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竜滅者たちの進化論(おかげさまでPVが15万を超えました。ありがとうございます)  作者: 紫木翼
3章

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イレギュラー

『飛燕』を再び装備して攻撃が一切通用しない邪竜相手に戦いを再開したシュウを見ながら『創造主』はシュウの死を確信していた。

 今回『創造主』の送り込んだ邪竜は特定の相手からの干渉を全て無視でき、これまで何人も『創造主』が人間の観察に邪魔だと判断した能力者を葬ってきた。


 この邪竜は『創造主』が対象に指定した能力者の魔力をどれだけ離れていても感知することができ、対象の能力者からの干渉を無視する能力と自分と特定の魔力を持った人間を遠く離れた場所に転移させる能力を持つ『創造主』特製の邪竜だった。


 普段『創造主』が各地に邪竜を送り込む場合は各地の人間たちがギリギリ勝てる程度の邪竜しか送らないが、この邪竜に関してはそういった気遣いは一切行われていなかった。

 その代わりと言っては何だがこの邪竜は対象が死んだらすぐに消滅するので、出る被害は常に一人というある意味安全な邪竜だった。


 今回『創造主』の標的となったシュウはまだ気づいていないようだったが、今シュウが邪竜と戦っている場所は風景こそアイギスの近くと変わらないが外部と断絶された異空間だった。

 そのため脱出は不可能でシュウか邪竜が死なない限りこの異空間は解除されない。


 攻撃も通じず逃げ場も無いとあってはさすがにあの剣士もお手上げだろう。

 そう考えていた『創造主』だったが異空間内で予想外のことが起きていることに気づき、驚きながらその異変の原因を探るために普段は使わないことにしている『全知全能』の一端を使用した。


「なるほど、道理でいくら何でも多過ぎると思った。……さて、どうしたものかな」


 剣士、雷使い、毒使い、幻術使いと今のアイギスには『創造主』の目に留まる能力者が四人もおり、これは他の街と比べてあまりに多過ぎた。

 そのため『創造主』はこの四人の中で一番目立っていたシュウを間引こうとした。


 しかし今回起こった異変の原因を調べた結果、自分が積極的にシュウを間引く必要が無いことを知り『創造主』は少し考え込んだ。

 しかし送り込む邪竜の強さの調整を間違って人間側に想定以上の被害が出ることなどこの二百年の間に何度もあったことだったので、『創造主』はすぐに気持ちを切り替えた。


「まあ、この失敗は次に活かすとして今は戦いを楽しもう。意外とおもしろいことになるかも知れないからな」


 そう言って『創造主』は罪悪感などみじんも覚えずに邪竜に一方的に攻撃されているシュウに意識を向けた。


 一方Aランクの邪竜の群れと共に現場に残されたシンラたちは、結果的にシンラとコウガがフリーになったこともありシュウがSランクの邪竜と共に姿を消してから五分とかからずに邪竜たちを全滅させた。


 今回の討伐局側の犠牲者は十五名でAランクの邪竜二十体を相手にしたことを考えると少ない犠牲と言えた。

 しかしシュウとSランクの邪竜がどうなったかは今も分からず、シュウと連絡すら取れないという状況を受けて現場に残された隊長たちの表情は暗かった。


「アイギスの近くにもシュウさんたちは現れていないようです。一体どこに行ったのか」

「もしシュウが無線が通じないぐらい遠い所に連れて行かれてたら、勝負に勝ったとしても戻って来れないかも知れません」


 アイギスの近くで待機しているリク、ヴェーダと連絡を取ったシンラの報告を受け、クオンは他の隊長たちに想定できる限り最悪の状況を説明した。

 現在アイギスで使われている無線単独で連絡を取れる距離は五十キロが限界だが、アイギスの周囲に無数のアンテナを立てることでアイギスから三百キロまでなら離れていても連絡が可能な状態にしていた。


 この状態で連絡ができない場所にシュウがいるとなると、仮にシュウが邪竜との戦いに勝ったとしてもシュウが自力で帰って来るのは難しいだろう。

 このクオンの説明を聞きこの場にいた隊長たちは一様に暗い表情をした。


「力押しで来るんじゃなくて誘拐して餓死させるなんてずいぶんうざいことしてくれるわね」


 心底忌々しそうにそう言ったアヤネを見てシンラは今後の方針を口にした。


「無線が通じない程遠くにシュウさんが転移させられたとすると人を出して捜索することもできません。残念ですがここは一度アイギスに帰りましょう」

「……しかたないわね」


 シンラの指示を聞き思わず反射的に自分だけでも探しに行くと言いかけたアヤネだったが、探す当ても無い以上アヤネとしてもシンラの指示に従うしかなかった。

 そんな中シンラの無線に機構本部からの通信が入り、本部からの報告を受けるシンラに他の隊長たちは不安と期待を抱きながら視線を向けた。


 そしてシンラはというと本部からの報告を聞き絶句していた。

 本部からの報告とはシュウの安否報告どころか別の問題が発生したとの知らせだったからだ。

 次から次にどう対処すればいいか分からない問題が起きる状況を受け、動揺していたこともありシンラが他の隊長たちに本部からの報告の内容を伝えるまでには少し時間がかかった。


