幕間会話劇②~大槻篇~
幕間会話劇です。赤坂やヒロインたちの日常を書いています。
ほとんど会話形式になっております。時系列は【大槻こむぎ篇】完結後すぐくらいです。
よろしくお願いします。
幕間会話劇~大槻こむぎ篇~
【喫茶クロワッサンにて】
「というわけで、テスト勉強をします!!」
「何がというわけで、なんだ大槻……」
「え? だってもうすぐ期末テストじゃん。学生の本分は勉強だよ! 赤坂君!」
「それはごもっともだが……なんでここなんだ?」
「だってここじゃないと雪枝ちゃんが来れないじゃない!」
「なんで私まで……」
「雪枝ちゃんは前回の定期テストで学年七位の才女なのです! 学年トップクラスの学力を誇る、私の大切な友達だからね! 呼ばないわけにはいかないよ!!」
「こむぎさん……(ぱあ)」
「なあ、枢木、段々お前ちょろいキャラが定着しつつあるぞ。最初の方聞いてた? 『大切な友達』に『学年トップクラスの成績』って枕詞、普通来ないからな? 体よく利用されてるだけだからな?」
「うるさいわね……この場に呼ばれただけでありがたいと思いなさい。赤坂君」
「呼ばれるも何もお前らが僕のバイト先に来たんだけど……」
「はいはい、ストップ! テストまで時間ないよ!! みんな勉強しよう! そして成績を上げよう! 私の!!」
「本音、出てるぞ大槻」
「私の成績が上がれば、私はハッピー! 二人もハッピー! ウィンウィンだね!」
「はぁ……。まあいいわ。で、こむぎさん、何をするつもり?」
「私はまず数学の課題進めるつもりだけど……二人は終わった?」
「終わってるわ」
「終わってるな」
「え、雪枝ちゃんはともかく、赤坂君も? 結構量あるし、難易度高いけど」
「ああ、随分前に終わった……というより三周くらいやって、あらかた問題覚えてしまった」
「え、なにそれ……」
「赤坂君、女子の前で見え見えの虚勢を張るのはみっともないわよ? まだ中二病?」
「失礼なことを言うな! ホントに終わってるんだよ」
「じゃ、じゃあ、この不等式の証明の問題は……?」
「あー、これは単純に二乗が0以上使うだけだろ。基本問題だ」
「えーと、じゃあこれ、三角関数!!」
「二次関数のxがsinθになっただけだ。最後にθの範囲に注意すれば簡単」
「ううう……じゃあ、これ!!」
「円とその接線の方程式ね。これはマジで公式覚えれば一発……ってこれは試験範囲外じゃないか?」
「……すごい」
「ま、まあなかなかやるみたいね……赤坂君、でも数学だけやっていても駄目なのよ? 学力は総合力なのだから……」
「別に、数学だけってわけでもないけど……」
「妙に自身があるみたいね……それじゃあ、前回の定期試験の順位、聞かせていただけるかしら?」
「一位」
「「……は?」」
「だから、一位」
「う、うそよ! そんなはずないわ!!」
「大きい声出すなよ……他の客に迷惑だろ……」
「赤坂君、他のお客さんいないよ? 今日はササキさんもいないし」
「証拠をみせなさい! 証拠を!」
「……これ、前回の成績表」
「うわすご!! 満点三つもある!! しかも全部90点以上!! ちゃんと一位って書いてあるし……って雪枝ちゃん? 目がぐるぐるになってるよ?!」
「絶対に間違っている……私が赤坂君に負けるなんてこと……ありえない!!」
「何気に失礼だな、お前。かつてないほど取り乱してるじゃないか」
「しょうがないよ……雪枝ちゃん、赤坂君のことなめちぎってたもん。ミジンコ同然に思ってた赤坂君に、自信があった成績で負けちゃったんだからさ」
「ふぎゅう!!」
「大槻、枢木をいじめんなよ! 普段からは想像もできないような声出したぞコイツ」
「認めない、私より赤坂君の方が勉強ができるなんて認めない……」
「お、おい枢木? どす黒いオーラでてんぞ? あんま気にすんなって。スコアなんて水物なんだから」
「あらあら勝者の余裕かしら? みじめな私を腹の中で笑ってるんでしょう!! 見てなさい、今回のテストでは必ずすりつぶしてあげるわ!!」
「わー。かませ犬っぽいセリフ―」
「ぴい!!」
「いじめるなって言ってるだろ! なにお茶菓子ぱりぱり食べながらくつろいでんだ! おい枢木、どこへ行く!」
「帰るわ。こうしてはいられない……」
「えー帰っちゃうの?」
「ごめんなさいね、こむぎさん。でも私、この男には負けたくないの」
「ほーい。じゃあ頑張って~」
