ、それにリンドウのおっさんの四人でどうだ?Sランクの邪竜想定した訓練だと思えば悪くないだろ?」


 シュウに次々に模擬戦の相手に指名されてアヤネたち四人は驚いた様子だったが、それも一瞬で全員がシュウの申し出を受けた。

 シュウの言う通りいい機会だったからで、どうしても肉親の情が入るシンラと違い日々部下の訓練を行っている隊長たちは見た目がミアの今のシュウに攻撃することにそれ程抵抗を覚えていなかった。


「『創造主』の言う通り動くのはしゃくだが、明日は最強の重力使いの戦いっぷりを見せてやる。こいつにも見学させるけどいいよな?」


 ミアを指差しながらシュウは隊長たちに明日の模擬戦をミアにも観戦させることを伝え、それについてどの隊長たちからも異議は出なかったので会議は終了と誰もが思ったのだがここでミアが口を開いた。


「ねぇ、私の声でそのしゃべり方するの止めてくれない?」

「え?ああ、いいじゃねぇか、一週間ぐらい。お前の振りした俺とか痛くて見てられないと思うし」

「別に私の真似をしろって言ってるわけじゃないわよ。もう少し丁寧に話してって言ってるの」


 ミアのこの頼みを聞きシュウは心底面倒そうにしたが、自分たちの現状があまり外部に知られるのもまずいと考えてミアの頼みを聞き入れることにした。


「めんどくせぇな。まあ、いいや。じゃあ、元に戻るまでこの口調で話すことにします。でも私にそう言った以上あなたも気をつけて下さいね」


 周囲の隊長たち同様ミアは突然口調を変えたシュウに若干驚いたが、シュウが自分の頼みを聞き入れた以上こちらも話し方をシュウに近づける必要があるだろうと考えて口調を変えて返事をした。


「分かったぜ」


 ミアがこう言った途端隊長数人が笑いをこぼし、シュウは呆れた様な表情をミアに向けた。


「次にそのふざけたしゃべり方したら一週間ベッドの上で過ごしてもらいますからね?」


 そう言って不機嫌そうな表情で拳を作ってみせたシュウを見てミアは困惑した。


「え、何がいけなかった?」


 本気で分かっていない様子のミアを前にシュウはため息をついた。


「私みたいにですます口調で話して下さいと言いたいところですけど私の姿でそれは目立ちますね。……もうしゃべり方は自由にして下さい。ただしあまり出歩かない方がいいですよ」

「分かった」


 元々今の状況で出歩く気も無かったのでミアはシュウの助言を素直に聞き入れ、その後シュウはクオンに声をかけた。


「この体での『魔装』の計測は明日の模擬戦が終わってからにして下さい。今日はさすがに疲れたので」

「分かった」


 研究に関することでクオンと押し問答をするのが時間の無駄なことはこれまでの経験から分かっていたので、シュウはクオンの計測への協力自体はするつもりだった。

 しかしクオンに伝えた通り今日はさすがに疲れていたのでシュウは手早く『フェンリル』の隊員たちへの説明を終え、その後いつも寝泊まりしている機構本部裏の森に向かおうとしたのだがそこにミアが待ったをかけた。

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