 シンラが本部からの報告を聞いて動揺していた頃、シュウは自分の攻撃がまるで通じない邪竜を相手に徐々に追い込まれていた。

 能力の使用を阻害されているわけではないので何とか逃げられてはいるが、こちらの攻撃が通じなければいずれ魔力と体力が尽きてシュウは邪竜に殺されるだろう。


 そう考えてシュウは『飛燕』で加速して邪竜の真下に潜り込むと『纏刃』を発動するギリギリの状態で魔力を体の表面に留めた。

 その後シュウが少しだけ体を回転させると不安定な状態だった『纏刃』が回転しながら上に向かい、まるで竜巻の様になったシュウの魔力は邪竜目掛けて上昇した。


 この『嵐刃』という技はシュウが漫画で読んだ分身の術を再現するために歩行速度の限界に挑み転んだ際に偶然できた技だ。

 高密度の斬撃状の魔力に回転を加えて上昇させることで相手を攻撃する技なのだが、シュウの体質の関係で竜巻の高さは三メートル程しかないので空を飛んでいる相手への攻撃には使えない。


『嵐刃』のポイントは発生した斬撃の竜巻が数分間消えないという点で、シュウはこの技を回復能力持ちの能力者を殺し続けるための技として開発した。

 多少無理をして攻撃距離を伸ばしているため『嵐刃』の威力はシュウの技の中では比較的低いが、『嵐刃』は実戦で使ったことがなかったのでこの技なら今回の邪竜にも通用するのではないかとシュウは考えた。


 しかし『嵐刃』はこれまでのシュウの攻撃同様邪竜の体をすり抜け、その後邪竜は何事も無かったかの様に翼を動かしてシュウを吹き飛ばそうとした。

 邪竜が翼で起こす突風は威力こそ低いものの攻撃範囲は極めて広く、今の隊長で邪竜の突風攻撃を回避できるのはアヤネだけだった。


 しかし邪竜の突風攻撃は隊長になるような能力者にとっては取るに足らない攻撃で、アヤネもほとんどの場合邪竜の突風攻撃は魔力を高めて防御することで対処していた。

 しかしこの取るに足らない攻撃というのは魔力による防御ができることが前提の話で、全ての防御を無視される今のシュウにとって邪竜の突風攻撃は回避不可の強力な技だった。


 地面に叩きつけられる際のダメージは魔力を高めて防げるのがせめてもの救いだったが、それでも無傷とはいかずシュウの体は徐々にダメージを蓄積していった。

『飛燕』を使って突風攻撃を受けないように立ち回ることは不可能ではなかったが、『飛燕』でずっと飛び回るというのは消費魔力を考えるとあまり現実的ではなかった。


「こりゃ、『瞬刃』使うだけ無駄だろうな」


 今回シュウはできるだけ早くSランクの邪竜を倒したいというシンラの許可を得て『瞬刃』を持って来ていた。

 しかし先程の『嵐刃』に加えてその前に試した『埋刃』も通用しなかったことを考えると、『瞬刃』を使ったところで魔力を無駄にするだけだろう。


 これまで実戦で使っていない技なら通用するのではないかという目論見も外れ、シュウはそろそろ単独での勝利を諦め始めていた。

 今戦っている邪竜の能力が自分の予想通りなら自分がいくらがんばっても無駄で、それならまだ体が動く内にこの場から離れて他の隊長たちと合流しよう。

 そう考えたシュウは『飛燕』を使って一目散に邪竜から離れたのだが、シュウと邪竜との距離が百メートル程離れた瞬間邪竜の角が光り、気づいたらシュウは邪竜の眼前にいた。


「おっと、そういうパターンか」


 これまで何度かゲームで体験した逃げられない戦いを思い出しながらシュウは慌てて上空に移動した。

 それに遅れる形で邪竜は翼を動かして突風を起こし、その光景を邪竜の背中から見ながらシュウはため息をついた。


「……まじでやべぇな」


 攻撃さえしなければシュウの体が邪竜の体をすり抜けることはなかったので邪竜の背中の上にいればしばらくは安全だったが、激しく動く邪竜の背中の上に長時間留まるのは難しいので早く何らかの手を打たなくてはいけなかった。