「かるっ!! 『大切な友達』な友達じゃなかったのかよ!」
「え、だって赤坂君いれば大丈夫でしょ」
「キッ」
「おい、にらむな。僕何にも悪いことしてないだろ!」
「待っててね、こむぎさん。必ずあなたをこの男の手から取り戻して見せる!!」
「うん。がんばって~。私は頭がいい方に教えてもらえればいいから~」
「とうとう本心を表したな! 大槻!!」
「見てなさい……見てなさい……」
カランカラン……
「出てっちゃったね」
「だな……。大槻、悪ふざけが過ぎるぞ……枢木、最後涙目だったじゃないか……」
「あはは、雪枝ちゃんの反応がかわいくてつい……」
「明日、ちゃんと謝っておけよ?」
「はーい。……それはそうと、赤坂君。何でそんなに成績いいの?」
「なんでって……普通に勉強してるからだよ」
「でも、赤坂君、バイトばっかりしてるじゃない」
「ああ、年中バイトしてないと生計がたたない貧乏学生だからな」
「なのにどうして?……何か特別な勉強法とかあるの?」
「ないな」
「えー、うそだー。何か理由あるでしょー」
「……うーん。結局は勉強量じゃないか?」
「勉強量?」
「うん。この店、お客が見ての通りほとんどいないから、仕事あんまりなくてさ。暇な時間は勉強してていいって店長が言うから。後、家に帰ってもやることないし」
「ほえ~」
「平日は大体五時から九時までここで勉強して、飯食って12時くらいまで勉強してるから、まあ、一日六時間くらい。土日は12時間くらい……」
「待って待って、その間ずーっと勉強してるの?」
「うん。他にすることないし」
「テレビは?」
「家に無い。貧乏だからな」
「スマホは?」
「持ってない。必要ないからな」
「友達は?」
「いない。知ってるくせに……」
「……じゃあ放課後も休日も全部勉強にあててるってこと?」
「いや、本を読むこともあるぞ。ササキが読み終わった本をたまにくれるから」
「ほとんど一緒だよ!」
「そうか?」
「はぁ……目から鱗の戦法があるかと思ったのに……とんだ物量作戦だったよ……」
「ご期待に沿えず申し訳ないな」
「ねえ、そんなに勉強ばっかりして飽きないの? 寂しくないの?」
「……大槻、立川談志って知ってるか?」
「え? 有名な落語家さんだよね?」
「そうだ。あの人の残した言葉にこんなものがある」
「……ききましょう」
「『学問は、貧乏人の暇つぶし』(ドヤぁ)」
「……切ないよ。赤坂君。自分の貧乏を引き合いに出す所とかも切ないけど、そのドヤ顔の悲壮感に涙が出そうだよ」
「……そんなに悲し気な顔してたかな、僕……」
「ねえ赤坂君、テスト終わったら、一緒に映画とか見に行こう? あまりにも不憫で……」
「え? 別にいいけど……お金あるかな。確か今月は定期代とかもあって……」
「私が奢るから!! いや、奢らせて!!」
「お、おう」
「決まりね!! じゃ、勉強再開しよ! 色々質問していいかな?」
「はいよ。僕も世界史あたり復習するかな……」
こうして、テスト前の一日は過ぎていくのであった……
(深夜・枢木家本邸)
「雪枝様。あまり根を詰めると身体に毒ですよ?」
「夏目さん、今私は負けられない戦いに備えているの。あの憎き男から友達を奪還するために……!」
「あーそうですか。じゃあ頑張ってください」
「……あなたも段々、私への対応おざなりになってきたわね」
「そうですか? 前からこんな感じだと思いますよ?」
「そう、だったかしら……」
「そんなことより、手が止まってますよ」
「あなた、私を止めに来たんじゃなかったかしら……」
「雪枝様、細かいことを気にしている場合ではないのでは?」
「はっ。いけない! 夏目さん、邪魔しないで!!」
「はいはい。失礼しました」
ギィ……バタン。
「(雪枝様は、随分変わられた。口数も増え、友達もでき、家の中でも人間らしい表情が増えてきた。これはいい傾向なのだろうな。かつての、寂しい表情よりはずっといい。)」
「ま、ご当主様をごまかすのが面倒なのですが……。そこは私の腕の見せ所でしょう。いやー。いいメイドが付いて雪枝さまは幸せ者だー」
メイドの独り言は、特に枢木に伝わることなく、静かな屋敷の中で消えていき、夜は静かに更けていったのだった。
現在、CASE003【蓮見飛鳥篇】のプロット作成中です。
近日中に更新いたしますので、読み進めていただけると幸いです。