 しかも問題はこの邪竜だけでなく、シュウはこの邪竜と戦い始めてしばらくしてから二つの視線を感じていた。

 この二つの視線のぬしは最初の位置から動かずにシュウと邪竜の戦いを眺めており、この状況で『創造主』がシュウの味方を呼ぶわけもないのでこの何者かはシュウの敵だろう。


 こちらの攻撃が通用しない邪竜が逃亡を封じる能力を持っており、その上駄目押しの伏兵の存在。

 まさに絶体絶命の状況にシュウも精神的に追い込まれており、一瞬だけシュウの邪竜の動きへの反応が遅れてシュウは空中へと投げ出された。


 似た様な状況は今日の戦いで何度もあったのだが、今回は最初の反応が遅かったため投げ出された直後に迫る邪竜の翼をよけ切れずシュウは右わき腹を大きくえぐられてしまった。

 手足の一本ぐらいなら失っても戦いを続けられたが、この攻撃でシュウは内臓を大きく損傷してしまい瞬時に死を覚悟した。


 更に攻撃を受けたシュウが最後の力を振り絞って邪竜から距離を取った直後、これまでシュウと邪竜の戦いを静観していた二つの気配まで動くのをシュウは感じ取った。

 ここまで徹底して自分を殺しにくる『創造主』の手配りにシュウは感心と恨みの混じった感情を抱いた。


 どうやら自分はここまでのようなのでせめて目の前の邪竜の無敵振りが自分限定であることを祈りながらシュウは邪竜と迫り来る二つの気配を同時に視界に捉えた。

 シュウもさすがにこの状況を打破できるとは思っていなかったが、これまで多くの人間を犠牲にして生き延びてきた以上せめて最後まで戦って死のう。

 そう考えてシュウは邪竜以外の二つの気配に視線を向け、自分に近づいて来る見知った二人の姿を見て驚いた。


「ちょっ、あんた、その傷大丈夫?」


 邪竜の翼により深々と斬り裂かれたシュウの腹部を見るなり、ミアは驚きながらも心配そうな視線を送ってきた。

 そんなミアとその隣にいるサヤを見てシュウは何とか口を開いた。


「何でお前らがここにいるか知らねぇけどあの邪竜はお前らが勝てる相手じゃねぇ。俺はもう無理っぽいからお前らだけでも逃げろ」


 そう言って倒れ込んだシュウをサヤが支え、その後サヤは取り出した短刀で自分の手のひらを傷つけて自分の血をシュウの傷口に送り込んだ。

 するとシュウの傷がみるみるふさがり、シュウは突然痛みが消えて活力も戻ったことに驚きながら自分を抱きかかえていたサヤから離れた。


「お前、こんなこともできたのか?」


 サヤが自分の傷を治すのはシュウもこれまで何度も見てきたが、シュウの知る限りサヤが自分以外の傷を治したのは今回が初めてのはずだった。

 そのためシュウはサヤが唐突に見せた治癒能力に驚いたのだが、シュウとは対照的に当のサヤは普段通りの無表情だった。


「……何となくやれそうだったので、あなた風に言うならノリでやってみました。どうせ失敗してもあなたが死ぬだけですし」

「そうか。ま、結果オーライってことにしとくぜ。どうせあのままだと死んでたしな。ありがとよ」


 ありがたみの欠片も無いサヤの発言に対してシュウも軽い口調で応じていると、三人に邪竜の放った火炎が襲い掛かった。

 その攻撃をそれぞれ回避した後、ミアが無線でシュウに邪竜に負けた理由を尋ねてきた。


「さっきから見てたけど、あんたあの邪竜に手も足も出てなかったじゃない。そんなに強いの、あの邪竜?」


 機構本部で他の『フェンリル』の隊員たちと待機していたミアとサヤは気づいたらこの場所におり驚いた。

 しかも現状把握も終わらない内に爆音が聞こえ、二人が音のする方に視線を向けると他の隊長たちと一緒にいるはずのシュウが一人で邪竜と戦っているのだ。


 何が何だか分からなかったが、とりあえず二人はシュウの邪魔にならないようにシュウと邪竜の戦いを大人しく見守っていた。

 ミアもサヤもシュウなら一人でも邪竜に勝つだろうと考えながらシュウと邪竜の戦いを見ていたのだが、二人の見ている中戦いは終始邪竜優勢のまま進んだ。


 そしてシュウが邪竜の攻撃を受けて地上に落下したのを見た瞬間、ミアが止める暇も無くサヤが飛び出した。

 それを見てミアも慌ててサヤの後を追ったのだが、二人の見ている限り今回の邪竜は何らかの特殊能力を使っている様には見えなかった。

 それにも関わらずシュウが一方的に押されているのを見て二人は不思議に思い、ミアの質問を受けてシュウは今回の邪竜の能力を二人に説明した。

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